やきものウラ散歩道

常滑のレンガ煙突の保全方策について (2004. 2.20)
進む住宅開発と取り残される空家 (2003.10.11)

常滑のレンガ煙突の保全方策について (2004. 2.20)
 南海トラフ(駿河湾から紀伊半島、四国沖)沿いで発生するマグニチュード8級の巨大地震は、平均周期百数十年で発生しており、前回の1944年(昭和19年)から60年を経過した今、その発生が非常に危惧されている。
 この地震をめぐる最近の動向を見ると、まず、2002年4月、新しい学術的知見等をもとに、想定東海地震の「地震防災対策強化地域(大規模地震対策特別措置法)」の修正が行われ、常滑市もその中に含まれることとなった。その後、過去に駿河湾を震源とする東海地震だけが単独で発生したことが歴史上知られていないことから、早期に東海・東南海地震が連動して起こる可能性が指摘され、この地震の「防災対策推進地域(東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法)」にも、当然常滑市は含まれている。
 愛知県による想定東海・東南海地震の被害想定では、常滑市やきもの散歩道地区周辺の地震動は、震度6強ないし6弱と想定されている。
 前回の地震(昭和の地震)では、レンガ煙突の被害は意外と少なかったと聞いたが、昭和の地震は、前々回の安政の地震、その前の宝永の地震と比べ規模が小さかったこと、地震動の卓越周期が煙突の固有周期とズレていたのではないかと考えられること、の2点がその要因として考えられる。
 次にやってくる地震は前回より規模が大きくなる可能性があり、昭和の地震で無事だった煙突でも倒壊する可能性が高いと言わざるを得ない。
 このことから、やきもの散歩道に欠かせない産業遺産であるレンガ煙突を守るため、是非とも耐震補強が必要である。
 レンガ煙突の意匠をそのままに、耐震補強する方法は現在一般化されていない。常滑のレンガ煙突の構造をよく調査し、デザインを損なわず耐震性能を発揮する補強方法を速やかに開発し、現存する方策を検討することにより、散歩道地区の財産であるレンガ煙突の風景を守っていかなければならない。


進む住宅開発と取り残される空家 (2003.10.11)
 産業の歴史と文化を伝える「常滑やきもの散歩道」から、次第に黒壁の家屋や煙突が消え始め、昔の面影がなくなってきていることは、多方面から指摘されているところですが、タウンキーピングの会が注目し気にかけている家屋もいくつもあります。
 その一つが、旧富浦製陶所跡地。かつては散歩道内でもそれなりの大きさの製陶所だったのですが、一昨年頃廃業し、家屋が壊され、現在、宅地造成工事が進められています。場所は名鉄常滑駅から散歩道に入って一番の入り口に近い位置で、できれば昔の雰囲気を残す建物が建てられればと期待していましたが、現状を見る限り、住宅用地として宅地分譲される様子です。散歩道の周辺などで数多く立地するマンションなどの高層の建物でなかったのは幸いですが、できれば散歩道の雰囲気を伝える外観の住宅として、企画してもらえれば、商品価値も上がり、顧客も付きやすいのではと、期待しています。
 その程近いところに、昨年から注目している家屋があります。こちらは細い路地のさらに奥のため、接道義務規定等に抵触する恐れもあり、長い間空き家のままとなっています。しかし、江戸時代の建築といわれるその建物は、廊下を介さず南面する和室といい、農作業スペースのための深い軒の出といい、この地域の住宅の典型例として、学術的な意義も高いのではないかと思われます。これほどまでではないにしても、建築規制の影響もあって、建替えられないまま放置された空き家が散歩道内にはいくつも点在。中には崩壊し放置されているものもあり、これらをなんとか再生・活用できないかと思わずにはいられません。
 空き家といえば、常滑市が土管坂保存のため取得した民家が、土管坂上に。こちらは戦後に建てられたと思われる普通の民家ですが、この再生利用計画も気になるところです。その他、廻船問屋瀧田家の上にある空き地に国有地払下げの看板が。同じく、瀧田家の上にあった空家が、鉢物・小物のお店として再利用され賑わっている事例もあり、こうした事例がもっともっと増えてくることを期待しています。
 
                   旧富浦製陶所宅地造成地                    土管坂上の住宅(常滑市所有)
 
        散歩道内の空家                          瀧田家上の空地