#48 熱帯魚辞典>(08) 《た、ち、つ、て、と》     可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

【ターコイス・ディスカス】
      アメリカのフロリダに住んでいる、J.Wattleyと言う熱帯魚気違
    いが、アマゾンの支流の一つ、ジュルア川で採集した、グリーン・ディスカ
    スを基に、全身にトルコ石の様な色の出る、ディスカスを作り上げ、これを
    ターコイス・ディスカスと名付けたが、今では、ワットレィ氏のブランドで
    有る事が忘れられ、一般名詞のように使われている。
      ワットレィ氏から種親を分けて貰ったドイツでも、盛んに養殖され、ドイ
    ツ・ターコイスと称されていたが、これは品質のバラ付きが大きく、良く失
    望させられた愛好家が多い。
      最近は、このドイツ・ターコイスを基に、香港で大量に養殖されており、
    香港産は、強烈なドーピングに依って、素人受けするような綺麗な色をして
    おり、値段が廉く、一見御買い得に見えるが、『ディスカスのエイズ』と呼
    ばれる病気を持っており、大切な持ち魚を全滅させたディスカス愛好家も、
    少なくない。
      香港やドイツで繁殖した物は、男性ホルモンを使ったドーピングがされて
    おり、これを購入したマニアは繁殖しないと言って泣かされる。
      本家のワットレィ・ターコイスは、血統証明書をつけて、販売しており、
    値段も高いが、品質は安定しており、期待を裏切ることはないが、奇形率が
    高いという欠陥も持っている。
        ★参照  →  ディスカス・エイズ。

【縦縞】
      ネオン・テトラのブルー・ラインの様に、脊椎と平行に、頭から尾鰭に向
    かって流れるラインを、英語では Horizontal-Line と呼び、スマトラのブ
    ラック・バンドの様に、背中から腹に向かって体を取り巻くようなラインを
    Vertical-Line と呼ぶ。
      ホリゾンタルと言うのは水平(横)、バーチカルと言うのは垂直(縦)で
    あるから、魚が泳いでいる姿を観察すれば、成るほどと思う。
      処で、日本語で縦縞とか横縞と言った場合は、どうだろうか。
      何も考えずに、ホリゾンタル=横と答えると、学校の英語の試験は合格点
    がつくが、魚の話になると、そう単純ではなくなる。
      誰でも知っている海水魚のタテキン、幼魚の中は、ウズマキとも呼ばれる
    様に、青い地肌に白のウズマキ模様が入っているが、成魚になると、頭から
    尾鰭に向かって青と黄色の細いライン(ホリゾンタル・ライン)が規則正し
    く流れ、とても美しい。
      この魚の正式な和名は、タテジマキンチャクダイであり、漢字で書くと、
    「縦縞巾着鯛」である。
      ここで、奇妙なことに気がつく。
      ホリゾンタル・ラインに対して、縦縞と言う名前が付けられており、これ
    は、縦と横の関係が、英語の表現と一致しない。
      しかし、この魚の和名を付けた人は、現物を知らずに、適当に付けたので
    なければ、英語を知らずに付けたのでも無い。
      わが国は、四方を海に囲まれた島国であり、昔から漁業が発達していたの
    で、魚に関する表現は、漁師の用語がそのまま採用されている。
      漁師が魚を観察するのは、釣り上げた後であり、水中深く泳いでいる状態
    ではない。
      釣り上げられた魚は、口に釣り針が付いており、当然、頭が上で、尾鰭が
    下にある。
      この状態では、頭から尾鰭に流れる縞模様は縦縞であり、背中から腹を取
    り巻く模様は、横縞に見える。
      こうして、泳いでいる状態とは一致しない、表現が、正式の用語となった
    のであり、決して、タテキンの和名を着けた人が、現物を知らずに間違った
    訳ではない。
      食用魚に限らず、全ての魚の縦横は、頭を上にした状態で、表現する事に
    決まっている。
      以上で、魚の場合は、縦横の関係を理解してもらえたと思うが、動物園に
    いる「シマウマ」は、縦縞なのか、横縞と言うべきか、一度、じっくりと考
    えて、悩んで貰いたい。

【ダトニオイデス】
      シャム・タイガーとも呼ばれる = datnioides mocrolepis。
      体長50cmを超える魚食魚。
      ショップに依っては、「ホンナンダス」とも呼ぶが、本物とか、ニセ物と
    か言っても、人間が勝手に着けた名前であって、魚の世界には、ニセ・ブラ
    ンドの悪徳商法は無く、何れも自然界で独自の地位を持っているのであるか
    ら、魚に取っては、迷惑な呼称である。
      飼育水質は、弱酸性がよい。

【ダニオ】
      東南アジア産の、小型の鯉科の魚のグループ名。
      ゼブラ・ダニオ、レオパード・ダニオ等。
      温和しく、水質の変動にも強く、飼育の楽なものが多い。

【炭酸ガス】
      魚は水中で、酸素を取り込み、炭酸ガスを吐き出す「呼吸作用」をしてい
    る。
      植物も、夜は魚と同じ様な呼吸作用(植物の場合は、異化作用と言う)を
    しているが、昼間、光が当たる状態では、炭酸ガスを吸収し、光エネルギを
    利用して、デンプン等を合成し酸素を放出すると言う「同化作用」を行い、
    動物と植物は、お互いに、相手の排泄物を利用し合うと言う、依存関係にあ
    る。
      しかし、飼育している魚が少なく、水の中に溶け込んでいる炭酸ガスが少
    ないと、一部の水草は成長が悪いので、水草の成長促進のために、炭酸ガス
    を強制的に添加する技術が開発された。
        ★参照  →  炭酸ガスの強制添加。

【炭酸ガスの強制添加】
      水草の中には、水中に溶存している炭酸ガスが少ないと、うまく育たない
    種があり、これらの水草を育てる為に、水中に炭酸ガスを強制的に添加する
    方法がある。
      水中に添加する方法としては、炭酸ガスの泡を出したのでは、大部分が空
    気中に逃げて、利用効率が悪くなるので、水槽の中に、下の開いた拡散筒を
    設置し、ここに炭酸ガスを溜めて、ガスと接触した水面より、水中に拡散さ
    せる。
      炭酸ガスの溶け込みは容易で、速やかに水中に拡散するが、拡散筒の近辺
    の水を移動させて、絶えず、溶存ガスが少ない水を拡散筒の近くに送ってや
    ると、拡散速度が上がる。
      炭酸ガスを添加する水槽は、エアレーションをすると、折角拡散した炭酸
    ガスが空気と置換されて、追い出されて仕舞うので、エアレーションを行わ
    ないだけでなく、フィルターの排水によるエアの巻き込みも避ける必要があ
    り、密閉式のパワー・フィルターを使うのがよい。
      底面フィルターを使うときも、エア・リフト式ではなく、モータに依って
    循環させる物を採用すべきである。
      一日、炭酸ガスを拡散させても、拡散筒の中には気体が残っており、この
    まま新しい炭酸ガスを追加していると、水中への溶け込みが悪くなり、拡散
    できなくなるが、これは、溶存ガスが飽和しているのではなく、水中から空
    気(その主成分は窒素)が吐き出され、拡散筒の中の炭酸ガスと置換されて
    溜まっているのであり、毎日、拡散筒の中に残った空気を排出する必要があ
    る。
      また、植物が炭酸ガスを吸収するのは、光が当たっている間だけであるか
    ら、夜間は、炭酸ガスを添加してはならない。
      もし、夜間に炭酸ガスを添加すると、単に無駄と言うだけでなく、魚と水
    草の呼吸作用の妨げになるだけである。
      炭酸ガスボンベなどを使わずに、手軽に炭酸ガス濃度を高める方法として
    は、水替えがある。
      上水道の水は、酸素は殆ど溶存していないが、炭酸ガスは高濃度に溶けて
    おり、毎日水替えをすれば、炭酸ガスを補給する事が出来る。
      なお、炭酸ガスの水中への溶解限度は40mg/リットル迄で、この濃度
    を越えると、魚は体内の炭酸ガスを水中に放出するという、呼吸作用が出来
    なくなり、死ぬ恐れがある。
     水槽に炭酸ガスを添加する時のガスの供給方式には、ガスボンベを使う方
    法と、砂糖、ジュース等を発酵させてた時の炭酸ガスを利用する方法との2
    通りがあり、後者の発酵法は、ランニング・コストが廉い。

【炭酸水素ナトリゥム】
      NaHCO3
      重曹とも呼ばれ、お菓子作りなどの時にも使われる、無毒の発泡剤。
      水槽の水の、pHを上昇させたい時に使用する。
      水溶液のpHは8.3に成る。
      この粉末を水槽の中に入れると、炭酸ガスの泡が発生するが、この炭酸ガ
    スは、エアレーションに依って、追い出す事が出来る。
      熱帯魚ショップでは扱っていないが、薬局、或いは食品店で購入できる。
        ★参照  →  pH。

【男性ホルモン】
      魚に依っては、成魚になって初めて綺麗な体色を見せる物がいるが、これ
    は体内のホルモンのバランスが変化する結果であるから、外部から強制的に
    ホルモンを与えてやると、幼魚の中から、成魚と同じ体色を発色させる事が
    出来る。
      これを産業として、実行し、最初に成功したのは、バンコク産の改良ディ
    スカス、R.R.B.で有る。
      最近は、全ての輸入ディスカスに、これを使って色揚げをするという、悪
    い習慣が広がった。
      また、ディスカスだけでなく、アフリカン・シクリッドも一部で、色揚げ
    された物が販売されている。
      魚にとって良くない事は解っているが、何も知らない初心者が、見た目の
    綺麗さに騙されて買うので、儲かれば良いという業者は、やめられないどこ
    ろか、薬の濃度を高めて、より強力なドーピングを行う、悪循環の競争に
    陥っている。
        ★参照  →  ドーピング。

【チオ・硫酸ナトリゥム】
      Na2S2O3。
      熱帯魚を上水道の水で飼育するとき、残留塩素(カルキ)を除去するのに
    使う薬品。
      反応が早く、水に溶かすとすぐに、魚に安全な水を作ることが出来、多少
    入れ過ぎても、毒性が弱いので、使い易い。
      熱帯魚ショップには、この5水塩結晶 Na2S2O3・5H2O = ハイポを
    販売している。
      過剰に使うと、水のpHを上昇させる。
        ★参照  →  カルキ抜き、ハイポ。

【窒素サイクル】
     水槽の中に与えられた餌が、魚に食われた後どうなるかと言う事に付い
    て、窒素成分の行方に着目して循環を考えると、
        餌 -> 魚の体 -> 排泄物 -> 硝酸塩 -> 水草(餌)
    と言う循環をする。
     この循環が水槽の中で完結している物を、バランスド・フクアリゥムと呼
    び、もし水の自然蒸発が無いとしたら餌も水替えも不要な水槽が実現する。
     実際には、水槽の外部から必要以上の餌が与えられ、水草では処理できな
    くなる程の排泄物が発生するので、何時かは水替えが必要となる。
     それならば、こんな窒素サイクルは何の意味も無いように思えるが、水槽
    の中で、餌から始まった窒素がどの様に循環しているかを考えると、水草
    や、フィルターや水替えの必要性と、どの様な日常の管理が必要であるか、
    自分で判断できるようになる。
     与えられた餌が、どの様に変形して、最終的に水替えによって捨てられる
    か、一度、自分の水槽について、その窒素サイクルの状態をゆっくり考えて
    見ると、トラブルが少なく、かつ、最小の労力で水槽を維持する事につなが
    る。
        ★参照  →  生物濾過、バランスド・アクアリゥム、濾過装置。

【チャカチャカ】
      東南アジアのナマズ = chaca chaca。
      川底で昼寝をしている処を、象の足で踏み潰されたような、ペチャンコの
    体つきと、髭だらけの、変わった顔をしているので、珍魚マニアに人気が高
    い。

【抽水性水草】
      葦やイグサの様に、草体全体が水中に無く、根部は水面下に有るが、葉部
    は水面上に突き出て、気中にある水草を言う。
      水位が変動する処に自生している物は、季節に依って水没するので、完全
    な水中型の生育が可能な物が多い。
      熱帯魚の水槽に使われる水草では、ロタラ、バコバ、リスノシッポ等のロ
    タラの仲間、アンブリア、ホトニア等が、この抽水生水草に当たる。
      上に挙げた抽水性の水草は、水上葉と、水中葉の形が大幅に異なり、水上
    葉だけを見ると、水中葉の姿を想像できない程、印象が変わる。
      抽水性に対して、草体全体が絶えず水中に有って、育つ物を、沈水性水草
    と呼び、ニテラ等が相当する。

【チョウ】
      ウオジラミとも呼ばれる。
      直径5〜6mmの円盤型で、周囲に沢山の足を持ち、半透明灰色の、吸血
    性の寄生虫。
      水中をヒラヒラと上手に泳ぎ、魚を見つけると、表面に止まり、鱗の上か
    ら針の様な鋭い口を突き刺し、血を吸う。
      水田で養殖された金魚に多く寄生しており、餌金に混じって、水槽内に浸
    入する。
      対策としては、寄生虫の数が少ないときは、魚をすくい、ピンセットで取
    り除く事もできるが、魚をすくうとき、素早く魚から離れて、逃げ出す事も
    ある。
      数が多い時は、殺虫剤を使う必要があり、リフィッシュが、極めて有効。
        ★参照  →  リフィッシュ。

【珍カラ】
      カラシンの種類は極端に多く、未だ、名前が良く解っていない種類も沢山
    有る。
      南米から輸入される、カラシンの中には、数がまとまっていないので、研
    究が出来て居らず、名前も性質も良く解らないような物が、混じって輸入さ
    れる。
      これら、名前も解らないカラシンは「珍カラ」と呼ばれ、一部のマニアの
    間で、コレクションの対象となっている。
      ただ、珍しく、他人が持っていないと言うだけの、自己満足を得るだけの
    楽しみで、観賞価値の低い物ばかりである。
      注意しなければいけないのは、珍カラ自身は、原産地でも珍しい魚という
    訳ではなく、ただ観賞価値が低いために、まとまって輸入されないだけで、
    現地では、珍しくも何ともない、単なる駄魚で有るということである。
      もし観賞価値が高く、誰にでも歓迎される種で有れば、当然、業者の大き
    な儲けが見込まれるので、無理をしてでも、採集し、大量に入荷する様にな
    るので、珍からとは言えなくなる。
      この珍カラ・コレクションと言う趣味は、足を踏み込むと、全くのドロ沼
    に落ち込むような、物である。
      まとまって入ってくれば珍カラとは言えないから、一年中ショップをこま
    めに回り、輸入カラシンの中から、混じり物を探すという努力が必要である
    が、首尾良く手にいれても、性質が良く解らないから、長生きさせる事が出
    来ず、何時まで経っても、コレクションが豊富にならないと言う、終わりの
    無い努力に足をとられる。
      大体、生き物をコレクションの対象にすると言う事自身が、余りまともな
    趣味とは思えない。
        ★参照  →  カラシン。

【珍魚】
      普通は、「怪魚、珍魚趣味」と称して、怪魚と、まとめて扱われることが
    多い。
      魚を飼育することよりも、人が持っていない魚をコレクションして、自慢
    することを、目的とする場合が多い。
        ★参照  →  怪魚。

【ツイン・ネット=TWIN−NET】
      神戸にあった、BBS。
      中を覗いてみると、熱帯魚の「とろぴかる・ねっと」と、コンピュータ・
    グラフィックの「CG−NET」と言う、一見何のつながりも無い様な異質
    のBBSが同居しており、これがクセ者。
      熱帯魚地獄から逃げ出す会員は、CG−NETに、CG地獄から逃げ出す
    会員は、とろぴかる・ねっとに捕まり、一度足を踏み込むと、まっとうな人
    生に戻る事が出来ないと言う、アリジゴクの様な、恐ろしいBBS。
     本辞典が、初めて発表されたのもこのNETで有り、アーティクルの半分
    以上がディスカスの話題で埋められており、FFS活動の提唱など、ユニー
    クな活動をしたが、92年2月末をもって、SYSOPの長期出張に伴い、
    3年間の活動に幕を閉じた。
        ★参照  →  とろぴかる・ねっと。

【ティ・エフ・エッチ=T.F.H】
      Toropical Fish Hobiest の略で、世界で最も権威のある、熱帯魚雑誌。
      新種の熱帯魚を売り出すときには、先ずこの雑誌に発表するので、これを
    読むと、未だわが国に入っていない、珍しい魚をいち早く知る事が出来、コ
    レクション・マニア等は、余計にストレスが溜まるという、罪作りな本。

【ディスカス=DISCUS】
      南米アマゾン産のシクリッド。
      横から見ると、体が丸いので、この名前がある。
      マニアにとっては、南米アマゾンを代表する魚であるが、一般には、エン
    ゼル・フィッシュの様に有名ではない。
      熱帯魚の王様と言われ、飼育意欲をソソルが、見かけに似合わずきつい性
    格をしており、数が少ないと、強烈な縄張り争いが発生し、弱い物から順番
    に飢え死にして行くという、とんでもない魚。
      ちなみに、学名の、Symphysodon Aequifaciata Discus と言うのは、「群
    れを作る円形の魚」と言う意味で、1ダース以上をまとめて飼育すると、嘘
    の様に仲良くなり、良く育つが、値段が高いので、学生には手が出ないと言
    う、プチ・ブル好みの魚。
      兎に角、毎日のように水替えを要求し、一番風呂に入りたがり、食事は、
    手作りハンバーグと言う、贅沢極まり無い魚。
      最近は、R.R.Bとか、ターコイス・ディスカスとか言って、改良種が
    出回っているが、輸入品は、何れも男性ホルモンを使ったドーピングがされ
    ており、数センチのサイズのうちから青い体色を光らせているが、数カ月も
    飼育すると、見る陰もない無惨な姿になるとともに、繁殖能力に傷害を受け
    ている物が多い。
      可良時寿子が最も得意とする魚で、うっかりとディスカスは素晴らしい等
    と言おう物なら、すかさずFFSと称して1ダース単位で押し付けられる。
        ★参照  →  FFS、ターコイス・ディスカス、可良時寿子。

【ディスカス・エイズ】
      香港産のディスカスに依ってもたらされた、シクリッドの病気。
      潜伏期間が一週間ほど有るために、この病気に感染している事に気付かず
    にうっかり購入すると、ディスカスやエンゼル・フィッシュが致命的な打撃
    を受ける。
      感染力が強く、死亡率が極めて高い為に、人間のエイズになぞらえて、誰
    が言うともなく、「ディスカス・エイズ」と言う、恐い名前が定着した。
      名前だけのコケ脅しでなく、実際に、水槽の魚を全滅させる様な、被害が
    起きる。
      治療法は、水温を上げ、pHを5以下に落とし、パラザンの様な、細菌を
    殺す薬を与えて、強烈なエアレーションをかけて、1週間ほど絶食させるの
    が、一番確実である。
      この病気のために、売上が落ちた業界は、水質が悪いとか、pHショック
    であるとか言って、実際には新規に購入した魚に依ってもたらされ、強烈な
    感染力を持っていると言う、この病気の実態に合わない情報を平気でまき散
    らし、何とディスカスの売上を回復しょうと試み、A.L誌等も、その御先
    棒担ぎをしている。

【ディスカス・ハンバーグ】
      世の中の常識的な言葉使いに従うと、**ハンバークと言えば、**はハ
    ンバーグの原料を指すので、ディスカス・ハンバーグと言えば、ディスカス
    と言う魚を原料にした、変わったハンバーグと言う事になるが、熱帯魚愛好
    家の間では、人間が食べるハンバーグでは無く、ディスカスに食わせる為の
    ハンバーグと言う意味になる。
      昔から、熱帯魚の餌と言えば、イトミミズとか、アカムシとかが当たり前
    という時代は、家族にも気味悪がられたが、ワットレィ氏がディスカスの餌
    として、牛の心臓(食肉業界では、Heatsが鈍って、ハツと呼ぶ)を主
    原料とした清潔な餌を開発し、ディスカス・ハンバーグと名付けた。
      この餌のお陰で、水槽の中に、得体の知れない病気や、寄生虫を持ち込む
    恐れが無くなったが、それ以上の効果として、今まで家族から白い目で見ら
    れていたアクアリストも、少しだけ肩身が広くなった。
      最近は、「スドー」と言う、儲かれば何でも売るという、節操の無いメー
    カから、男性ホルモン入りの、『色揚げ用ハンバーグ』等というとんでも無
    い物まで売り出されて、「一か月に3〜4個与えて下さい、与えすぎるとホ
    ルモン障害を起こします」等という、変な広告をしている。
        ★参照  →  イトミミズ。

【底面フィルタ】
      水槽の内部、底面に設置し、底砂を濾材に利用する濾過装置で、水を循環
    させる方式には、モータ・ポンプを使った物と、空気の泡の浮揚力を利用し
    た、エア・リフト式がある。
      エア・リフト式は、歴史も長く、広く普及している。
      装置の構成は、水槽の底面ガラスとの間に、水が流れるように、数センチ
    の空間を持たせたプラスチックの板に、底砂を通して水を吸引するための小
    穴を沢山あけて置き、隅の方に吐き出し用のパイプを垂直に立て、このパイ
    プの中にエアを吹き込んでやると、揚力で水が循環するので、自作する事も
    可能である。
      メカニズムは極めて単純なため、故障が少なく、価格も廉いが、濾材その
    ものが水槽の中にあるので、掃除の時に、折角フィルターが集めたゴミが、
    水中に拡散し易い。
        ★参照  →  濾過装置。

【底面吹き上げ式フィルタ】
      底面フィルタと外部フィルタを組み合わせ、外部フィルタの排出口を底面
    フィルタに接続し、底面フィルタを通って水を吹き出すようにした方式。
      一般の底面フィルタとは、水の流れの方向が逆であるが、物理的なゴミ
    は、外部フィルタが処理をするので、底面フィルタにゴミが詰まる恐れがな
    く、生物濾過だけを受け持ち、メンテナンスが楽である。
        ★参照  →  濾過装置。

【鉄砲魚】
      汽水域に棲む、Archer Fish = アーチャー・フィッシュのこと。
     語源は弓の射手であるが、わが国では何故か鉄砲になった。
        ★参照  →  アーチャー・フィッシュ、汽水魚。

【テトラ】
      小型カラシン科の魚の総称。
        ★参照  →  カラシン。

【テトラ社】
      薬や器具で、テトラと言えば、ドイツのテトラ・ベルケ社を指す。
     この会社からは沢山の種類の薬品類とか、餌が売り出されているが、テト
    ラ社から売り出されている薬品類を使うときは要注意である。
     取扱い説明書が国内の代理店によって、和文化されているが、最適使用量
    の処が全部間違っている。
     即ち、原文では1ガロン(約3.8リットル)に対して使う量をそのまま
    1リットル当たりの使用量と書いて有る。
     沢山使わせて儲けようと言うのか、ガロンとリットルの区別を知らない無
    知に基づく誤訳かは知らないが、説明書通りに使うと、メーカー推奨の使用
    量の4倍にもなり、各種の副作用を招く恐れがある。
     本当に効果のある薬で有れば、使いすぎは忽ち弊害が現れる筈であるが、
    実際にこれが問題にならないところを見ると、初めから効果の薄い薬品なの
    かも知れない。
     熱帯魚業界の薬はいい加減なものが多いという、格好の見本。

【テリトリー】
      縄張りの事。
        ★参照  →  縄張り。

【デンキウナギ】
      ウナギという名前が付いているが、実は鰻ではなく、アマゾン川原産の、
    ナイフ・フィッシュの仲間である。
      高電圧を発生する発電器官を持ち、餌となる小魚を痺れさせたりする他、
    攻撃する者を麻痺させて、身を守る。
      発生電圧は、数100ボルトと高いが、長時間の持続は出来ず、また、電
    流が小さいために、人を感電死させるほどのエネルギは無い。
      しかし、不用意に扱って感電すると、2〜3日は、腕が痺れると言われて
    いる。

【デンキナマズ】
     これも、アマゾン原産の魚で、高電圧を発生する器官を持ち、餌や敵をシ
    ビレさせる。
     発生電圧は、デンキウナギよりも強い。

【トーキング・キャット】
      ギーギーと声を出して鳴くナマズ = Amblydoras hancoki。
      声を出すと言っても、声帯はなく、キリギリスやスズムシの様に、ヤスリ
    の様にザラザラした、胸鰭の蕀と、胸鰭の付け根の処の、固い表皮を擦り合
    わせて、音を出す。
      水中では、滅多な事で鳴かないが、手で掴んで、水から出すと、盛大にわ
    めくので、子供に見せると喜ぶ。

【土佐金】
     江戸時代から、土佐(現在の高知県)で飼育されていた金魚。
     体型は琉金に似ているが、尾鰭の先端が風に煽られたスカートの様に前の
    方に反り返った優雅な姿が特徴。
     流れのある水槽で飼育すると、尾鰭の姿が乱れるので、流れの無い止水で
    飼育する必要がある。
     この種の特徴は退色が遅い事。
     場合によっては一生赤く成らず、鉄色を維持する物もいるが、体色は重視
    されず、きれいに反り返った尾鰭の姿を観賞する。

【突然変異】
      「瓜の蔓には、ナスビは成らぬ」と言う諺がある一方で、「トビが鷹を生
    む」と言う言葉もある。
      瓜の蔓にナスビが成らないのは、当たり前の事であり、正常な遺伝である
    が、もし、鳶が鷹を生むように、親とは違った形質のものが生まれると、こ
    れは、突然変異と呼ばれる。
      処でこの「突然変異」と言う言葉はかなり曖昧に使われており、親とは違
    う形質の子が生まれる理由を考えてみると、大きく分けて、二つの原因があ
    る。
      一つは、薬品や放射能の傷害に依って、遺伝子の一部が壊されてしまった
    場合である。
      この場合は、真の意味での突然変異であるが、実際には奇形という形を取
    る変異であり、まともに生命を維持し、子孫を残す事は少ない。
      もう一つは、遺伝子として、情報は持っていたが、今まで表に現れなかっ
    た形質が、その形質を隠すような形質が失われた為に、突然現れた場合であ
    る。
      遺伝情報と言うのは、染色体の上に乗った、アミノ酸の配列の順番の組み
    合わせであり、これが複写されて、卵子と精子に伝えられるのであるが、個
    体に取っては一見無駄とも見える情報が沢山含まれており、親から子に伝わ
    る過程で、どの部分か伝えられるかと言う事は、組み合わせの数が多く、少
    しずつ変化する余地を持っている。
      これは、どんな動物の子供でも、親に似てはいるが、全く同じではないと
    言う事を見れば理解できる。
      この場合、突然変異と言っても、個体の変化の幅が少し大きかっただけで
    あり、何も『突然』では無いのであるが、やはり、突然変異として扱われて
    いる。
      これらの突然変異の個体は、生き残る事が少なく、自然界には突然変異の
    個体が少ないように見える。
      しかし、生物にとって、突然変異が生まれる可能性がある事は、非常に大
    事な、種の存続の条件である。
      たまたま生まれた突然変異の、変異の仕方が、現在のノーマルな形質より
    も、より環境に適した、生きて行くのに都合の良い形質が新たに出現したの
    であれば、その突然変異個体は、多くの子孫を残す事ができる。
      そうなれば、もはや突然変異個体ではなく、新しい種の出現であり、種の
    進化である。
      つまり、もし突然変異というものが、無ければ、生物の進化は有り得ず、
    環境の変化に対応して、長期に栄える事ができないと言う事になる。
      突然変異こそは、進化の必要条件である。
        ★参照  →  遺伝。

【ドーピング】
      普通、ディスカスは生後1年以上経たないと、綺麗なブルーの色が出ない
    が、男性ホルモンを与える事で、幼魚の中から、成魚と同じ綺麗な色を出す
    事に成功し、バンコク産R.R.B.は売上を大幅に伸ばした。
      ホルモンを高濃度に与えると、本来、成魚になっても青くならない、ブラ
    ウン・ディスカスでさえも青くする事が出来、香港辺りで処理された「ケミ
    カル・ディスカス」と言う物まで売られている。
      このバンコク産R.R.B.に押されて、ドイツ産のターコイス・ディス
    カスも、ホルモン処理が行われるようになり、輸入ディスカスに、ホルモン
    処理をしていない物は無くなった。
      この処理は、麻薬と同じで、一度流行して、ディスカスとはこんな色とい
    う誤った理解が定着すると、止める事が出来ないばかりか、より強烈な体色
    を出す事が要求され、魚の健康を無視して、ホルモンの濃度を高める、競争
    に陥って仕舞う。
      最近の香港産ディスカスは、ホルモンの量が多すぎ、背鰭がツバメウオの
    様に長く延びた、奇形まで出現し、平気で販売されている。
      このホルモン処理による副作用は強烈で、雄の生殖能力を殺し、繁殖でき
    ない欠陥魚を作る。
      濃度が高く成りすぎた最近の、香港産等は、繁殖傷害を通り越し、成長傷
    害が現れており、内臓が傷害を受けているために、餌を食べても成長せず、
    1年もしない中に、ガリガリに痩せて、死んで仕舞う物が多い。
      この、ホルモンの色揚げ効果は、ディスカスに限らず、アフリカン・シク
    リッドにも効果があり、本来青くならない雌まで、青く発色させた物を販売
    している、ショップもある。
      最近は、この悪徳商法に悪乗りし、わざわざ男性ホルモンを配合した「色
    揚げハンバーグ」なる物を売り出す、『スドー』と呼ばれる、目先の金儲け
    だけしか眼中にない、無節操な業者まで出現した。
      薬品を使って、一時的に体質を変化させると言う、この男性ホルモンによ
    るドーピングは、健康を損ねる異常な行為であり、オリンピックの選手の
    ドーピングと同じように、非難されて然るべき行為である。
        ★参照  →  ホルモン。