#36 熱帯魚への誘い>(2)              可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

F、蛍光灯。

  水槽の中に、水草が植わっていなければ、蛍光灯が無くとも、魚の飼育には差
し支え有りませんが、やはり明るく照明してやった方が、魚の美しさが引き立ち、
また、夜も観賞出来るので、蛍光灯は是非とも購入して下さい。

  また、水槽の中に水草を植えて、綺麗に飾りたいと考えているならば、草が生
きて、成長して行く為には光を欠かすことが出来ず、蛍光灯は必需品です。

  60cm水槽の場合、20Wの直管蛍光灯の長さが丁度良い寸法なので、水槽
の上に乗せて使う、燈具が、熱帯魚屋で売られています。

  管球は、普通の家庭用の白色蛍光ランプでは効率が高く、明るさは十分なので
すが、青い色の成分が強く、赤色の光の成分は殆ど含まれていないので、これを
使うと、赤色の魚がくすんだ色になり、観賞価値が落ちますから、
『高演色性ランブ』か、『PG2』と言われる熱帯魚観賞用ランブを使います。

  PG(Plants  Grow)2と呼ばれる蛍光ランプは、別名『植物成長
ランプ』とも呼ばれ、植物の成長に有効な青と、赤の光の成分を多く含んでおり、
黄色、緑の光の成分は殆ど含まれていないので、独特の赤みを帯びており、発光
効率が低い為に、同じワット数の白色ランブよりも暗いですが、魚の赤色が美し
く見えます。

  この、PG2は、一般の電気屋さんでは殆ど販売しておらず、熱帯魚屋だけで
買うことが出来ます。

  この他に、緑の光の成分が多い、PG3と呼ばれる蛍光ランプも有りますが、
これは、水草を主体にした水槽を作るときに使うランプで、熱帯魚屋でも在庫し
ていない店が多い様です。


G、温度計。

  水温を確認し、監視するためには、温度計が必要です。

  熱帯魚用の温度計は、昔からガラス管の底部に鉛の粒を詰めて浮力を調整した、
アルコール温度計が使われており、最近は、ディジタル表示のIC温度計も売ら
れていますが、値段の廉いアルコール温度計で十分です。

  この温度計は、キスゴムを使って、水槽内の見易い位置に固定します。


H、水替え用サイフォン。

  水替えをする時は、専用の熱帯魚用サイフォンを使います。

  これは、ジャバラに成ったチューブの一端が太くなり、他の一端に灯油ポンブ
と同じ様な、手で押さえて液体を吸引するポンプがついているものです。


I、水槽の蓋。

 魚と言うのは、思った以上に良くジャンプしますから、愛魚を干物にしないた
めには、水槽に蓋が必要です。

 この蓋に、アクリルの板を使うことは感心しません。
 蛍光灯の熱で曲がってしまうのが確実で、たとえ熱による曲がりを避けても、
吸水率が高く、水面に面する下側は、水を吸って膨張し、反対側は乾いて、膨張
が少ないので、この膨張率の差で曲がってしまいます。

 光の透過度も高く、吸水や熱による曲がりの無いガラス製の蓋をお薦めしま
す。
 もし、ショップにガラスの蓋が無かった場合は、ガラス屋さんで水槽のサイズ
に合わせて切って貰い、この時、エアチューブ、フィルター・パイプ等を通すと
ころと、餌を与えるところが必要ですから、隅の方を適当なサイズで3角形に切
り落として貰って下さい。


◆ 水槽のセット (1)。

  必要な器材が揃ったらいよいよ水槽のセッティングです。
  先ず、水槽の置場を決めます。
  水槽を置く場所は、観賞するのに都合の良い場所を選べば良い訳ですが、次の
条件を頭に入れて決めてください。

      A、冬、冷たい風にさらされない所。
      B、南、西の窓から直射日光を受けない所。
      C、排水、給水に便利な所。
      D、床が平らでしっかりした所。
      E、電源の取れる所。

等を考えて、決めます。

  実際には、なかなか理想的な場所が無いかも知れませんが、上の条件に近い所
を探して下さい。
  そして、足りない所は、補うことを考えます。

  窓際に水槽を置くと、明るいために水草が良く育ちますが、直射日光が当たる
と、水槽がコケだらけに成り、夏は温度が上がり過ぎますから、どうしても窓際
に置く場合は、水槽のバックに黒いバックスクリーンを張りつけます。

  この時、スクリーンは、水槽の内側に貼ると、ガラスとスクリーンの間の水が
淀んで腐ったり、間に、小さなネオンテトラ等が挟まれたりしますから、
スクリーンは水槽の外から張りつけて下さい。

  意外と無視しやすく、後で後悔することになるのが、排水の問題です。
  水替えの度に、バケツで遠方まで運んでいると、つい、水替えをサボリたく成
りますから、水を入れる方は、温度を合わせた温水器にホースをつなげば、多少
の距離と、高さが有っても、水道の圧力で、入れることが出来ますが、水を捨て
るほうが難しいので、水の捨て易さを考えて置く場所を選んで下さい。

  水槽を、床のうえに直接置く人は少なく、何かの台の上に置くことが多いと思
いますが、水槽を置く台は、上が平らな板で、水槽の底面積(60cm水槽の場
合、横幅60cm、奥行30cm)よりも広いものであれば、専用の水槽台であ
る必要は有りません。

  この台を置く部屋の床がタタミの場合は要注意です。
  この場合、タタミの上に台が乗るだけの厚いベニヤ板を敷き、その上に水槽台
を置いて、畳にかかる重みを広い面積に分散してやらないと、初めはしっかりし
ている様でも、そのうちにタタミが凹み、場合によっては、台が傾き、もっとひ
どくなると水槽ごと引っくり返る事になります。

  熱帯魚雑誌などでアンケートを取ると、半数くらいの人は水槽を玄関の下駄箱
のうえに設置していると言う、いわゆる『玄関派アクアリスト』で、かく言う私
も、一時、玄関の下駄箱の上に60cm水槽を乗せていましたが、これはちょっ
と問題があります。

  第一に、玄関というのは、戸を開け閉めする度に冷たい風が吹き込み、そうで
無くとも、暖房の熱が届いていない家が多く、ヒータの消費電力が多くなり易い
ので、対策としては、水槽の後から両サイドにかけて、発泡スチロールのフィル
ム等を貼って、保温に努める必要が有ります。

  第二の問題点としては、60cmの水量は60リッターあり、その他の器具の
重さを加えると全体で70Kgにもなる水槽を乗せると、下駄箱の戸が開かなく
なる場合が有りますから、下駄箱の天井板がどれ位、確りしているかということ
を調べておく必要が有ります。

  水槽の置場が決まれば、水槽の内側を、洗剤や石けんを使わず、微温湯だけで
洗いますが、標準の60cm水槽の場合、ガラスの厚みは3mmしか無いので、
少し乱暴に扱うと簡単に壊れますから気を付けて下さい。

  また、水槽を洗う時とか、移動する時は、必ず空の状態で持ち上げる様にし、
決して水を入れた状態で持ち上げ無い様にしないと、簡単にガラスが割れてしま
います。

  所定の場所に、洗った水槽を置き、次に底面フィルタの濾材となる、大磯砂を
洗います。

  大磯砂は、海岸で採取した砂が多い様ですから(と言っても、今は大磯の海岸
で採取したものでは有りません)、砂をバケツに入れ、お米を磨ぐ要領で、何度
も水を替えながら洗い、塩と細かい泥を洗います。
  この底砂を洗う時も、決して洗剤を使わない様にして下さい。

  この時、外部フィルタ用の濾材も洗いますが、カルチャリングは軽く2回ほど
水を替え、表面についている粘土の粉末を落とすだけで十分です。

  底面フィルタにエアチューブをつなぎ、水槽の底に置きますが、フィルターが
小さい場合は、水槽の中央に置かず、後とか、横に方寄せて置きます。

  フィルタの置場が決まれば、フィルターの上に先ほど洗った大磯砂を4〜5cm
の厚みに敷きます。
  砂を厚く敷きすぎると、目詰まりして、フィルタの効果が上がらないだけでな
く、砂のなかで水が淀みやすく、砂を敷く量が薄すぎると、簡単に素通りするば
かりで、これもまた、濾過の効果が落ちます。

  また、底面フィルタの無い部分には、水が淀んで砂のなかで腐るのを防ぐ為、
底面ガラスの上に砂が一列に並んでいるだけより厚く敷かないで下さい。

  水草を植えると、観賞的に美しいだけでなく、魚の排泄物であるアンモニアを
肥料として吸収してくれるので、水質の安定に役立ちますが、底砂に直接水草を
植える為には、底面全体に5cm位の砂の厚みが必要で、初心者にはこの底砂の
中の水質の管理が難しいので、水草を植えるときは、植木鉢に植えることを奨め
ます。


                      水槽のセット (1)。

  砂が入ると、エアストンとヒータの位置を決めます。
  エアストンのチューブは所々キスゴムでガラス面に固定して下さい。

  ヒータは「ヒータメイク」と言うヒータを収める鞘が売られており、これを使
えば理想的ですが、裸のままでも構いません。

  ヒータを裸で使う時に、注意することは、

      A、砂のなかに埋めない。
      B、水槽のガラスに直接接触させない。

と言うことが大切です。

  まず、ヒータを砂のなかに埋めると、熱効率が悪く、電気代が無駄になるだけ
でなく、砂の中が異常な高温になる為に、濾過バクテリアが死んでしまい、水質
悪化の原因となります。

  これは、ショップでも砂のなかに埋め込んでいたり、そうするように指導して
いる、『分かって居ない』プロが居ますから気を付けて下さい。
 見た目だけを考えるショップは、今でもこんな間違いを平気でしていますが、
これは真似をしない方が無難です。

  また、裸のヒータが水槽の側面や底面に接触していると、ガラス水槽の場合は
割れる恐れが、アクリル水槽の場合はアクリルが溶けて穴が開く恐れがあります。
  要するに、ヒータは底砂のうえにゴロンと転がしておくのが一番良いのです。

  パワーフィルタを使う場合は、水を入れる前に、吸排水パイプを固定します。
  ヒータ等、一切のの電気器具はスイッチを切って置いて下さい。
  こうしておいて、湯沸かし器につないだホースで、25度位の微温湯を入れま
す。

  初めて水を入れると、どんなに綺麗に洗ったつもりでも、砂の中から、泥の様
なゴミが出てきて、水が濁りますから、一度殆どの水を捨て、もう一度微温湯を
入れなおし、ついでに、乱れた底砂の表面を平らに均します。

  また、いい忘れましたが、水道の水には殺菌の為にカルキ(塩素ガス)が含ま
れており、このままでは魚が死ぬので、水替えの時にはカルキを抜くためにハイ
ポ(チオ硫酸ソーダの結晶)を使う必要がありますが、最初の日は魚を入れない
ので、ハイポを使う必要は有りません。

  水が入れば。次はエアポンプのセットです。

  エアポンプは、停電、その他の事故で止まったとき、水が逆流して漏電事故に
発展したりする恐れがあるので、水面よりも高い位置に置く必要が有ます。

  また、エアポンプは磁石の振動を利用してエアを送るので、音が以外と大きく、
常時人が居る居間などに水槽をセットすると、エアポンプの『ブーン』と言う音
が耳につき、うるさく感じられますが、エアポンプの音は、それが置かれた台の
状態にも大きく左右されますから、置く位置、方向なども色々試してみる必要が
有ります。

  エアポンプの音は、それ自身の音よりも、ポンプが置かれた台との共振による
ものが大部分ですから、最も簡単で、絶大な効果のある騒音対策は、エアポンプ
をヒモで縛り、天井からブラ下げることで、これ以上効果的な対策は有りません。

  間違っても、放熱の妨げになるようなスポンジ等で、グルグル巻きにしない様
に気を付けないと、熱帯魚を楽しむ趣味が、火事の元に成ったりします。

  次に、外部フィルタのセットをします。

  パワーフィルタの場合は、底のスノコの上にカルチャリングを2.5〜3Kg
入れ、給排水ホースを接続し、排水用のシャワーパイプは水面より上になる位置
に止め、フィルタの水によって泡を巻き込み、水中の溶存酸素が多くなる様にし
ます。

  この時、別のエアストンから泡を出しておれば、シャワーパイプは水中に設置
しても良さそうですが、パワーフィルタは動作音が静かなので、故障して、止
まっていても気が付かないことが多いので、パイプを水面上に出し、シャワーの
音をさせておけば、目と耳で、故障を見逃す心配が有りません。

  上部フィルタを使う場合は、本体を水槽の上の、後の方に乗せ、フィルタボッ
クスの中に、カルチャリング、もしくは大磯砂を上が平らになる様に詰め、その
上に、物理フィルタとしての役目を果たすウールを適当な厚みに敷き、モータを
取り付けて、設置完了です。

  蛍光灯は、水槽専用であれば、水槽の上、上部フィルタの前の方に置くだけで
何も手間は掛かりません。

  こうして、水槽に水を張り、全ての器材を取り付けた状態で、置場が、水槽の
重みに耐え、グラグラとしないことを確認すれば、水槽の内部の外から見易い所
に、水温計を張り付け、エアポンプ、フィルタ、照明の電源を入れ、最後に、
ヒータをサーモスタットの出力端子につなぎ、更に、サーモスタットのコードを
電源につなぎます。

  全ての電源スイッチを入れ、各器材が順調に動いていることを確認したら、
サーモスタットの設定をします。

  熱帯魚を飼育する温度は、ディスカスの場合は28〜34度、それ以外の魚で
あれば25度位に設定するのが良いでしょう。

  ICサーモを使う場合は、ダイアルの目盛りを目標温度に合わせておけば、
1度位の誤差に納まりますから、翌日、誤差を確認してダイアルの設定を調整す
れば、それで終わりです。

  バイメタル式のサーモを使う場合は、現在の水温を確かめ、もし、目標温度よ
りも高い様で有れば、上の温度調整ツマミを左に回し、ヒータのスイッチが切れ
ている状態にし(ヒータが入るとパイロットランプが点灯するので解る)、目標
温度まで下がるのを待つか、冷たい水を加え、水温を下げます。

  現在の水温が目標温度より低い場合、サーモ上部の温度設定ツマミを右に回し、
パイロットランプが点灯し、ヒータのスイッチが入った状態にし、水温を目標値
まで上昇させます。

  現在の水温があまり低いようであれば温度の高い湯を加え、時間と電気代を節
約しても構いません。

  こうして、フィルタに依って水が循環している状態で、目標の水温になれば、
サーモ上部の温度調節ツマミをゆっくりと左向きに回し、ヒータの動作を示すパ
イロットランプが、チカチカと点滅するところに合わせて、サーモの調整は完了
です。


◆ 水作り。

  水を張った翌日になれば、エアレーションの効果に拠って、水道水中に含まれ
ていたカルキは自然に抜けますから、魚を入れても死ななくなります。

  しかし、この状態では、未だ、底砂にも、フィルタ中にも濾過バクテリアが湧
いていないので、魚を飼っても、排泄物を分解出来ないので、水質の維持が出来
ず、調子良く飼育することが出来ませんから、暫らくの間、おそらく1カ月位は、
濾過バクテリアの繁殖に努力を集中する必要が有ります。

  よく、熱帯魚雑誌などの入門講座を読むと、『1週間ほど水を空回しさせ、バ
クテリアが湧いたところで魚を入れる』等と書かれていますが、これが、誰が言
い出したのか解らないが、『無知な業界の常識』となっている、とんでもない大
間違い。

  淡水を浄化する為の濾過バクテリアには、『ニトロソモナス』と『ニトロバク
ター』の2種類あり、それぞれの働きは、

      『ニトロソモナス』−−アンモニア分解し、を毒性の低い亜硝酸にする。
      『ニトロバクター』−−亜硝酸を無毒の硝酸に分解する。

と言うように役割が別れており、いずれもその働きをするときに大量の酸素を消
費するので一般に『好気性バクテリア』と呼ばれていますが、この二つの種類の
バクテリアは、空気中の何処にでも居て、水槽で魚を飼育していると、そのうち
濾過装置の中に勝手に繁殖してくれますが、バクテリアも生き物ですから、大量
繁殖して、元気に活動してもらう為には、『エサ』が必要なのです。

  ただ、空っぽの水槽のフィルタを動作させているだけでは、何時まで経っても、
魚を飼えるような濾過バクテリアは繁殖してくれません。

  そこで、あわてて熱帯魚屋へバクテリアの餌等を買いに行っても、本当に効果
の信頼できる濾過バクテリアは、何処にも売っていません。

  尤も、最近は生きた濾過細菌と称したものも売られていますが、これには二つ
の種類があり、赤みを帯びた液体の『PSB』と言うのは、アンモニアを分解し
て、硝酸に転換する、ここで必要な『硝化細菌』では無く、硝酸を分解するため
の『嫌気性細菌』で、こんな物を入れても何の役にも立ちません。

  もう一つの商品は、フィルタの中で活躍してくれる『好気性』の硝化細菌で、
この手の商品の歴史は古いのですが、残念なことに、期待通りの効果のある商品
は一つも有りませ。

  私の経験によると、アロワナが細菌によって表皮を侵されたとき、止むを得ず
抗生物質を使い、病気は治ったが濾過細菌を全滅させ、早く濾過細菌が回復すれ
ばと思い、雑誌などで派手な宣伝をしている『スーパーバイオ』を濾過槽の中に
入れてみましたが、効果がなく、結局濾過バクテリアが自然に回復するまでに
3カ月掛かりましたから、効果の疑わしい商品に高いお金を払うよりも、自家繁
殖させるのが一番確かです。

  濾過バクテリアの餌と言うのは、アンモニア、詰まり魚の糞です。
  ここまで書いてくれば、賢明な読者の皆さんなら解ると思いますが、長期に魚
を飼育している水槽では、

      水質が良いので、魚が元気に餌を食う。
      魚が糞をする。
      その糞を餌に、濾過バクテリアが元気に活動する。
      水が綺麗になって、魚が元気に餌を食う。

と言う”窒素サイクル”かうまく回っているので、ベテランの人は、大した苦労
もせずに魚が飼えている訳ですが、新人は、最初の立ち上がりの処で躓くことに
なります。
  そこで、なにはともあれ、濾過バクテリアの繁殖に全力を上げますが、取るべ
き手段は二つです。

  一つは、すでに長期に魚を飼っている人にお願いして、病気の発生していない
水槽の中から、たっぷりと濾過バクテリアの混じった底砂を少し貰ってくること
です。
  これを業界では『種砂』と呼んでいますが、この種砂は、濾過バクテリアを移
植するのが目的ですから、ゴミや魚の糞が多少混じっていても、決して洗わず、
自分の水槽の底砂とか、濾過槽の中に混ぜ込みます。

  これを水槽に水を張る最初の日からしてはならないのは、バクテリアも生き物
ですから、カルキの入った水道の水に漬けると折角の濾過バクテリアが死んでし
まうからです。

  また、種砂で無くとも、長期に魚が飼育されている水槽の、水を貰ってくるだ
けでも効果がありますが、濾過バクテリアと言うのは濾材の表面の様な所に棲み
付いており、水中を漂っているものはあまり無いので、水だけでは持ち込めるバ
クテリアが少ない、ということを知っておいて下さい。

  さて、濾過バクテリアは、少量の種砂や種水を入れただけでは不十分で、また、
種砂が手に入った方も、手に入らなかった方も、心配する必要はなく、次の要領
で、新しいフィルタの中に、十分な量の濾過バクテリアを繁殖させる必要が有り、
ただ、種砂が手に入ると、このバクテリア繁殖作業が、早く仕上がると言うだけ
の違いです。

  バクテリアを繁殖させるためには、餌となる魚の糞が必要ですから、これを供
給する魚(パイロットフィッシュ)を買って来ます。

  パイロットフィッシュは、アンモニアを分解する濾過バクテリアの不十分な水
槽で飼育する訳ですから、ある程度水質に鈍感な、言い換えれば、水の汚れに強
い魚を少数導入するのです。

  熱帯魚やさんを覗いてみると、実に様々な種類の魚が売られていますが、この
中で、値段の廉い、目高の仲間(例えばプラティとか)、バルブ類(鯉の仲間、
例えばゼブラダニオ等)、ラビリンス属(XXグーラミィと呼ばれる仲間、例え
ばパール・グーラミィとか)を数匹購入してきます。

  ここで、パイロットフィッシュとして、丈夫な魚を選ぶときの基準は、値段の
あまり高くない魚を選べば、大体間違いがありません。
  要するに、死んでも惜しく無い様な、値段の廉い魚を選べば良いのです。

  熱帯魚の値段というのは、美しさで決まっているのではなく、数が少ない、珍
しい魚ほど値段が高く、何処にでも沢山居る魚、良く殖える魚はどんなに美しく
ても値段が廉いのですが、何処にでも沢山居るということは、その魚が、水質を
含めて、環境の変化に鈍感で、丈夫だと言えます。

  ただ、何処の熱帯魚やさんでも、かなり廉い値段で売っている”ネオンテトラ”
とか、その仲間の『小型カラシン』と呼ばれる仲間は、要注意です。

  この魚は、香港辺りで大量に繁殖されているので値段が廉いのですが、水質に
はきわめて敏感で、良い水質のことを具体的に言うのに、『小型カラシンが元気
に泳いでいる水』と言う位で、ショップでも、1週間以内に仕入れた魚の半数以
上を死なせてしまうことが珍しく有りません。
(尤も、ここで生き残ったものは、丈夫で長生きしますが)

  適当な魚を2〜3匹選び購入すると、ショップでは此等の魚を水と一緒にビニ
ル袋に入れ、酸素を吹き込んで、袋の口をゴムバンドで縛ってくれますが、これ
を我が家に持って帰ったとき、喜び勇んで水槽に泳がすのはちょっと待って下さ
い。

  後で、水替えの項でも詳しく説明しますが、魚は水温の変化に弱く、持って帰っ
た袋の中の水温と水槽の水温が違っていると、温度ショックで死んだり、病気に
なったりしますから、温度合わせが必要です。

  温度合わせと言っても難しいことでは無く、買ってきた魚の袋に巻いてある、
保温用の新聞紙とか、スチロールペーパーを取った、裸の袋を、酸素パッキング
したまま水槽の中に30分以上浮かべておきますと、魚を収容した袋の中の水温
がゆっくりと時間をかけて水槽の水温と同じに成りますから、それから袋のゴム
バンドを取り、袋の中の水ごと、魚を水槽に放してやれば良いのです。

  これらのことは、これから熱帯魚を飼育する上での基本的な技術ですから、パ
イロットフィッシュを扱う時に十分練習して、身に付けて下さい。

  このパイロットフィッシュ達に適当に餌をやっておれば、その糞を餌にして、
濾過バクテリアが繁殖し、1カ月も経てば、どんな魚でも安心して飼えるような
濾過システムか完成すると言う訳です。

  餌は、フレークフード等を、魚が残さない程度に、少しずつ与えますが、
2〜3日すると水が白くなり透明度が落ちてきます。

  この、水が白く濁るのは、魚の排泄物によって色々なバクテリアが繁殖し、生
存競争を繰り返しているからで、そのうちに濾過に役立つニトロソモナスとニト
ロバクターが優勢になってきて、水が澄んできます。

  白く濁っている間は、生物濾過が殆ど働いていないので、丈夫なパイロット
フィッシュといえどもかなり苦しい思いをしていますから、餌は食べ残す程与え
ない様にして下さい。

  また、熱帯魚屋には、生きた餌として、イトミミズを売っていますが、これは
使わないことを奨めます。(詳しい理由は餌の項で説明します。)

  パイロットフィッシュに控えめに餌をやり、1週間に1回1/2の水替えをし
ていると、およそ2週間で最初の濾過バクテリア、ニトロソモナスの活動が活発
になり、亜硝酸の濃度は最高になり、魚にとって最も危険な時期を迎えます。

 初心者が最も失敗を犯し易いのは、水が透明になったからといって、この一番
危険なときに魚を増やして、各種の病気で大量の犠牲者を出すということです。

 ここで毎日30%位の水替えを続け、魚の健康は維持できるが、亜硝酸もある
という状態を維持すると、ニトロバクターの繁殖が始まり、1週間ほどの間に急
激に亜硝酸濃度が下がります。

 この亜硝酸濃度の劇的な変化は、フィルターが完成すると2度と観察できない
現象ですから、ぜひとも亜硝酸試薬を購入し、毎日の濃度の変化を観察してみて
下さい。

1カ月もすると、濾過システムの完成で、後は好みの魚を飼育することが出来ま
す。