通訳いらずの医療ガイド
高橋千晃
1992年4月30日発行 税込価格 \2,625
B6判 並製 330頁 ISBN4-88636-059-9 C0587
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はしがき
1968年の秋、私はメキシコ市で開かれた第12回国際小児科学会へ出席しました。そこで私は、この大会で語られた多くの演題は、出席の医師達に多大の感銘を与えた意義深いものであることを痛感しました。しかしその反面、これらの進歩した近代医学は、果して実際において、誰にでも通用するものだろうかと、ふと疑問に思わざるを得ませんでした。
たとえば一人の外国人が他国を訪れ、その地で急に発病したとします。彼はその国の医療の状態もよくわからなかったとしたら、彼は医師さえも呼ぶことができず、不安な日々を過すのではないでしょうか。もちろんこの問題は、わが国においても決して解決されているわけではありません。近時海外旅行者のための数多くのガィドブックが刊行されていますが、これら書籍の中で医療面における部分をみますと、残念ながら不充分な個所が多く、この目的のためにあまり多く役立つものとは思われません。
私はホテル医としての自分の経験と、私をとりまく温い外国の友人達のアドバイスにもとづき、日本より海外に旅行される方々にも、また日本を旅行されようとする海外の方々にも、安心して楽しい旅行ができるようにとの念願から、海外旅行のための良きハンドブックとして本書を準備いたしました。
本書に掲載した各疾患は、世界各国から日本に旅行され、病気となり、心ならずも医師の診療を必要とした多くの外人患者の発病状態をもとにして、医師と患者との対話形式をとり、同一事項を日本語、ローマ字、ポルトガル語、スペイン語による3ケ国語対訳として編集してあります。
もしあなたが海外旅行中に発病した場合、あなたの病気の該当部分を本書よりさがし出し、関係する文や単語を学び、読むことにより、さらにはその箇所を指し示すことによって、自分の意思を伝えることもできるでしょう。
また、本書を用いることにより、諸外国の人達は日本における医療問題、すなわち予防注射、その証明書および副作用、医療機関、医療費等について、あなたは容易に理解されて、よき助言をうるでありましよう。
海外旅行をなさるあなたにとって、本書が有効であり、海外旅行が健康で、より有意義であることを心から願っております。
1992年 東京にて
高橋千晃
目次
前述
A.一般的会話
1.受附と紹介
2.一般的診療
3.一般的治療
4.紹介状と証明書
5.医療費の支払
6.患者移送に就いて
7.入院と人間ドック
8.死亡と死亡診断書
9.国際免疫証明書
(イエローカード)
B.内科疾患
10.伝染性疾患(天然痘、赤痢<発疹チブス)
11.伝染性疾患(黄熱病、腸チブス、コレラ等)
12.癌と慢性炎症疾患
13.その他の感染性疾患
14.一般の感冒
15.呼吸器疾患(喉頭炎と流感)
16.呼吸器疾患(気管支炎、肺炎等)
17.循環障害と動脈硬化症
18.高血圧、低血圧、乗物酔い
19.泌尿器疾患と高山病
20.消化器疾患(胃と腸)
21.消化器疾患(肝臓、胆嚢、膵臓)
22.消化器疾患(その他の疾患)
23.内分泌疾患及びビタミン欠乏症と寄生虫疾患
24.代謝障害
25.血液疾患
26.脳神経疾患
27.神経症とてんかん
28.種々の中毒及びアレルギー疾患
C.他の科の疾患
29.小児科(伝染性疾患)
30.小児科(其の他の疾患)
31.歯科と口腔内疾患
32.眼科疾患
33.皮膚科と耳鼻咽喉科
34.産婦人科
35.性病
36.外科と災害
37.整形外科とマツサーヂ
D.新しい検査
索引
結語
むすび
みなさん!本書があなたの旅行中にお役にたちましたでしょうか?それとも、この本を使わないですんだのでしたら、それは本当に結構なことです。あなたはきっと健康で、たのしい旅を続けられたわけですから。もしも旅行の途中であなたが病気になられたときに、本書がお役にたったならば、私もあなたと同様にうれしい限りです。
もちろん本書は、決して完全なものではありません。ご使用になろうとしたとき、余分な箇所が多すぎて、必要な箇所が少なかったり、あるいは全然掲載されていなくてご不便をかけたかもしれませんが、おゆるし下さい。本書をより良く、より完全にするためにご気付の点をお聞かせ下されば幸甚です。
私は本書の原稿作成にあたり、医学の卑門用語をかなり用いたために、一般の人達が理解に苦しむようなことがあってはいけないし、また理解を急ぐのあまり俗語を用いて本来の意味を失ってしまっては結果的に誤解を招くことになるので大変なやまされました。特に同じような事がらを表現する場合に、国により異なること、ある場合には同じような病名が異なった大陸により違ってくることさえあるのに気付きました。
これらの諸問題は、本書を製作するにあたって協力してくれた外国の友人達のアドバイスにより多大の成果をあげることができましし私はこの機会にスペイン話部門においては医師アドルフ上原氏に、またポルトガル語部分においては全文を翻訳してくださったシデウ野本氏に心から感謝の意を表したいと思います。
著者
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