山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 路上所見


 
大道なかをあばれてくる風
 
それに向つて張上げる子どもの声
 
周はその声をうばひさつたよ
 
けれど子どもはもうその凰の鋭い爪もなにもわすれて
              あ る
むかふの方を歩行いてゐる