山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 自分はいまこそ言はう


 
なんであんなにいそぐのだらろ
 
どこまでゆかうとするのだらう
 
どこで此の道がつきるのだらう
 
此の生の一本みちがどこかでつきたら
 
人間はそこでどうなるだらう
 
おお此の道はどこまでも人間とともにつきないのではないか
たにま
谿間をながれる泉のやうに
 
自分はいまこそ言はう
 
人生はのろさにあれ
          ででむし
のろのろと蝸牛のやうであれ
 
そしてやすまず
 
一生に二どと通らぬみちなのだからつつしんで
 
自分は行かうと思ふと