#52 熱帯魚辞典>(12) 《へ、ほ、ま、み》       可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

【ペーハー=pH】
      水質を示す指標の一つで、水中に溶けている水素イオンの相対活量の指数
    を数値で示し、酸性か、アルカリ性であるかを、知る事が出来る。
      pHの定義は、
        pH=−log(aH)+
      で有る。
      但し、(aH)+は水素イオンH+の相対活量を指す。
      pHのpは Power の略で、冪(ベキ = 数学用語)の意味。
      同じく、pHのHは、水素 Hydrogen の意味。
      pH7が中性の水で、7よりも数値が大きいとアルカリ性、小さいと酸性
    の水である事を示す。
      pHの定義から解るように、水素イオン活量の常用対数で値が示されるた
    めに、pHが1下がると、水中に溶け込んでいる酸性物質は10倍になり、
    pHが2下がれば、実に100倍もの酸性物質が溶け込んでいることに注意
    しなければならない。
      魚を飼育していると、餌の残り、排泄物など、様々な物質が、水槽の中に
    蓄積する。
      例えば、排泄物の主成分であるアンモニアが溶けていると、pHは7以上
    になるアルカリ性を示し、亜硝酸とか、硝酸が溶けていると、pHは7以下
    の酸性を示す。
      炭酸ガスも、酸性を示すが、エア・レーションをして、水中から炭酸ガス
    を排出すると、pHは上昇する。
      実際には、水槽の中に溶け込んでいる物質は、単一物質ではなく、様々な
    物が複合して存在するので、pHの挙動もこれらが複合した値を示すので、
    単純でない。
      最近は、pHを手軽に測定する器具が、比較的廉く出回っている事と、雑
    誌などの解説記事で、水質を論ずるときにpHをウンヌンと言うので、誤っ
    たpH信仰さえ生じている。
      例えば、殆ど不純物を含まないような、蒸留水に近い綺麗な水のpHは、
    中性に近い7近辺を指すが、アルカリ性のアンモニアと、酸性の亜硝酸(何
    れも、魚に対しては、強い毒性を示す)が多量に溶け込んでいても、適当な
    比率にバランスしていると、pHの測定値は、やはり中性の7近辺を示す。
      しかし、こんな水が、魚にとって、蒸留水のように綺麗な水と同じでない
    事は、容易に理解できる。
      処が、実際の問題としては、化学の知識に乏しい人が、pHに関する情報
    に接して、半可通(なまはんか)に理解したとき、pHの値そのものが大切
    で有るかの様な誤解をして、pHの値だけを見て、安心していたり、汚染物
    質が溜まった水をそのままにして、薬品を使ってpHを調整して、魚にとっ
    て快適な水になったと誤解し、安心しているような、極めて初歩的な間違い
    を犯す例が、珍しくない。
      ショップには、pHを調整したり、一定値にロックしたりする薬品も販売
    しているが、pHを調整しなければならないのは、特殊な環境に棲んでいる
    魚を飼育する時か、繁殖のように、厳密な水質調整を要求されるときだけで
    ある。
      一般的には、pHは水質の目安を付けるのが目的で、測定する物であり、
    『調整する物ではない』事を知らなければならない。
      また、複合した物質が溶け込んでいるときは、pHの値だけで、安心でき
    ないと言う事を、知って置くべきである。

【pHショック】
      魚を別の水槽に移動させたり、飼育水を一気に大量に替えると、pHの急
    変があった時、耐えられずに、死んだり調子を落としたりする事が有り、
    pHショックと呼ばれている。
      魚というのは、水の中で、生きている為に、水質の影響を受け易く、およ
    そり目安としては、pHの急変は、2以内に止めて置かないと、危険である
    と言える。
        ★参照  →  ペーハー。

【pH・ロック】
      飼育水のpHを一定に保つという薬品が、複数のメーカより発売されてい
    る。
      原理は簡単で、弱酸性のバッファ効果(水の中に、pHを変動させる様な
    物が溶け込んでも、これらと結びついて、pHの変動を抑えるような効果の
    事)を有する第一燐酸ナトリゥムと、弱アルカリのバッファ効果を示す第二
    燐酸ナトリゥムを適当な比率で混合すると、混合比率に依って、pH4〜9
    の間の任意のpHで、ロックする作用を実現できる。
     例えば、蒸留水に NaH2PO4 = 第一燐酸ナトリゥムと、Na2HPO4 = 第二燐
    酸ナトリゥムを溶かしたときの二つの成分と結果のpHの関係は、
            NaH2PO4 : Na2HPO4       pH
                9   :   1           5.9
                8   :   2           6.2
                7   :   3           6.5
                6   :   4           6.6
                5   :   5           6.8
                4   :   6           7.0
                3   :   7           7.2
                2   :   8           7.4
                1   :   9           7.7
    となる。
     ここで注意すべき事は、薬品を溶かす量は関係なく、比率だけでpHが決
    まる事である。
      この作用は、実験室では確かにうまく行くが、実際の熱帯魚飼育水槽で
    は、却ってトラブルの元になり易い。
      確かにこれらの薬品を使うと、pHをロックする作用はあるが、これは、
    水の中に溶け込んでいる、作用物質の量が少なく、二種類の燐酸ナトリゥム
    の効果が、計算通りの比率で働いているときの話である。
      水が汚れてきて、どちらか一方の薬品に結びつく物質が増えると、残った
    方の効果だけが強く出てきて、pHは4或いは9の何れかになる。
      化学の知識に乏しく、広告だけを鵜呑みにして、これらの薬品を使った素
    人は、こんな経験をすると、pHロック剤が多すぎたと誤解し、pHロック
    剤を、規定量よりも少なく使おうとする物だから、水中の不純物との相対的
    な量が不足し、バッファ効果を発揮できず、pHは、益々不安定になる。
      私が、常々、市販のpHロック剤を「pH不安定剤である」と言うのは、
    こういう間違った使い方が、避けられないからである。
      勿論、どんな時でもpHを安定させたければ、これらの不純物以上の作用
    を示すように、pHロック剤を大量に使えば良い。
      その結果、これらの薬品が、魚に毒性を示すほどの濃度になるかどうかと
    言う問題は、この際別にする。
      しかし、魚はpHで生きているのではなく、pHは、排泄物を初めとする
    水の汚れの指標に過ぎないのであるから、pHをロックしても、魚の健康は
    維持できない事を知らねばならない。
      解り易い例えで言うと、季節に関わらず、熱帯魚を飼育するのに適した水
    温に調整するのに、普通は温度計で、水温を調べているが、ここに、どんな
    時にも25℃しか表示しない温度計を持ってきて、測定値さえ理想の値を示
    して居れば、実際には氷のような冷たい水で、熱帯魚が健康に生きる事が出
    来るか考えて見ると、水質を示す一つのバロメータであるpHをロックする
    事が、いかにバカげた事であるか、理解できると思う。
      pHロック剤は、使ってはいけない事を、強調して置く。
        ★参照  →  pH、燐酸ナトリゥム。

【補助呼吸】
      鰓以外の器官を使った呼吸。
      アナバス科のラビリンス、肺魚の浮き袋、ドジョウの腸など、鰓以外に呼
    吸する器官を持っている魚があり、これらの魚は、補助的な手段による呼吸
    への依存度が大きく、場合に依っては、鰓よりも、補助呼吸の方が沢山の酸
    素を取り入れている場合がある。
      補助呼吸を行う魚は、水面を覆い、空気を吸えなくすると、溺れて死んで
    仕舞う。

【ポスト・ラーバ】
      海老のような、甲殻類は、卵から孵化した時は、親の姿とは似ても似付か
    ない、丸いプランクトンの様な姿をしており、これをゾエアと呼ぶが、何度
    かの脱皮を繰り返して、少しずつ姿が変わり、最終的に親と同じ姿になる。
      この、親と同じ姿をして、サイズだけが小さい、最初の状態を、ポスト・
    ラーバと呼ぶ。
      種に依って、ゾエアからポスト・ラーバに成るまでの脱皮の回数は、異な
    り、場合に依っては、スジエビとか、ショキタテナガエビの様に、卵の中で
    ゾエアの期間を終え、孵化した時には、既にポストラーバになっている種も
    ある。
      卵の外でゾエアの期間を過ごすものは、この期間の生育が難しいが、いき
    なりポスト・ラーバで生まれる種は、人工的に繁殖させ易い。

【ホテイ・アオイ】
      アマゾン原産の浮き草 = eichhornia crassipes。
      冬の間は、殆どの葉が枯れるが、屋外で越冬する事ができ、わが国にも帰
    化して居る。
      ハート型の艶のある葉の、葉柄部分が太く膨らみ、この中はスポンジの様
    になっていて、水面に浮かぶ。
      夏の終わりの頃、垂直に花穂を延ばし、花は青紫の小さな花を、房状に付
    ける。
      帰化して広く分布しているために、「ホテイ・アオイ」と言う和名がつけ
    られたが、これは、葉柄基部の膨らんだ浮き袋を、布袋さんの腹に見立てた
    もの。
      また、花が咲いたところは、ヒヤシンスに良く似ているところから、
    「ウォーター・ヒヤシンス」とも呼ばれる。
      この水草は、成長力が強く、ランナーを出して、あっという間に増えるの
    で、水中の栄養分を吸収する能力が強く、池などで、水質の浄化に役立って
    いる。

【ポリプテルス】
      ドジョウの様な細長い体型に、恐竜の背鰭を付けたような体型をした、魚
    食魚。
      種類は多く、そのうえ、地域変異による、色彩や模様に違いも多い。
      野生の物を採取した個体には、ポリプテルス属特有の寄生虫、マクロギロ
    ダクチルスが寄生した物が多い。
        ★参照  →  マクロギロダクチルス。

【ホルマリン】
      魚の鰓に、寄生虫が付いたときに使う薬で、ホルムアルデヒドCH2Oを
    35%水溶液にしたものが販売されているが、普通は、保存中に重合し、懸
    濁物が出来るのを避ける為、メタノールを添加して有る。
      劇薬に指定されているので、熱帯魚ショップでは扱って居らず、薬局で購
    入するが、購入に当たっては、印鑑が必要である。
      使い方は、水10リッターに1ccを溶かし、30分の薬浴を行う。
      飼育水槽に、直接入れると、濾過バクテリアを殺して仕舞うので、別の容
    器で薬浴させた方が安全である。

【ホルモン】
     動植物の成長、代謝、繁殖などに関わる微量栄養素をビタミン、或いはホ
    ルモンと呼ぶ。
     ビタミンとホルモンは殆ど同じ物であるが、動物の体内で自家合成を出来
    る物は、ホルモンと呼び、自家合成できず、餌を通じて体外から取り込む必
    要のある物をビタミンと呼ぶ。
     熱帯魚業界では、このホルモンが悪用されている。
     即ち、繁殖に関わる性ホルモンは自然状態では成熟と共に分泌され、体色
    を美しくするという効果があるが、幼魚に男性ホルモンを与えると、恰も婚
    姻色が出たような体色を発現する事が出来るという事である。
     この現象を利用し、現在販売されている大部分のディスカスは、幼魚のう
    ちから男性ホルモンでドーピングされ、ギラギラと青色に輝く物が販売され
    ている。
     中には、アフリカンシクリッドまで同じテクニックで青く色揚げされた物
    が販売されている時もある。
     この男性ホルモンによるドーピングは、雌雄を問わず色が揚がるが、深刻
    な繁殖障害という後遺症を残す、犯罪行為である。
        ★参照  →  ドーピング。

【ホモ】
      ホモとは、ラテン語で、単一のとか、均質のとか言う意味。
      生まれた子供が、親とそっくりの表現形のものばかりで揃って居れば、そ
    の親は、もはや、表現形以外の形質の遺伝子を持って居ない純系という事に
    なる。
      この様に、余計な遺伝子を、隠し持って居ないものを「ホモ」と言う。

【マウス・ブルーダー】
      魚の中には、少ない卵を産み、親が保護して確実に子孫を残そうとする物
    が居て、保護の方法にも、色々変わった物がいるが、シクリッドの中に多い
    方法として、卵を口にくわえ、保護する物を「マウス・ブルーダ」と呼ぶ。
      アフリカン・シクリッドは、この方法を採る物が多いが、アロワナも、マ
    ウス・ブルーダで有る。
      普通は、産卵の直後から、自由遊泳を始めるまでの間、保護するが、そう
    で無いのもいる。
      ポピュラーな魚の例としては、ジュルパリは、石の表面など、基質に産卵
    し、孵化した後、口に含み、暫くの間保護する、「セミ・マウス・ブルー
    ダ」であり、この場合は、稚魚が自由遊泳を始めた後も、危険が迫ると一斉
    に親の口の中に逃げ込む。

【牧野信司】
      1950年代の、第一次熱帯魚ブームの盛り上げに貢献した、功労者。
      暫く名前を聞かなかったが、今でも現役であり、最近またF.M.誌に、
    魚人物伝などと言う連載記事を執筆し、偉大な先達を持ち上げる一方で、そ
    の人と、いかに親しい交際があったかと言う事を宣伝し、自分もそれらの偉
    人と、同列に置かれるべき人物だと言う事を、さりげなく、宣伝している。
      未だ、ネオン・テトラが1引き万円もした時代に、わが国で初めて、水槽
    内での繁殖に成功したと言う、輝かしい功績を残した。
      保育社辺りから、熱帯魚の解説書を沢山出版して、熱帯魚趣味の、普及、
    啓蒙に貢献したが、実を言うと、当時出版した本の内容は、殆どInnes
    の出版物の真似で、独自性がなかった。
      しかし、洋書が殆ど出回っていない時代であったから、一般の読者には気
    付かれる事もなく、良く売れた。
      実を言うと、私も、牧野信司さんの本を買って、熱帯魚の飼育方法を勉強
    した。
        ★参照  →  イネス。

【マクロギロダクチルス】
      ポリプテルスの現地採集個体に多い、寄生虫。
      オレンジ色をした、糸屑の様な、虫で、背鰭の付け根などの皮下に食い込
    んでおり、うっかりすると、体表の模様と間違える事もある。
      この寄生虫は、皮下に潜り込んでいるので、殺虫剤の効かせ方が難しく、
    駆除は困難。

【マダガスカル・レース・プランツ】
      球根を持つ水草、アポノゲトンの一種で、葉が葉脈だけで出来ているよう
    なレースの様な、作り物の様な美しい葉の水草。
      かつては、葉が細長い Aponogeton bernierianus、
    広くて短い Aponogeton henkelianus、同じく、広くて短いが、横脈を繋ぐ
    短い縦脈が無い Aponogeton fenestralis に分類されていた。
      現在は、これらの違いは単なる地域変異と見なされ、学名は、
      Aponogeton madagascariencis に統一された。
      しかし、実際に見た目にも、これらの形態状の違いは大きいので、細葉タ
    イプを区別するときには、Aponogeton madagascariencis narrowleaved
    form と呼ぶ事になっている。
      高温に弱く、23℃以下で育てるのが良い。
      また、本種は、アポノゲトン属の特徴として、休眠する。
        ★参照  →  アポノゲトン。

【マツカサ病】
      体表の粘膜の中に、細菌が繁殖し、皮膚の艶が無くなり、症状が進むと、
    鱗の下が炎症を起こして腫れ上がるので、鱗が立って、マツカサが開いた様
    になるので、誰でも間違いなく診断を下せるという、分かりやすい病気。
      診断を下せると言っても、症状の進んだ物は治療が難しい。
      この病気が発生するときは、フィルターが正しく機能を発揮しておらず、
    水が相当汚れている時であるから、フィルターの点検と、水替えが不可欠で
    ある。
      薬は、一般の感染症に使う、パラザンとか、グリーンFを使えば良いが、
    水の汚れが原因であるから、薬だけでは治療できない。
      薬を投与しながら、5〜7日、連続して、50%位の水替えを続けること
    によって、治療できるが、体が一回り大きく見えるほど、鱗が立っている処
    まで症状が進行した物は、治療が難しい。
      最も効き目が確かな薬は、薬局で販売している「トリコマイシン腟錠」で
    あり、これを、水100リッター当たり1錠と、食塩を少し投与するのが良
    い。
      トリコマイシン腟錠は、医師の処方箋無しで購入できる、数少ない抗生物
    質であるが、これは水中では6時間位で分解されるので、朝、夕、各一回与
    え、毎日水替えをすれば良い。
      下手をすると、魚の値段よりも、薬代の方が遥かに高くつく、ということ
    になるかも知れないが、高価な魚の場合は、こういう確実な治療法が有ると
    いうことを、覚えておくと良い。

【マツカワヤ】
      東京都、台東区の鬼子母神バス停前に在る、ディスカス・ブリーダ。
      かなり以前に、ワットレィ・ターコイスを導入し、自家繁殖しながら、選
    別と淘汰を繰り返し、ベータ(全身ベタ青になる)とか、オメガ(ストライ
    プ模様になる)のターコイス・ディスカスの系統を確立した、わが国を代表
    する、ディスカス・ブリーダ。
      品物は良いのだが、職人気質というか、商売は下手で、香港から大量に輸
    入される、『廉かろう、悪かろう』の、ドーピング・ディスカスに破れ、
    1989年末に一時休業に追い込まれたが、最近また復活し、最近は原種の
    繁殖なども手がけているという。
        ★参照  →  ターコイス・ディスカス。

【松坂実】
      ナマズの大家。
      アマゾンへ出かけては、次々と珍しいナマズを採取してくる。
      なかなかの事業家で、珍しいナマズを持ち帰り、各地のイベントに貸出、
    お金を稼ぐだけでなく、A.L.誌に記事を書いて、人気を煽っておいてか
    ら、高い値段で売り出す。
      最近は、A.L.誌を利用するだけでは飽き足らなく、『アクア・マガジ
    ン』と言う、写真中心の熱帯魚雑誌まで発行している。
      現地へ出かけて、採取する努力は見上げた物であるが、分類の解説記事に
    なると、マユに唾を付けたくなるような記事がある。
      TVに出て、苦労して捕まえたナマズを、『元気でナッ』等と言って、川
    に逃がす、わざとらしい演技も、平気で出きる。
      A.L.誌の対談で、これから面白い魚と言って、自分が売りたい魚の名
    前を一通り挙げた後で、これから面白くない魚と言って、アジア・アロワナ
    を挙げ、『この魚は密輸に決まっています』等と、正義漢振りを売り込んで
    いたが、舌の根も乾かない内に、密輸魚の故買容疑で、警察のガサ入れを受
    けたという、立派な経歴を誇る。

【マラカイト・グリーン】
      トリフェニル・メタン染料の一種 Malachite-Green。
      青竹色の染料で、竹細工を青竹色に染めるのに多く使われ、その他の雑貨
    の染色にも使われているが、耐久性が低く、低級な雑貨品に使用される。
      水溶液は塩基性を示す。
      淡水魚の表皮に付く、カビ性の病気の治療に使われ、鰓に着いた寄生虫を
    殺す効果も期待でき、メチレン・ブルー依りも強力であるが、魚に対する毒
    性もあり、高濃度、長時間の薬浴は危険。
      熱帯魚ショップには、マラカイト・グリーンだけの単独薬は販売されて居
    らず、各種の抗菌剤と、メチレン・ブルー、等を混合した物が、様々な商品
    名で売られている。

【ミクロソリゥム】
      水生シダの一種 = Microsorium pteropus。
      わが国でも、八重山諸島には、少しであるが、自生している。
      シダと言っても、根株の一カ所からロゼット状に葉を伸ばすのではなく、
    3mm程の太さの茎を横に這わせ、順次葉を展開して行く、乾燥地に生える
    シダ、ヒトツバに似た外観を持つ。
      茎が底砂に埋もれないように、浅く植えるか、流木などに着生させた方が
    良く育つ。
      照度は、低くても良い。
      葉に傷が入ると、そこに子株を作り、良く殖える。

【ミコバクテリゥム】
      抗酸菌の一種。= Mycobacterium spp。
      細菌と、ウィルスの中間のような、微生物。
      魚の筋肉組織とか、内臓組織に寄生し、シスト(菌の群体による瘤)を作
    る。
      感染した魚に対する、有効な治療法は無い。
     この菌の怖さは、感染した魚に対する被害よりも、飼育する人間に感染し
    たときの被害の方である。
      魚がこの菌を持っている時、傷のある手を水槽に入れると、傷口から人間
    にも感染し、症状としては、悪性の皮膚炎のように皮膚が爛(ただ)れる。
      一般の皮膚科の医者では、滅多に経験しないので、正しい診断が付かない
    事もあり、単に正体不明の皮膚炎と誤診される恐れがあるから、要注意。
      海水魚もこの菌を保有している事が多く、板前とか、水族館職員の様に、
    普段魚を扱う人達の、職業病の一つに挙げられる。
      人に感染した場合、皮膚が爛れるが、外用の軟膏などは余り効かず、テト
    ラサイクリン系の抗生物質を服用するのが、一番確かな治療法であり、良く
    効き、一週間ほどで治る。
     私自身、手に感染して酷い目に会った事がある。

【水合わせ】
      水質合わせの事。
        ★参照  →  水質合わせ。

【水替え】
      魚を飼育していると、排泄物が出るが、これを濾過装置を使って浄化して
    も、最終的には、硝酸の形で残る。
      水草を植えて置くと、これらは肥料として吸収されるが、魚に与える餌が
    多いと、水草の吸収能力を超え、水槽の中に、過剰な硝酸が蓄積し、濾過バ
    クテリアの活動能力が落ちるとともに、底砂の中の淀みなど、酸素の不足す
    る部分があると、硝酸は容易に毒性の強い亜硝酸に還元される危険がある。
      また、水草が多くても、餌などに含まれているミネラルの中、魚にも水草
    にも利用されない物が蓄積したり、逆に、水草に取って必要なミネラルが不
    足したりする事が起きるので、蒸発した水を補給するだけでは、調子の良い
    水槽を維持できない。
      この為、定期的に、蓄積した亜硝酸を古い水と一緒に捨て、新しい水を供
    給する、「水替え」作業をが必要になる。
      この水替えは、亜硝酸と、不要なミネラルを捨て、新しい水とともに、必
    要なミネラルを供給するのが目的であるから、ファイブ・プランから売り出
    されている「そうじやさん」等と言うような、モーター式のポンプに布の袋
    を着けたような物で、目に見えるゴミを取って、澄んだ水を作ったからと
    言って、水替え不要になる物ではない。
      水替えは、水道の水に含まれているカルキを処理するために、ハイポを使
    い、現在の水槽の水温と同じか、1℃だけ、高い温度の水を供給するのがよ
    い。
      また、水質の急変に依って魚が調子を崩すのを防ぐために、一度に替える
    水の量は少なく、少しずつ回数を多く替えるのがよい。
      例えば、同じ水替え量であっても、1週間に一度50%の水を替えるより
    も、1週間に二度、25%ずつ替える方が、魚にとっては刺激が少ない。
        ★参照  →  カルキ抜き、濾過装置。

【水草】
      一般的な意味で、水草と言えば『水中、または水辺に生育し、植物体の全
    て、または大部分が水中にある高等植物』と言う事になるが、アクアリスト
    が水草という場合、根は水中にあっても、葉の部分が水上にある、イグサ等
    は、水草として扱わず、植物体全体が水中にあるものを指す場合が多い。
      水草の進化の過程を考えると、水中の藻類などから、連綿と水中に留まっ
    たまま、進化したものではない。
      植物の進化の過程は、水中の藻類から、陸上に進出して、シダ類、裸子植
    物、被子植物と進化したので、現在の、花を咲かせる被子植物は、進化の最
    高の位置にある植物である。
      処で、水草もよく観察すると、大部分が被子植物である。
      従って、ニテラの様な特殊な物を除き、一度陸上に進出して、進化を遂げ
    た一部が、もう一度、水中という環境に進出する、進化を遂げたと考えるの
    が正しい。
      水草は、陸上の植物と違って、葉から直接肥料分を吸収し、根は、植物体
    を固定しているだけとの説もあるが、この説は、実際の水槽内の水草の観察
    結果と、合わない。
      水中という特殊な環境にあるため、水の蒸発を抑えて、乾燥に耐えるとい
    う機能が、不要であるから、葉の表面が薄く、水上に上げると、乾燥して枯
    れて仕舞うような、表皮の薄い、華奢な葉を繁らせるが、根は陸上植物と同
    じ様に、大切な役割を果たして居る。
      これは、底砂の中に埋め込んだ肥料を吸収する事ができ、根を切り詰めた
    り、腐らせたりすると、成長できなくなる事を見ても、単に植物体を固定し
    ているだけでない事が解る。
      水草の生育する条件であるが、これは、水草だからと言って、特別な条件
    がある訳ではなく、一般の陸上植物と同じである。
      即ち、光線、栄養、温度、水質の4条件で、水草を水槽内に植え込む時、
    これらの全てを満足するような環境を与えなければ、草は育たない。
      なお、ショップには、オリズルランとか、ドラセナ類が水草として販売さ
    れている事があるが、これらの植物は水草ではなく、暫くの間水中に耐える
    事が出来ても、成長は出来ず、そのうちに枯れて仕舞う、切り花の様な物で
    ある。

【水草用肥料】
      水草も植物であるから、元気良く育つためには肥料が必要である。
      植物の肥料と言えば、陸上の植物も、水草も同じで、三大要素は、窒素、
    リン、カリで有る。
      また、その他に、微量要素と言われる、マグネシゥム、マンガン、鉄等の
    ミネラルが必要となる。
      これらの肥料の中、窒素は魚の排泄物として供給されるので、過剰気味に
    存在し、リンも不足する事は無い。
      ただ、これは水草に限らず、植物全般に言えることであるが、植物が肥料
    として窒素成分を利用する時、アンモニア態窒素と、硝酸態窒素は肥料とし
    て利用できるが、亜硝酸態窒素を利用できる植物は殆ど無いということを、
    知って置く必要がある。
      ミネラルは、陸上の植物は土から豊富に供給されるが、水中にあっては、
    不足気味か、或いは、全く不足する。
      従って、水草用の肥料と言うのは、陸上の園芸用肥料と違って、窒素を含
    まず、ミネラルを主成分とした物で無ければならない。
      市販の、水草用肥料と言うのは、全て窒素を含まず、ミネラルを中心に配
    合した物である。
      値段が廉いからと言って、園芸用肥料で代用すると、水質の浄化に役立た
    ないばかりか、過剰な窒素により、コケの大発生に見舞われる事になる。
        ★参照  →  コケ対策、濾過装置。

【水作り】
      魚を飼育するとき、水作りが大切と言われるが、水作りとは、要するに濾
    過バクテリアがしっかりと繁殖し、安定したフィルター効果に依って、餌を
    やっても水質が急速に悪化しない様な、安定したフィルター・システムを作
    り上げる事であって、水の中に何か薬品を入れたりして、水質を調整する物
    ではない。
      勿論、湖産アフリカン・シクリッドの飼育とか、ディスカスの繁殖とかに
    なると、濾過バクテリアが湧いていると言うだけではダメで、各種の薬品に
    依ってpHや硬度等を調整してやる必要があるが、これらは、特殊なケース
    であって、水作りの基本は、安定したフィルター・システム作りである事を
    忘れないで貰いたい。
      よく、雑誌などの入門解説書を読むと、新しく設置した水槽は、一週間ほ
    ど水を空回しして置き、バクテリアが湧いたところで、魚を入れると書いて
    有り、同じ様な指導をするショップもあるが、これは濾過バクテリアと言う
    物を良く理解できていない、初歩的な間違いで、何も入っていない水を空回
    ししても、濾過バクテリアは繁殖しない。
      濾過バクテリアも生き物であるから、餌が必要で、具体的には、水質の悪
    化に強い魚を少しだけ入れて、この排泄物で、バクテリアの繁殖を促す必要
    がある。
      この、最初に入れる魚をパイロット・フィッシュと言う。
    一週間ほどで、ニトロソモナスが発生し、アンモニアを亜硝酸に転換し、魚
    にとっては非常に危険な状態になるが、この亜硝酸を餌に、ニトロ・バク
    ターが発生し、最終的に、魚の排泄物を硝酸に転換するフィルター・システ
    ムが完成する。
      ショップには、バイオ何とか言ういかにも有り難そうな名前を着けて、水
    の素とか、生きた濾過バクテリアとか称する物を販売しているが、残念なが
    ら、これらの中に、効き目の確かな物は無い。
      こんな物を使うのは、単なる気休めに過ぎず、お金の無駄使い以外の何物
    でもない。
      濾過バクテリアと言うのは、少しずつ魚を増やしながら、殖えるのを待た
    ねば成らず、最終的に安定したフィルターが出来上がり、水作りが完成する
    までには、およそ3カ月の時間が必要である。
     しかし、魚に取って安全かどうかと言う観点から評価すると、およそ1カ
    月で水作りは完了すると考えても良い。
        ★参照  →  濾過装置。

【ミズ・ミミズ】
      細い、糸屑のような寄生虫で、イトミミズとか、新規に購入した水草等に
    混じって、水槽に浸入して来る。
      魚に対する害はないが、見た目に不愉快で、観賞価値を損ねる。
      薬で処理するのは難しく、一時的に処理した積もりでも、底砂とか、水草
    に付いて生き残った物が繁殖する。
      フィルターがしっかり働き、水質がよい場合は、大量繁殖せず、水質が悪
    化すると、沢山出てくる。
      これを食べてくれる魚は余り居ないが、ドワーフ・グーラミィ等が食べて
    くれる。

【ミドリフグ】
      グリーンの地肌に、黒いスポットをちりばめ、観賞用に適した小型のフグ
    で、Tetraodon fluviatilis。
     学名の Tetra と言うのは、数字の4を意味する。
     なにが4かと言うと、フグの仲間を正面からみたときの体の断面の形が4
    角形をしているためである。
      ヒョウキンな表情で泳ぐ、汽水魚であるが、純淡水にも耐える。
      しかし、鋭い歯を持っており、水草を齧る間は許せても、泳ぎの遅い魚を
    襲い、柔らかい鰭を食べて、襲われた方は、全く総ての鰭を失い、コリドラ
    ス等は、ダルマの様に成って仕舞うので、泳ぎの遅い魚とは混泳させられな
    い。
        ★参照  →  汽水魚。