#62 設備>R/Oシステムを考える           ヒロちゃん
ヒロちゃん ID:CABOMBA 94/12/28 #80,#92,#93 淡水魚水槽


 ところでR/Oの導入に絶対反対というわけじゃ無いんです
よ。
 先ずは、使ってみればわかるので、私とは違った部分で意見
を聞きたいと思っています。
 私も、ただ、それ程、効果は無いと思い込んでいるのかも知
れませんしネ。

 私が今、言えるのは、ドイツの人にとっては、R/Oシステ
ムが総硬度を下げるには最も安価方法だと言うことです。
 以前、ヨーロッパ人に聞いた話しでは、ドイツの場合家族の
人数によって水道料金は固定制だと聞いたので、逆浸透装置を
使って、何倍もの水を垂れ流そうが料金は一緒だと言うことで
す。
 確かに、導電率と言うのは、アマゾン川の数値を見ればかな
り低いのが事実なので、決して無視は出来ないのでしょうけれ
ど、それでも350マイクロシーメンスを超える水質で原種を
繁殖することは出来ました。(もっとも、世話が悪くて、5セ
ンチサイズに育ったところでエイズを起こしてしまい全部を落
としたけど)

 あと、効果ありそうだと考えられるのは、夏場のみですね。
 夏場の水質悪化というのは、水そのものの溶存酸素量も低下
しますから、川に流れている水ででさえ、バクテリアによる汚
水処理能力は低下します。
 その中に含まれる多くの不安定な物質を化学処理し供給され
る水道水には、魚にとって多くの毒素が入っていても不思議は
無いと思います。
 そういう時期の使用は、それなりに効果があるのではないか
と思います。

 もし、導電率計を持っていらっしゃる方がいらっしゃったら、
是非、水道水が年間どの位変化するのか、測ってみられては如
何でしょう。
 私のは、随分前に故障してしまってレポートできないのです
が、私の住んでいる地域では、良いときで190マイクロシー
メンス、悪いときで350マイクロシーメンスを超える時があ
りました。
 その悪いときに換水するとディスカスは最悪でした。
 けど、水槽水の導電率が換水しないで自然に上がった場合は
問題無いんですよ。
 で、その頃、関東では最悪といわれる金町水系の方が、まだ、
ずっとましだったんです。
 低い時で、160マイクロシーメンス以下でした。

 従って、導電率というよりも、問題は含まれる物質が何なの
かと言うのが問題ではないかと思うんです。
 バクテリアが良く繁殖した水では、その有害な物質は、多分
無害化されていくのではないでしょうか。

 まあ、もっとも、その有害な物質を最初から入れなければ良
いという、R/Oシステム導入の理屈も逆に出ては来るのです
が、それは違います。
 つまり、R/Oシステムが作る純水というのは、決して水中
生物にとって良いわけではないのです。
 水には生物にとって必要な物質も多く含まれており、それが
無くなるとバクテリアをはじめ、色々な微生物が生きて行けな
くなるのです。(病原菌を殺す手段にもなりますが)
 その為、純水は作っても、結局は、別の水との割水を行なう
事になるんです。
 しかし、考えてみれば、例えば、4倍に薄めてしまったら、
それを行なったこと自体、意味も持たなくなってしまいますよ
ね。

 しかし、ドイツのブリーダーがこれを行なうには、意味があ
るんです。
 つまり、総硬度を下げるためにピートを使うという点です。
 ピート通水による水処理は、R/Oよりもコストがかかりま
す。
 つまり、ピートは、いつまでも無限に使えるわけではなく、
ある一定量の水を作ったら交換しなければならないと言うこと
です。
 その為、ピートによる水作りは、コストが大きくかかるんで
す。
 これは、単に園芸用のものを使えば良いというわけでは無く、
その目的を達成できる性質を持ったピートを選ばなければなり
ません。
 私も、手に入る色々なピートを使って見ましたが、やはり、
熱帯魚専用に開発されたピートは優れていると思います。
 これを、単に導電率で計るのは間違いかも知れませんが、セ
ラのブラックピートを使用した場合、確実に導電率が下降しま
した。
 つまり、不安定な溶存イオンが減少したという事は、それだ
けに毒素が減ったということでは無いかと思うのです。

 さて、話しが少し横道にそれかかっているので、コストの方
に話しを戻しますが、それだけの性能を持ったピートでも、処
理出来る水量はわずかなもんです。
 私のテストでは、セラのブラックピートが導電率を250マ
イクロから150マイクロまで下げられるのは、せいぜい20
0リットル分の水を処理するところまであたりでした。
(あのセラのブラックピート1袋分でです。)
 それで、単に計算すると、200リットルの水を作れるのは
ブラックピート1箱分のお金が掛かるということです。
(もっとも、150マイクロシーメンスにする必要は無いと思
います。あくまでそれを基準に考えた場合の話しです。)

 これを考えると、ピート処理水は結構お金がかかるのは事実
なんです。(ドイツの場合、使わざるを得ないんですよ。)
 しかし、これをドイツのブリーダーは、R/Oで作った水を
半分で割って使えば、そのコストは半分近くになるということ
です。
 従って、そのメリットが大きいのです。

 私が、R/Oはそれ程必要が感じないというのは、こう言う
点からなのです。
 つまり、R/Oで作る水は、コストの高い水を割って安く使
っているにすぎないと言うことなんです。

 もっとも、私の考えが間違っていない等とは言いません。
 何か、R/Oを使って、本当に良いことがわかったら知らせ
て下さい。

 ただ、一つお願いしたいのは、PSBの魔法的な効果の様に、
人の話術によって、効果ないものまで効果があったように、そ
れを信じ込まないで欲しいんです。
 あくまで、客観的に観察して下さる様、お願い致します。


【R/Oシステムを考える その1】


 R/Oシステムが話題となっているので、もう少し書いてみ
ますね。
 ドイツ等、R/Oシステムの導入について、その第一の目的
については前回お話しした様に、高度の高い水を軟水化する為
に使用しています。
 そして、それと必ず併用しているのがピート水です。

R/O水(純水の特徴)

 純水とは、余計な成分を殆ど含まない真水の事です。
 この真水は、とても不安定な水で、生成後も大気からどんど
んCO2やO2、その他大気成分を取り込み導電率やpHも大
きく変動させます。
 この水に、例えば微量の燐酸等を垂らしてみてください。
 そのpHは一気に下降し、pHの緩衝能力は全く無いことが
判ります。
 そして、余計な成分を全く含まない真水は、バクテリアを始
めとする、多くの微生物を殺傷する力があります。

 これを、もし、100%ディスカスの換水に使用したら、水
槽内の生態系を一気にぶっこわし、そしてディスカスにも悪影
響を及ぼしてしまいます。

 しかし、この真水は、イオン濃度の濃すぎる水を薄めるには
最適です。
 よく、車のバッテリー液が減った時、補充を行いますが、つ
まり、これのことです。

ピート水(ピートに通水した水)

 ピートを透して得られた水は、真水ではなく、水道水などの
源水に含まれる溶存物質を塩として安定させた物質を多く含み
ます。
 そして、ピートそのものの溶出成分も加わり、それぞれの成
分の緩衝から比較的安定した水質を得ることが出来ます。


 ドイツのブリーダーは、基本的にはピート水を用いています。
 かのシュミットフォッケ博士は、R/O水は使わず、もとも
と導電率の低い水道水が手に入る郊外へわざわざ引っ越して行
ったと言う話しは有名ですが、その導電率の低い水をピート濾
過し、使っています。

 また、ゲーベル氏は、R/O装置で得た真水とピート水を混
合しそれを用いています。

 アマゾン水系は、ブラックウォーターやホワイトウォーター
で有名ですが、水はそんな色をして如何にも溶存イオンが多そ
うに見えますが、それでも導電率が40から150マイクロシ
ーメンスと低い値を示しているのは、ジャングルから溶出する
ピートの様な成分(植物の腐敗成分)が、イオン物質をどんど
んと塩へと安定化物質に変化させている為です。
 そして、雨季に入ってからは、今度は空から大量の純水が降
って来ては、その水を薄めています。

 一般、飼育においては、アマゾンの乾季状態、つまりピート
水を用いればベストでは無いかと思います。
 そして繁殖期、ディスカスは、雨季に入る頃がその最盛期だ
と聞いています。
 そのタイミングは、ピートで濃くなった水が、雨季初期の雨
降りよりピート水を薄め始め、それが刺激となるそうです。
 そして、雨が段々強くなる中、稚魚達は空から降ってくる真
水と、ジャングルから更に溶出されてくるピート水との新しい
混合水の中でどんどん成長していくそうです。

 よく、換水した後、ディスカスに繁殖行動がありますが、ワ
イルド時代のこういった習性からなのでしょうね。
 かのワットレイ氏の言う「換水に優るフィルターは無い」と
いうのは、雨季の雨降りの中に育って行く稚魚の事を考えての
事かも知れません。
 そしてワットレイ氏も、繁殖するペアの水槽には、必ずピー
ト水を使用しているとの事です。

 さて、R/Oシステムの導入ですが、その水はつまり空から
降ってくる雨の役割と言うことになります。
 基本的にはピート水、そしてそれを薄める役目はつまり真水
というわけです。

 ところで、この環境を水槽飼育にあてはめるとどういう事に
なるでしょう?
 ジャングルの中のアマゾン川と比較すると、その水量は圧倒
的な違いを見せます。

 ここで、2通りの飼育方法へと分かれるわけです。
 換水に頼る雨季式法、濾過に頼る乾季式法とあります。

 雨季式は、稚魚育成に大変有効な手段です。
 しかし、ここで難しいのは、常に新しい水をどんどんと交換
していくわけですが、交換する水は既にディスカス飼育に最適
となった水をどんどんと生産せねばなりません。
 それには、供給する源水から、ディスカスの飼育を阻害する
物質を取り除かなければなりませんし、また、出来れば生態系
を確立した水を換水に使いたいところです。
 そして、毎日の換水となると大変手間が掛かります。


【R/Oシステムを考える その2】


 乾季式の場合、換水量を減らし、水槽内の生態系を出来るだ
け破壊しない様にします。
 換水する水には、当然、ディスカスの飼育を阻害する塩素以
外の物質も含まれますが、それらは一回の換水量を影響の及ぼ
さない程度に抑え、そしてその最終的な無害化は濾過の方に任
せます。(塩素はコントラコロライン等で中和する)
 そして、濾過バクテリアの活性を維持するためpHの緩衝に、
ある程度のKHを供給する必要があります。
 換水用の水は、KH(炭酸塩硬度)によって、その換水量を
決定すると言う方法もありますが、KH物質を溶出する珊瑚等
を濾過槽に少量添加することで、その量をより少なくすること
が出来ます。
 ただし、いくら塩として安定した物質でも、蓄積し濃度が高
すぎると有害な物質となりますので、時には多めの換水が必要
であると思います。

 私が普段奨めているのは、アマチュアにとって手軽な乾季式
です。
 雨季式は、稚魚へ大量に高タンパクの給餌を出来るというメ
リットから育成に大変向くのですが、反面水作りが難しいのと
そして繁殖には適さないと言う点からです。
 水作りのしっかりしていない人がそれを行なえば、換水の度
に大きな水質変動(水温も含む)を起こし、魚に大きなストレ
スを与え、何かの引き金で病気、悪ければ全滅という事態も起
こります。
 こういった人が、R/Oシステムを使うのは、飼育を阻害す
る物質を薄めてくれるという意味で、それなりの価値があるの
かも知れません。

 繁殖には、どうしても、濾過が作り上げる水が必要です。
 ただし、逆にKHが邪魔になる存在なので、この場合、濾過
槽の珊瑚は取り除き、換水によるKH供給も最小限になるよう
換水量を減らします。(反面、換水回数を増やす)
 この場合、R/O水も用いて換水すれば、一回の換水量を増
やすことが出来、必要以上に塩となった物質をより多く外へ排
出できます。
 しかし、この場合も100%はそれを用いず、それを割水し
(出来ればピート水)使う様にすべきです。

 私の場合は、もっと手軽に、溜め置き水槽に上部濾過をセッ
トし、そこへディスカスを飼育している水槽で使った汚れたウ
ールをセットします。
 そのウールには、濾過が不完全な物質が付着しており、濾過
バクテリアがそれを濾過するついでに新しい水のKHを消費し、
そして、バクテリアが繁殖し水質を良化してくれます。
 この水を、繁殖水槽の換水に用います。
 この水の場合、源水をそのまま使うよりは多めの換水が出来
ます。

 さて、原種にはR/Oシステムが必要かとの議論になります
が、私の見解を申します。
 原種ディスカスには、純水よりも飼育に適した水が必要なの
です。
 それは、原種ディスカスの場合、アマゾン川流域の集荷場に
集められるにしても、奥地のディスカス程、何日もかけて川を
下って付く頃にはヘトヘトに痩せ細って到着します。
 そして着いたのも一息入れた程度で、今度は、小さな袋に詰
め替えられ、そして飛行機へ、更に問屋へ・・・・、一体何回
小さな袋へ入れられて旅をするのでしょう。
 ブリードされたディスカスの様に、体力を付けて旅をするの
とは違い、ヘトヘトとなった体に鞭を打って、何とか最終目的
地へとたどり着くのです。
 こういった魚と、そうでない魚では、たどり着いた所の水質
が同じでも、体に与える影響の度合は違います。
 つまり、少しでも飼育に適した水でないと、体力の衰えた魚
には驚異なのです。
 その上、出荷場で感染させられる色々な病気をともない、ま
さに原種が難しいと言われても仕方がありません。
 さて、その衰弱しきった体を元に戻せるのはどの位の時間が
かかるでしょうか?
 私のこれまでの経験では、少なくとも半年、かかる場合は1
年半です。
 以前ここで私は、病気の魚に対する換水は、風邪で寝ている
人の布団に水を掛けるような物だと言ったことがあります。
 それだけに、換水のストレスは大きいので、日頃、雨季式換
水をしている人の水槽では、原種が良い色を見せてくれないの
も当然です。

 私は現在、普段の飼育でR/Oやピート水、そして活性炭ミ
クロフィルターすら使っていませんが、原種は元気に色を出し、
目は綺麗な赤色をしています。
 もっとも、それは器具を用意出来ないという理由もあります
が、単に中和剤程度を使うだけでも、それだけ飼えると言うこ
とです。

 しかし、それだけ器具が用意できる方なら、出来る事はして
あげてください。
 ただし、R/Oは、使い方を間違えれば、逆効果だと言うこ
とだけ知っておいてください。(あくまで薄め液)
 私の仲間には、プロを始め多くの方がいらっしゃいますが、
R/Oの使い方を間違えた失敗で全滅をさせた例が多く、必ず
しもそれを使うことがパーフェクトでは無いのです。

                                           PC-VAN CABOBA
                          ヒロちゃん