#40 熱帯魚への誘い>(6)              可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

◆ 魚の病気と治療法 (2)。


B,尾腐れ病。

  症状=ヒレの先端から解けてきて、半透明の綿の様なものを引きずりながら泳
        ぐ。

  原因=水質の悪化。

  対策=水替えの後メチレンブルー、または、エルバージュを薄く入れる。

  この病気が出るのは、餌をやりすぎて食べ残しが腐ったり、長期間水替えをサ
ボッたりで、水の汚れがひどく、亜硝酸が蓄積している時ですから、水替えをす
るとともに、フィルターに汚れが溜まりすぎていないか点検し、必要に応じて
フィルターの掃除をするとともに、治癒するまで、水の汚れを押さえるために餌
を控え目にする。


C,エラ病。

  症状=呼吸が早くなり、苦しそうな呼吸をし、時に片方のエラが開かないこと
        が有る。

  原因=エラに三代虫が寄生している。

  対策=100ppmホルマリン(水10リッターに1ccのホルマリンを溶か
        したもの)で30分の薬浴をする。

  この病気は、寄生虫を外から見ることが出来ませんが、呼吸が早くなって、苦
しそうにするのですくに解ります。

  100ppmのホルマリン浴と言うのは魚にとっても危険な処置ですから、長
時間しない様に、気を付けて下さい。

  また、ホルマリンは飼育水槽に直接投入すると濾過バクテリアを殺してしまう
ので、飼育水を別のバケツに取りそこで処理しますが、冬期等は、水温の低下に
注意を払って下さい。

  ホルマリンは薬局で購入出来ますが、劇薬ですから、購入に当たっては印鑑
(認め印)が必要です。


D,イカリムシ、チョウ。

  症状=魚の表面にガラス細工の様な虫が寄生し、痒そうにする。

  原因=イカリムシ、チョウ等の寄生。

  対策=1週間間隔で2回、リフィッシュを与える。

  イカリムシと言うのは体長5mm位の白っぽい半透明の、かなり堅い殻を持っ
た針状の虫で、頭が船の碇(いかり)の様なカギに成っており、魚の体表に食い
込んで、血を吸います。

  チョウ(ウオジラミ)と言うのは直径3〜4mmの円盤型で、足が10本位あ
り、やはり白っぽい半透明な虫で、ヒラヒラと上手に泳ぎ、これも魚にたどり着
くと表皮に針状の口を差し込み、血を吸います。

  何れも、鮒や鯉に寄生している虫で、魚食魚にエサ金をやっていると、金魚に
ついて水槽に紛れ込んできます。

  イカリムシも数が少なければ、魚を掬い、ピンセットで抜くのが一番手軽です
が、少し油断すると卵で大繁殖し、手におえなくなります。

  この寄生虫が水槽に侵入すると、自然に消滅することは決してなく、ひどくな
ると、魚の口の中にまで寄生し、こうなるとエサが食えなくなって死んでしまう
ので、薬を使います。

  イカリムシとかチョウを殺す薬は「リフィッシュ」が一番確かで、これを水
100リッターについて0.5グラムの割合で入れ、24時間後に50%の水替
えをすると、確実に寄生虫を殺すことが出来ますが、魚に対する副作用も強いの
で、決してこれ以上の濃度にしない様に気を付けて下さい。

  イカリムシは皮が堅いので、死んでも3日位は魚の中に打ち込んだイカリでブ
ラ下がっていますが、そのうちに取れて無くなります。

  イカリ虫の成虫は薬で死にますが、水槽の中にばらまかれている卵には薬が効
かないので、1週間の間を空けて、もう一度リフィッシュを与えて下さい。


E,シミーモーション。

  症状=魚が一日中小刻みに震え、元気がない。

  原因=温度が急に下がることによるカゼ。。

  対策=飼育水温を高くする。

  これはグッピー等のメダカの仲間が掛かりやすい病気で、季節の変わり目等で、
水温の変化が大きいと出やすい、人間に例えると『カゼ』の様な病気で、飼育水
温を高めに設定し、様子を見るしか有りません。


F,亜硝酸中毒。

  症状=目や体表が白く曇る、ヒゲやヒレ先がとけてくる。

  原因=水質の悪化。

  対策=水替え、および、フィルターの点検。

  世の中に、亜硝酸中毒なる言葉が、一般的に通用するかどうかは知らないが、
これより他に適切な表現方法の無い病気があります。

  体表が白く曇ったり、ヒレが溶けたりするのは、細菌性の感染症と間違え易い
が、最初に目玉が白く曇ってきた時は、感染症を疑って薬をやる前に水質の悪化
を疑う必要が有ります。
 エンゼルとか、ディスカス等のシクリッド科の魚の場合は、口の上の部分、鼻
孔の間の部分が赤味を帯び、内出血したような色になり、その後、目玉が白く曇
るという過程を辿るので、頭部を観察していると早期発見が可能です。

  水替えを行ない、餌を少し減らし、細菌性の感染症の併発を防ぐ為に、メチレ
ンブルーを薄く入れて下さい。


◆ エピローグ、言い忘れたこと等。

  前回までの内容を理解して頂ければ、特殊な生態とか、飼育方法の良く解らな
い新種を除き、一般的な魚は飼えると思いますが、初めは色々な魚を飼ってみて、
その中から自分の感性にピッタリと来る魚に巡り合ってください。

  今回は、今までの講座で書き残した、雑然とした内容を幾つか、書いておきま
す。


A,設備はしっかりとした物を。

  魚の飼育を始めようとする時、設備一式を揃えると、結構金額がかさみますが、
高級な器具を揃えるのはベテランに成ってから、とりあえずはありあわせの器具
でスタートしょうと言うのは間違いで、永年の経験を積んで、魚を見ただけで健
康状態が解るようになると、ありあわせの器具で飼育することも出来ますが、初
めはしっかりとした設備を揃える様にして下さい。

  技術の未熟を、設備がいく分かでもカバーしてくれ、失敗が少なくなります。

  ショツプの大型魚水槽で良く見かける風景ですが、小さな水槽に自由に泳げな
いような大きな魚を、無理に詰め込むようなことも、家庭での趣味としての飼育
では、避けるべきです。

  こんな飼い方は、コレクションしたものをストックしていると言うだけであっ
て、飼育される魚にとって不幸なことであるだけでなく、著しく観賞価値を下げ、
尚且つ、水質の維持に失敗するのが目に見えています。


B,高価な魚は危険。

  例外もありますが、魚の値段は供給量で決まるために、個体数が少なく、珍し
い種類ほど高い値段が付いており、こんな魚を飼って人に自慢したくなりますが、
自然界に個体が少ないということは、生存競争に弱いということですから、飼育
が難しいものが多いということを知っておいて下さい。

  珍しい魚というのは、十分に経験を積み、技術を研いてから手を出すべきで、
テレカや切手のコレクションとは訳が違うということを心得ておかないと、期待
に反して、あの世に送る数を増やすだけの結果に終わってしまいます。


C,小さな水槽ほど管理が難しい。

  大きな水槽を持っている人を見ると、水替えが大変だろうな、と思いますが、
水替えの量を別にすれば、大きな水槽ほど、水質が安定しやすく(水量が多いの
で、急に汚れない)、小さな水槽の方が、維持管理が難しいので、予算の許す限
り、大きな水槽を設置することを奨めます。


D,フィルターは水槽のサイズで決められない。

  水槽の上に乗せて使う上部フィルターは、水槽のサイズによって、フィルター
のサイズが決まってしまい、パワーフィルター等にも何cmの水槽用等と言う表
示がしてありますが、フィルターの大きさ(濾過能力)と水槽のサイズは余り関
係がありません。

  フィルターの役割は、魚の排泄物の浄化ですから、要求される能力は水槽のサ
イズとは無関係に、
      その水槽の中に与えられる餌の種類と量。
      水替えの回数と、量。
      アンモニアを吸収する、水草の量。
等と複雑に絡み合っており、底が見えないほどの多量の水草が植えられ、小さな
ヌマエビを数匹飼っている様な水槽で有れば、フィルター等必要なく、また、大
飯食いのディスカスを過密に飼育しているバンコクのブリーダー達も、毎日90
%の水替えを繰り返すことで、水槽にはエアストンが一個入っているだけのフィ
ルターの無い水槽で、魚を飼育しています。

  原則としては、餌の量に比例した大きさのフィルターが必要で、水槽のサイズ
とは直接関係ないと、覚えておいて下さい。


E,一本の水槽に複数のフィルターを。

  フィルターは、気づかない間に詰まったり、故障したりすることが避けられま
せんから、大げさなものを一本設置するよりも、簡単なものでも良いから、各水
槽毎に二つ以上のフィルターシステムを取り付けて下さい。

  掃除をする時も、同時には行なわず、二週間以上の間隔を空けて、交互に行な
う様に習慣付けておくと、濾過バクテリアの全滅を防ぐことが出来、また、バク
テリアの回復を早める効果が有ります。


F,温度計、pHメータは正確なものを。

  熱帯魚用と称してショップで売っている水温計は意外といい加減な物で、1度
や2度の誤差はザラですが、場合によっては(例えばディスカスの繁殖等)この
温度計の誤差が明暗を分ける境目になることが珍しくないので、温度計は正確な
ものをと言いたいのですが、熱帯魚ショップには信頼できる温度計が無いので、
普段水槽に設置して使う温度計の誤差を知るために、理科学用の水銀温度計を一
本持ち、これを標準にして、各水槽の温度計の誤差を調べておくことを奨めます。

  温度計に限らず、計測器を扱う時は、何時も誤差があることを念頭におき、校
正しておくことが大切で、高価なpHメータでも校正せずに測定値を論議すると、
間違った結論に到達することがあります。


H,観察と記録を残す。

  皆さんが熱帯魚を飼育するのは観賞が目的だと思いますが、『可愛いな、綺麗
だな』と思ってみるだけでなく、毎日一度は水温を確認し、魚の健康状態を観察
して下さい。

  この毎日の観察が、魚を飼育する技術を習得するための基礎です。
  元気がない、泳ぎ方がおかしい、体色が悪い等ということは、毎日観察し、昨
日の状態と頭のなかで比較することによって容易に判断できることで、幾ら言葉
や本で教えてもらっても、具体的な観察を抜きに身につくことではありません。

  また、専用のノートを一冊用意し、気が付いたことを書き留めることを奨めま
す。
  例えば、魚が病気になった時、正確な病名を判定するのは難しくとも、発病し
た時の様子と処置の内容(与えた薬の名前と量等)、その結果等を書き留めてお
くと、うまくいったときは次に同じ病気が出たときにどう処置するかの参考にな
り、うまく行かなかった場合は、次は別の方法を試してみると言うことで、この
記録を残すことで、生きた知識を自分で蓄えることが出来ます。

  生きものを飼育する限り、必ず有限の寿命と言う問題にぶつかり、どんなベテ
ランが手を尽くしても、何れ死ぬことは避けられませんが、初心者の場合、知識
と技術が未熟なために、沢山死なせると言う結果を招きがちです。

  飼育している動物を、事故や病気で死なせたとしても、そのこと自身は決して
恥ずかしいことや、非難されることではないと思いますが、管理の手抜きや、同
じ失敗を二度繰り返してはいけません。

  しっかりと記録を残し、魚を死なせた結果が、次の魚の飼育に生かされるなら
ば、生命を無駄にしたことには成らず、ベテランと言われている人も、今までに
沢山の死を見てきているからこそ、死なせない為の知識を身につけることが出来
たのです。

  私自身の経験を言うと、ディスカスの魅力に取り憑かれてから、今日まで、正
しい飼い方が解らないままに、アレコレと試行錯誤を繰り返し、数えきれない位
の失敗を重ね、沢山の魚を殺してきましたが、その過程で得られた知識を生かし、
今ではやっと安定した繁殖技術を身につけ、死なせた数より何倍も多い仔魚を得
て、希望者に無料で配布出来る様にも成りました。

  皆さんも、魚の飼育が生命の消費者に終わらず、生命の生産者と言えるように
成って頂きたいと思います。

                                 『熱帯魚への誘い』第2版 終わり。


◆ 入門講座執筆を終えて。

 熱帯魚への誘いを連載中、沢山の方から、期待やら、激励の言葉を頂きまし
た。
 一人一人に、レスを返すことが出来ませんでしたが、有り難うございました。

 この入門講座は、熱帯魚の飼育を始めたい方が、最初の1カ月を乗り切ること
が大切と考えて、そこに焦点を当ててまとめたので、少し経験のある方には、不
満のある不完全な内容であったかも知れません。

 しかし、或る程度経験を積んだ後になると、ほしい情報は、ちょっと変わった
個別の魚種毎の繁殖法であったりしますから、これはそれぞれの会議室でのベテ
ランのみなさんの情報提供に御任せします。

 また、皆さんの豊かな経験を元に、私の不足している部分を補ってくださるよ
うに、今後とも宜しくお願いいたします。

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                                                             1992年09月

                    ASCII/net55370  NIFTY/NCC02701  PCVAN/KBB53931
                                      Oo。(^。^)y-゚゚゚  可良時寿子