山村暮鳥「聖三稜玻璃」



  
 妄語


ヽ ヽ ヽ ヽ 
びおろんの胴の空間
 
孕める牝牛の蹄
 
 
 
真実なるものには、すべて
 
ある一種の憂鬱がある
 
 
                ヽ ヽ ヽ ヽ
くちつけのあとのとれもろ
 
麦の芽の青
 
 
 
またその色は藍で
 
金石のてざはり
 
 
 
ぶさがつた女のあし
 
茶褐で雪の性
 
 
 もぐら
土龍の毛のさみしい銀鼠
     めまひ
黄の眩暈、ざんげの星
 
 
 
まふゆの空の飛行機
 
枯れ枝にとまつた眼つかち鴉。