ポルトガル語ことわざの知恵
渡辺宏昭
1992年10月1日発行 税込価格 \2,625
B6判 並製 224頁 ISBN4-88636-061-0 C0587
|
まえがき
ことわざは言葉の調味料であります。私たちの日常会話の中にことわざを差しはさむことによって会話は機知やユーモアを生み、あたかも調味料が加えられたように味わいぶかいものとなります。私は以前からこうしたことわざの持つ機知、ユーモア、簡潔さなどの特色に魅せられて日ごろ関心を抱いてまいりましたが、1988年にはそれまでの研究成果を「ポルトガル語ことわざ辞典」として発表いたしました。この辞典ではブラジルとポルトガルで用いられていることわざ約2000句を、日本語ことわざと対照させる方法で紹介いたしました。しかし上記の辞典の出版後、ことわざをもっと分かりやすく説明した入門書の出版が必要ではないかと感じるようになりました。本書はこうした考えがもとになって生まれたものであります。
ポルトガル語のことわざの中にはギリシャ・ローマ神話を起源とする非常に古いものから、数世紀まえにブラジル国内で人々の間に自然発生的に生まれた比較的新しいものまで、いろいろなことわざが混在しております。本書ではこうした無数の新旧ことわざの中から、現在ポルトガルとブラジルで日常使われている最も基本的なことわざと、常識として知っておきたい故事、警句、ことわざ風慣用旬など約800句(類句を含む)を収めました。これらの旬の中には、前述の辞典には紹介されていないものも幾多含まれております。
本書の大きな特徴のひとつは、ことわざをできる限り分かりやすく、しかも本書を読み物としても楽しんでいただくため[解説]の欄に司能な限りスペースをさいたことであります。即ちこの欄では見出しのことわざの本来の意味の説明や語句の解釈のほか、出典(ギリシャ・ローマ神話、聖書、イソップ物語など)・ことわざにまつわるエピソード、ことわざに出てくるいろいろな動物や生き物(ライオン、ろば、犬、山羊、烏、はげ鷹、ふくろう、蝿、チコチコ鳥など)が持つ意味合いとか、また必要に応じてことわざの形式上の特徴(比喩(脚)、擬人法、頭韻、脚韻、誇張表現など)の説明も行いました。さらに見出しのポルトガル語のことわざに相当する臼本のことわざも紹介してあります。本書がポルトガル語を学んでいる方々に、この言語のことわざが持つ表現の多様さや豊かさとその魅力の一端を伝えることができれば幸いであります。
本書を編むにあたってご協力くださいました多くの先輩や友人の皆様に心からのお礼を申し上げます。ブラジリアにお住まいのPaulo Melo氏とJoao Menezes氏の両名およびマプート市(モザンビーク)のTamimo Moises氏には、資料の収集でご協力を仰ぎました。また、上智大学名誉教授佐野泰彦先生にはげら刷りを全面にわたりご校閲くださったほか、数々の貴重なご教示をいただきました。同様に、上述の辞典のみならず本書を世に送る労を再度とってくださいました出版社《たまいらぼ》社長玉井礼一郎氏に心からの感謝の、意を表します。
1992年10月
渡部宏昭
目次
まえがき
凡例
主な参考文献
本文日本語ことわざ索引
|