#49 熱帯魚辞典>(09) 《と、な、に、ぬ、ね、の、は》 可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

【ドラド・フィッシュ】
      体長1m程にもなる、アマゾン川の大型カラシン。
      ドラドと言うのは、黄金の事で、全身が金色に輝く事を示す。
      引きが強く、良くジャンプするので、スポーツフィッシングの対象として
    喜ばれる。
      鋭い顎歯を持っているので、「川の虎」とも呼ばれる。
      わが国の愛好家も、沢山飼育しているが、本種の輝くような黄金色を発色
    させるためには、強烈な太陽光線が必要なようで有る。
      水槽の中で飼育されている個体は、鰓蓋の辺りに、良くみれば、辛うじて
    黄色くなり掛けた部分があるかなという程度の物ばかりで、ドラドの名前に
    相応しい、濃い金色に発色した個体は見た事がない。

【トランスルーセント・グラスキャット】
      まるでレントゲン写真の様に、透明な筋肉に包まれ、骨が透けて見える、
    東南アジアのナマズ = Kryptopterus bicirrhis
      汽水域から、純淡水に棲む。
      体の透明度が高い、不思議な魚であるが、抗酸菌等に侵されると、筋肉の
    中に不透明な白い塊が出来、一度こう成った者の完治は難しい。
      時々、本種の体側に、赤や青の蛍光塗料を塗った物が、カラー・グラスと
    称して販売されており、初めて熱帯魚を見た人の興味を引くが、魚本来の魅
    力とは何の関係もない、ゲテ物である。
     こんな物を飼育するのは止めたい。

【トリコマイシン腟錠】
     本来は、トリコモナス感染症に使う女性用の医薬品である。
     医師の処方箋無しで購入可能な、殆ど唯一の抗生物質。
     水中では、盛大な炭酸ガスの泡を吹きながら溶ける。
     マツカサ病のように、他の熱帯魚用薬では手に負えないような強力な感染
    性の病気の治療に使う。
     水槽の中での薬の持続時間は6時間くらいと短い。
     抗生物質であるから、下手に使うと耐性菌を作って仕舞い、余計に手に負
    えなくなるから、使い方は結構難しい。
     値段の高い薬であるが、耐性菌を作らないようにするため、病状が好転し
    ても、しばらくはダメ押しの投与が必要で、これを惜しむくらいなら、初め
    から使わない方が無難。
     使い方は、水100リッターにつき、朝晩各1錠の投与を2週間ほど続け
    る。

【トリミング】
      有茎植物を育てていると、やがて水面まで延びて、初期の計画した美しさ
    が崩れるので、定期的に刈り込み作業が必要になる。
      この刈り込み作業の事を、トリミングと言う。
      成長が早く、育て易い水草ほど、早く形が崩れるので、トリミング作業に
    手間がかかる事になる。

【とろぴかる・ねっと】
      神戸にあった、熱帯魚のBBS。
      TWIN−NETの下に、CG−NETと一緒にぶら下がっている。
      このNETは、PDF(Public Domain Fish の略)等という怪しげな言
    葉を作り出し、会員の繁殖した魚を無料で提供し、熱帯魚ショップの営業妨
    害を平気でやる。
     このPDFは、その後FFS(Free Fish Service)と改称し、他のNE
    Tにも引き継がれている。
      業界やショップの批判は、遠慮無く実名を名指しで行うので、本当のこと
    を知りたいという、熱帯魚愛好家には喜ばれるが、反面、スネに傷を持つ業
    界関係者からは、蛇蠍の如く嫌われていた。
      別の名前を、「とろいもん・ねっと」とも言う。
      うっかりアクセスすると、覿面(テキメン)に、ターコイス・ディスカス
    等を、1ダース程押しつけられ、熱帯魚の無限地獄に落ち込み、何人の会員
    が犠牲になった事か。
      CG−NETと同じ電話番号で、同居しているものだから、時々間違えて
    CG−NETの方から、とろぴかる・ねっとに、迷い込んでくると言う、不
    幸な会員もいた。
     92年2月末をもって、SYSOPの長期出張のため、3年間の活動に幕
    を閉じた。

【トロピック・フィッシュ】
     商業NET、ASCII−NETに在る熱帯魚専門のシグ、Tropic.Fish
    のこと。
     アスキーと言えば、短い1行コメントの様な、ゴミ・メッセージが飛び
    交っているシグが多いが、このシグは、雰囲気が異なり、1行メッセージは
    少なく、殆ど見当たらない。
     動物のシグは別にあるので、ここは純粋に魚の話題だけであり、犬や猫の
    話題は取り上げない。
     92年の6月に出来たばかりで、会員数も少なく、書き込みは少ない。
     なお、ASCIIは、ハイパー・テキストと言う形式で書き込むので、慣
    れないと読み書きに戸惑うが、慣れると、一つの話題毎にノートが分離して
    おり、話題毎に幾らでも新しいノートを開く事が出来るので、話しが混線し
    ないと言う長所もある。

【ドワーフ=Dwarf】
      小さいという意味の、接頭語。
      ドワーフ・グーラミィとか、ドワーフ・シクリッドとかの様に、
    ドワーフ・**と、頭にドワーフと付けられた魚は、何れも小型である。
      この小型と言うのが、ちょっと難しい。
      ドワーフ・シクリッド等は、ネオン・テトラ依りも遥かに大きく、要する
    に、ドワーフと言う後ろに続く**と言う魚のグループの中では比較的小型
    という意味であり、絶対的なサイズを意味しない。

【ドワーフ・グーラミィ】
      Colisa lalia = インド産の小型のアナバス科の魚。
      雄は、白い体に、ネオンのようにメタリックな輝きを持ったブルーと、オ
    レンジ色のスポットが、体を取り巻く様に、横に並んだ、帯状の縞模様を持
    ち、美しい。
      雌は、基本的には雄に良く似た体色であるが、ブルーの艶が少ない。
      他の魚に決して危害を加えない、温和しい種類で、他種との混泳が容易。
      アナバス科の魚の通例として、ベタと同じように、小さな、空き瓶の様な
    ところで、飼育する事が可能。
     しかし、インドネシア産のスリー・スポット・グーラミィ等よりは、水質
    の変化に敏感なところもある。
      繁殖も容易で、水面に水草を浮かべて置くと、雄が泡巣を作り、ベタと同
    じ様な繁殖行動をとるが、孵化した稚魚のサイズが小さいので、稚魚用の餌
    を確保するのが難しい。
     しかし、熱帯魚を飼育するからには、一度はこの魚の情熱的な繁殖シーン
    を観察して貰いたい。
        ★参照  →  アナバス、ベタ。

【ナイル・アロワナ】
      Heterotis niloticus = ヘテロティスのこと。
        ★参照  →  アロワナ、ヘテロティス

【内婚】
      品種改良を進めるとき、目的とする遺伝形質以外の遺伝子を篩い落とし、
    純系を作り出す手段で、同胎の兄妹同士を交配すること。
      解り易く言えば、近親交配である。
      イン・ブリードとも呼ばれる。
        ★参照  →  イン・ブリード。

【内婚弱性】
      品種改良を進める過程で、余計な遺伝子を排除する為に、イン・ブリード
    と呼ばれる、近親交配を続けると、ある世代まできたとき、今まで雑種とし
    て隠されていた、弱い形質や、望ましくない形質が、突然表面に現れる事が
    ある。
      奇形とか、虚弱な個体ばかりが沢山産まれる事があり、これを内婚弱性と
    言って、品種改良が行き詰まる事がある。
      これは、純系に近づいたときに起きる現象であるから、避けて通る事は難
    しい。
      これは、様々な形質の遺伝子を複雑に持っている雑種の場合は、雑種強性
    と言って、例え、弱い遺伝子を持っていても、それをカバーする強い遺伝子
    の影響か表に出るので、弱い遺伝子が隠されていたのが、隠すべき遺伝子が
    無くなった為に、奇形などが現れる物である。
      逆に、内婚弱性が現れると、余計な遺伝子が失われ、それだけ純系に近づ
    いた事を意味する。
      従って、更にインブリードを続けると、奇形などの弱い遺伝子を持った個
    体は、生存できないので、健康な遺伝子を持った純系が出来上がる。
      口で言うのは簡単であるが、この内婚弱性が現れたところで、行き詰まっ
    たり、折角の完成間近の純系作りが挫折したり、健康な体質を取り戻すため
    に、不用意に、他の血統を交配したりして、訳の解らない雑種に逆戻りした
    りする例が多い。

【投げ込み式フィルタ】
      手軽に使える、内部フィルタとして、合成繊維で出来た不織布を濾剤に使
    う、簡易なフィルターがある。水の循環は、エアを利用する。
      具体的な商品名を挙げると、「スイサク・エイト」等であるが、手軽なだ
    けが取り柄で、濾過能力は極めて低く、小型水槽で、小量のグッピ等を飼育
    する時を除いては、殆ど役に立たない、気休めのような物。
        ★参照  →  濾過装置。

【縄張り】
      一定の空間を独占するため、他の魚を追い払う行動を、縄張りを主張する
    という。
      魚の場合、縄張りは、大きく分けて二つ有る。
      一つは、限られた餌を確保する為の、永続的な縄張りで、コケ食性の魚な
    どの様に、一定の固定した場所の餌を食べる魚に見られる行動で、わが国の
    「アユの友釣り」も、この習性を利用した物である。
      もう一つの縄張りは、繁殖の季節だけに現れる、一時的な縄張りで、これ
    は、卵や稚魚を親が保護する習性のある種類にだけ見られ、浮遊卵を大量に
    産っ放しにする様な魚は、縄張りを持たないのが普通である。
      中には、ディスカスに代表される、各種のシクリッドの様に、雑食性であ
    りながら、一年中縄張りを持とうとし、激しい喧嘩の末、弱い物が殺される
    と言う種類もある。
      こんな場合は、縄張りを巡る喧嘩をする余裕がなくなるほど過密に飼育す
    る事で、縄張りを解消し、仲良く混泳させる事が出来る。

【軟条】
      鰭を構成するウチワのホネの様な部分を「条」と言うが、これには二種類
    あり、柔らかくて、たわみ、途中で枝分かれしている条を軟条という。
      硬いのは棘条と呼ぶ。
        ★参照  →  棘条。

【軟水】
      カルシゥムとか、マグネシゥムの様な、無機物の溶解量が少ない水。
     具体的には、硬度10dGH以下の水を軟水と呼ぶ。
      わが国の上水道は、大概軟水である。
      多くの淡水魚も、大体、軟水を好む物が多い。
      繁殖、その他のために、更に硬度を下げたいときには、様々な方法に依っ
    て、これらの無機物を取り除く必要があるが、硬度を上げるよりも、下げる
    方が難しい。
      理想的な軟水は、蒸留水であるが、硬度成分が炭酸塩の場合の様に、一時
    硬水の場合は、加熱して沸騰させるだけでも、これらの無機物は沈澱して、
    軟水となる。
      イオン交換樹脂とか、ゼオライト等を使って、軟水化する方法もあるが、
    この場合は、カルシゥムとかマグネシゥムをナトリゥムと置換するのであっ
    て、蒸留水のような軟水とは少し意味が異なる。
      また、活性炭やピート・モスを使って、吸着させると言う方法もある。
        ★参照  →  一時硬水、硬度。

【二次淡水魚】
      現在は淡水魚であるが、進化の過程を逆に辿ってみると、本来、海水魚で
    ある物が、淡水域に生活領域を広げて、進化した結果出来上がった淡水魚を
    二次淡水魚と言い、ハゼ、カジカ、等がこれに当たる。
      これと違って、最初から淡水域に発生した種を一次淡水魚と言い、コイ、
    ナマズ等が有る。
      我々が知っている淡水魚は、圧倒的に、二次淡水魚が多い。

【ニテラ】
      軟水の弱酸性の水を好む水草 = Nitella flexilis。
      根も、葉も無い様に見えるが、良く観察すると、茎から、それと同じ様な
    形をした、ハリの様な葉が出て、場合に依っては、葉の先端が2つに枝分か
    れしている事もあると言う、根の無い水草。
      グッピ等を飼育するときに、水槽の中に茂らせて置くと、仔魚が逃げ込ん
    で助かるので、産卵ケース等を用意する必要がない。
      弱酸性の軟水を好み、弱い光でも良く育ち、調子がよいと水槽一杯になる
    が、水質の急変には弱く、水替えのショックなどで、溶けて無くなったりす
    る。

【ニトロ・ソモナス】
      生物濾過を担う、好気性硝化バクテリアの一つ。
      nitrosomonas spp.
      酸素を消費しながら、水中のアンモニアを食べて、亜硝酸に変える。
      アンモニアの水溶液は、アルカリ性を示し、亜硝酸は酸性を示すので、飼
    育水のpHを測定する事により、どの程度亜硝酸が作られたかを知る事が出
    来る。
      アンモニアも亜硝酸も、魚に対しては、ともに強い毒性を示す。
      本バクテリアは、好気性バクテリアと言って、活動するためには、多量の
    酸素を必要とし、溶存酸素の少ない処では、効果を発揮できない。
        ★参照  →  生物濾過。

【ニトロ・バクター】
      生物濾過を担う、もう一つのバクテリア。
      nitrobactor spp.
      本バクテリアも、好気性であり、ニトロ・ソモナスが生産した亜硝酸を、
    毒性の少ない、硝酸に変換する。
    本バクテリアも、活動するためには、多量の酸素を消費する。
      この二つの濾過細菌、ニトロ・バクターと、ニトロ・ソモナスは、水槽の
    中に自然に発生するが、活性(アンモニアや亜硝酸を処理する能力)を高め
    るためには、これらのバクテリアが、水の中を漂っているだけでは無理で、
    多孔質の物体に着床されている事が必要であり、このことから、濾過装置に
    使用する濾材は、多孔質で、表面積の大きな物を選ぶ必要がある。
        ★参照  →  生物濾過。

【人魚】(付録)
      正しくは、半人半魚と呼ぶが、普通は人魚と略称される、海獣の一種。
      学名は、可良時寿子に依ると、Loliconnea loliconneus sexii KARAD。
      英名は、Mermaid。
      英名からも解る様に、上半身が、人間の娘さんのような形で、下半身は、
    魚に似ている(らしい)。
      ギンブナとか、アマゾン・モリーと同じで、雄が居らず、どうやら雌性発
    生で、繁殖するらしいが、実態は良く解らない事が多い。
      今までに、人魚を見たという話しは、沢山有るが、大概はジュゴンとか、
    マナティを遠くから見て、人魚と誤認した物らしく、信頼できる観察記録が
    残っていないので、人に依って、認識が少しずつ異なる。
      コペンハーゲンの港にある、人魚のブロンズ像等は、殆ど人間の女性と同
    じ姿をしており、僅かに足の先に、小さな鰭が着いているだけで、辛うじて
    人間と区別できる。
      それに対して、オランダの熱帯魚用冷凍餌メーカ H.Stoffels-Peters 社
    が、広告のマスコットに使っている人魚の絵は、下半身がヘビの様に長い。
      サイテスで、第一級の保護動物に指定すべきだと言う声もあるが、生息地
    が不明で、実態が良く解らないので、未だ、指定されていない。
      大体、頭にハイビスカスの赤い花を飾っている個体が多いところより、か
    なり暖かい地方の海に棲んでいると、推定されている。
      男のアクアリストは、特にこれを飼育したがるが、水槽のサイズが25m
    位必要と言われており、兎小屋の住人には手が出ない。
      良く似た生き物が、夏になると、面積の小さな布切れを体に巻き付け、海
    岸や、ホテルのプールサイドに、寝転んでいるが、こちらの方は、足に鰭が
    着いていないので、人魚では無い事が解る。
        ★参照  →  雌性発生。

【ヌマエビ】
      わが国の新潟県以南の河川に生息する、南方系の淡水海老。
      学名は、Paratya compressa compressa。
      体長は、約3cm。
      髭状の固いコケを食べてくれるので、水草を中心とした水槽に入れて、コ
    ケ退治に利用する。

【ネオン・テトラ】
      アマゾン原産の小型カラシンで、体長は2cm強。
      学名は Paracheirodon innesi。
      スマートな体の背中側は、ネオン・サインの様に青く光り、腹側は、前半
    分は白く、後ろ半分は鮮やかな赤色をしている。
      最も良く知られた、熱帯魚の代表種であるが、現在わが国で販売されてい
    るネオン・テトラは、殆ど香港で養殖されたものであり、背中が曲がったよ
    うな奇形が増えている。
      部止まりを上げるために、薬漬けで輸送され、水が合わないと、入荷後1
    週間くらいで、半分以上が死ぬが、ここで生き残ったものを購入すると、丈
    夫で長生きするから、ショップに入荷したばかりの物は買ってはいけない。
      値段は、1匹50円くらいで、初心者向けの魚等と、馬鹿にしている向き
    もあるが、1950年代、未だ人工繁殖が出来なかった時は、大学卒の初任
    給が7000円の時代に、1匹1万円もした。
      わが国の、牧野信司さんに依って、世界で初めて、人工繁殖に成功した。

【ネグロ川】
      南米アマゾン川の一支流。
      厚く積もった、熱帯雨林の落ち葉の堆積層や、ピートの中をくぐって来た
    水は、コーヒーの様な、黒い色をしているので、黒い(ネグロ)川と呼ばれ
    る。
      この川は、pHが低く、カージナル・テトラ、ブラック・アロワナ、
    ヘッケル・ブルー・ディスカス、アルタム・エンゼル等、独特の繊細な美し
    さを持つ魚が、棲んでいる。

【熱帯魚】
      低緯度の、熱帯地方に棲む魚の総称で、海水域にに棲む『熱帯性海水魚』
    と陸水(淡水)域に棲む『熱帯性淡水魚』が有り、小数ではあるが、汽水域
    に棲む『汽水魚』も含む。
      何れも、鮮やかな色をした、観賞価値の高い魚が多いので、趣味で飼育す
    る対象となる。
      普通、特別な説明無しに『熱帯魚』と言うと、淡水魚の事を指すが、中に
    は、温帯地方の魚まで含まれている事がある。

【熱帯性海水魚】
      熱帯地方の海に棲んでいる、魚の総称であるが、趣味の世界では、観賞が
    主たる目的であるから、色彩と、形態の変化が豊かで、観賞価値が高く、か
    つ、遊泳力が強くない、近海性の珊瑚礁を住処とする魚が中心で、回遊性の
    魚は扱われない。
      また、熱帯性海水魚を趣味の対象とする場合は、海水魚と言いながら、魚
    ではない、イソギンチャクとか、サンゴが大きな地位を占めている。
      これらの、熱帯性海水魚は、海の容量が大きく、水温の変動幅が狭いとい
    う事と、水質の変動が少ないという処で進化してきた物であるから、飼育に
    当たっても、水質や水温の許容幅が小さく、淡水魚よりも取扱いが難しい。
      ショップで販売されている物は、野生の物を採集した物ばかりであり、人
    工繁殖の魚は出回っていないので、水質の変動にも順応して居ない。
      また、広い海から、狭い水槽に閉じこめられたと言うストレスも大きく、
    人が与える餌を食わないままに、死んで仕舞う事も、珍しくない。
        ★参照  →  熱帯魚。

【熱帯性淡水魚】
      熱帯地方の淡水に棲む魚の総称であり、特に断らずに熱帯魚と言うと、こ
    の淡水魚を指す場合が多い。
      河口部の、淡水と海水が入り交じる、汽水域に棲む魚も、淡水に僅かの食
    塩を溶かしたり、場合に依っては、純淡水でも飼育可能な物が多いので、淡
    水魚として扱われる。
      また、ショップでは、温帯地方の魚も、『比較的、低温に耐える熱帯魚』
    として扱われている。
      淡水魚は、繁殖に適した条件を水槽の中で作り出す事が容易なので、多く
    の種類の魚が、人工繁殖されており、特に、気温の高い東南アジア各国から
    の輸入品が沢山で回っている。
      更に、繁殖が容易で、沢山繁殖していると、突然変異の個体が出易く、こ
    れを固定した改良種も多く、場合に依っては、グッピーの様に、原種が殆ど
    出回らない魚種さえもある。
        ★参照  →  熱帯魚。

【ネオテニー】
      生物の中には、幼体と成体で、体型が大幅に変わる物がいる。
      身近な処では、蝶やトンボの様な昆虫が、そうである。
      この様な、成長の途中で体の構造が変化する物は、高等な脊椎動物の中に
    もおり、われわれが身近に知る事の出来る種としては、オタマジャクシとカ
    エルの関係を挙げる事が出来る。
      この、成長の途中で体の構造が変化するのは、体内のホルモンのバランス
    に依存しており、置かれた環境に依っては、一生成体の体型に成れない物も
    いる。
      環境が過酷で、ほとんどの個体が成体になることが出来なければ、子孫を
    残す事が出来ず、その地方の、その種は絶滅するが、そこは良くした物で、
    幼体のまま、繁殖する種がある。
      このように、幼体のまま繁殖する生活史を採る事を、ネオテニーとか、幼
    形成熟と呼ぶ。
      まあ、言ってみれば、オタマジャクシが一生カエルに成らないまま、繁殖
    を続けているような物を想像すると、分かりやすい。
      この種の代表的な物は、冷たい水域に棲んでいる、メキシコサラマンダー
    が有名である。
      メキシコサラマンダーと言っても解らない人には、ウーパー・ルーパと言
    う商品名で売り出され、一時、子供達の人気を集めた、アホロートルの事だ
    と言えば、解って貰えると思う。
      アホロートルと言う言葉自身、特定の種を指すのではなく、幼形成熟する
    両生類全般を指す言葉である。
      このメキシコサラマンダーは、幼体の時は、外鰓が有り、水中で鰓呼吸を
    しているが、成体になると、肺が発達し、外鰓が無くなり、肺呼吸をするよ
    うになる筈であるが、実際には、成体にならないまま一生を終わり、幼体の
    まま、繁殖している。
      この外鰓の有る姿が、メキシコサラマンダーの最終的な形態で無い事は、
    人工的にホルモン注射をすれば、簡単に体型が変わり、陸上まで出て、這い
    回る、サラマンダーに成る事で、確認できる。

【ノーザン・バラムンディ】
      オーストラリア、及びニューギニアに棲んでいる、アロワナ。
      学名は、Scleropages Leichardi。
      メタリックな艶のある、黒い鱗の一枚一枚に、金色の縁取りが入り、体型
    は、同じオーストラリア産の、スポッテド・バラムンディ依りも、少し太め
    で、極めて温和しく、上品。
      尤も、これをバラムンディと呼ぶのは、わが国の呼び方であって、原産国
    オーストラリアでは、スポッテド・バラムンディとまとめて「サラトガ」と
    呼び、どうしても区別の必要がある時は、本種の方にノーザンと言う言葉を
    付けて、ノーザン・サラトガと呼ぶ。
     6種類有るアロワナの中で、最も美しい、アロワナ界の貴公子。
        ★参照  →  アロワナ

【肺魚】
      肺魚と言っても、陸上動物のような肺機構を持っているのでは無く、浮き
    袋の中に血管が網の目のように走り、ここで、空気を吸って酸素を取り込む
    事が出来るという、機能を持った一連の仲間を指す。
      魚から、両生類に進化する途中の物で、陸上の高等動物の祖先だと言う説
    が有るが、これは正しくない。
      肺魚は、陸上の動物には繋がって居らず、謂ば、進化の袋小路に迷い込ん
    だ様な生物と言うのが正しい。
      アフリカ、南米、オーストラリア等に居るが、これらの生活している環境
    は、乾季になれば干上がり、一滴の水もなくなる様な水溜まりのような処で
    あり、乾季には、泥の中に潜り、体液で粘りを着けた泥でマユを作り、この
    中で、次の雨季迄休眠する。
      但し、オーストラリア肺魚 = Neoceratodus forsteri だけは、肺機能の
    進化が不十分な、最も原始的な形態を止めており、もう少し水の多い、乾季
    でも干上がらないところに棲んでおり、休眠しない。
      餌は、魚食性である。
      肺魚を飼育するときは、空気呼吸が出来ないと死んで仕舞うので、水深の
    浅い水槽で、上に数センチの空間を取っておく必要がある。
      肺魚に限らず、アナバス科を含め、空気呼吸をする魚の、共通した特徴と
    して、水の汚れに耐える力は強いが、一度に大量の水を替え、水質を急変さ
    せると、体調を崩し易い。

【ハイポ】
      チオ・硫酸ナトリゥムの5水塩結晶 Na2S2O3・5H2O。
      白色半透明の、氷砂糖のような結晶体で、空気中の水分を吸着し、結晶の
    界面に水分子が過剰に存在すると、白く粉を吹いたような不透明になる。
      上水道の水を使って、魚を飼育するときに、水道の水に含まれている、塩
    素ガス(カルキ)を無害化するのに、使用する。
      ハイポと塩素ガスとの反応は、次の通り。
        Na2S2O3 + 4Cl2 + 5H2O → 2NaCl + 2H2SO4 + 6HCl
      この反応は、極めて速く、水にハイポが溶けた段階で、すぐに魚を飼育で
    きるようになる。
      また、反応式を見ても解るように、無害な食塩 NaCl の他に、硫酸 H2SO4
    と、塩酸 HCl が生成され、このうち、塩酸はいずれ空気中に拡散され、水
    槽の中から無くなるが、硫酸は揮発しないので、水槽の中に残る。
        ★参照  →  カルキ抜き、チオ・硫酸ナトリゥム。

【バイ・メタル式サーモスタット】
      水槽の温度を調整するために、水温に応じて、ヒーターの電源をON/O
    FFするのが、サーモスタットの役割で、熱膨張係数の異なる2種類の金属
    板を張り合わせた「バイメタル」は、温度に応じて撓むので、この撓みを利
    用して接点の開閉をするサーモスタットを、バイメタル式サーモスタットと
    呼び、原理が簡単なので、歴史が古い。
      熱帯魚用の、バイメタル式サーモスタットは、ガラス管の中に封入され、
    温度の設定値を調整するためのネジが付いているので、上部の調整ネジの部
    分は水上に出し、ガラス管の2/3位を水中に入れて、キスゴムで側面ガラ
    スに固定する。
      設定方法は、パイロット・ランプが点灯(ヒーターが発熱動作をする)す
    るまで、ネジを右に回して置き、ヒーターの効果で、希望の水温まで上昇し
    た時に、パイロット・ランプがチカチカと点滅を繰り返す位置にネジを調整
    すれば良い。
      水槽の掃除などで、不用意に調整ネジに触れると、設定値が狂い、魚を死
    なせる事があるので、注意する。
      調整ネジの部分は、ゴムのキャップが使われており、古くなると、キャッ
    プがヒビ割れが出来、ここから水が浸入すると故障の基になる。
        ★参照  →  サーモ・スタット、IC式サーモ。

【パイロット・フィッシュ】
      新しい水槽をセットするとき、未だ濾過装置の中に、濾過バクテリアが湧
    いていないので、いきなり沢山の魚を飼育する事が出来ない。
      濾過バクテリアは、色々な商品名の物が販売されているが、実際に使って
    効果の確かな物はなく、基本的には、時間を掛けてバクテリアの発生を待た
    ねばならない。
      実は、濾過バクテリア自身が生き物なので、餌がなくては繁殖できず、こ
    の為に、未だ濾過装置が正常に働いていない水槽に、水質の悪化に鈍感な、
    丈夫な魚を小数導入し、この魚の排泄物で、濾過バクテリアの数を増やす事
    が必要である。
      この時に使う、バクテリアの発生を促すための魚を、パイロット・フィッ
    シュと言う。
      パイロット・フィッシュを選択する基準は、水質の汚れに強い丈夫な事が
    必要で、大体に置いて、値段の廉い魚を選ぶと、丈夫な物が多い。
      ただ、値段が廉いと言っても、ネオン・テトラの様な、カラシン科の魚は
    考え物で、大量に人工養殖しているので値段が廉いが、水質の変化には敏感
    で、パイロット・フィッシュには使えない。
      なにしろ、理想的に濾過装置が働いている、水槽の水質を表現するのに、
    「小型カラシンが元気に泳ぐ水」と言う表現が有るくらいである。
     パイロット・フィッシュに適した、水質の悪化に強い魚と言えば、真っ先
    にコイの仲間を挙げて置く。
     なお、パイロット・フィッシュを使って水作りをするときに注意する事
    は、濾過バクテリアは、そこに与えられる餌の量に比例するので、余り少な
    いパイロット・フィッシュでは、沢山魚を収容する為の水作りは出来ない事
    を忘れないように。

【パイロット・プランツ】
      水草水槽を作ろうとする時、最初から成長の遅い水草を植え込むと、水草
    が成長する前に、大量のコケが発生し、水草の葉がコケに巻かれ、光合成を
    阻害されるので、水草は育たずに枯れて仕舞い、水槽中をコケに乗っ取られ
    る。
      これを防ぐためには、初めに、水中の硝酸やアンモニアをどんどんと吸収
    し、コケの肥料分を奪いながら旺盛に成長する水草を植える必要がある。
      この、最初に植える、成長の早い水草を、パイロット・プランツと呼ぶ。
      パイロット・プランツは、何れ、本命とする水草に植え替えられるのであ
    るから、これを選ぶ条件は、値段が廉く、かつ、成長が早い事である。
      値段の廉い事で普及しているアマゾン・ソードは、最初に、水中葉に転換
    するときに時間がかかるので、余り適当ではない。
      最もパイロット・プランツに適した水草は、ウォーター・スプライトで有
    る。

【白化個体】
      体に黒い色素を欠いた、アルビノ種の事。
        ★参照  →  アルビノ。

【バークレヤ】
      スイレン科の水草 = Barclaya longifolia。
      葉の表は緑色で、裏が茶色。
      ゴボウの様な形をした根茎の各部から芽を出し、葉柄が短く、細長い葉を
    茂らせる。
      すいれんの仲間ではあるが、葉柄が延びず、浮き葉を作らない。

【バークレヤ・レッド】
      バークレヤの赤変種 = Barclaya longiforia red form。
      葉の表も、赤味を帯びる。
      赤い水草の中では、比較的育て易い。