山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 妹におくる


 
枯葉の下からぞつくりと青い芽をだしてゐるみづくさ
 
すんなりとのぴてゐる木木
 
ひらひらしてゐるのはその木木の嫩葉だ
                     ヽ ヽ ヽ
あたりにさへづる蟲やのじこ
 
落窪からちろちろと雪解の水がながれてゐる
 
その水のきよらかさ
 
その水のきよらかさは
 
いもうとよ
 
それはそなたの愛のやうだ
 
ひとにかくしたくちつけにとけてながれるそなたの愛だ