山村暮鳥
『風は草木にささやいた』


人間の勝利
自 序
 I
穀物の種子
彼等は善い友達である
父上のおん手の詩
或る朝の詩
曲つた木
ランプ
夜の詩
遙にこの大都会を感ずる
何処へ行くのか
梢には小鳥の巣がある
 II
万物節
種子はさへづる
或る雨後のあしたの詩
十字街の詩
ポプラの詩
風の方向がかはつた
としよつた農夫は斯う言つた
よい日の詩
朝朝のスープ
或る時
 III
其処に何がある
憂鬱な大起重機の詩
耳をもつ者に聞かせる詩
人間に与へる詩
わすれられてゐるものについて
寝てゐる人間について
子どもは泣く
 IV
人間の午後
雨の詩
荷車の詩
歓楽の詩
海の詩
ザボンの詩
此処で人間は大きくなるのだ
郊外にて
波だてる麦畑の詩
刈りとられる麦麦の詩
都会にての詩
大戦
一本のゴールデン・バット
記憶について
収穫の時
くだもの
 V
キリストに与へる詩
或る淫売婦におくる詩
溺死者の妻におくる詩
大きな腕の詩
先駆者の詩
 VI
秋ぐち
此の世界のはじめもこんなであつたか
ひとりごと
新聞紙の詩
汽車の詩
都会の詩
都会の詩
握 手
故郷にかへつた時
太陽はいま蜀黍畑にはいつたところだ
 VII
自分はさみしく考へてゐる
愛の力
人間の神
秋のよろこびの詩
草の葉つぱの詩
或る風景
雪ふり蟲
冬近く
蟋 蟀
或る日の詩
或る日の詩
記憶の樹木
初冬の詩
路上所見
友におくる
悪い風
雪の詩
 VIII
世界の黎明をみる者におくる詩
自分は此の黎明を感じてゐる
偉大なもの
強者の詩
病める者へ贈物としての詩
或る日曜日の詩
朝の詩
大風の詩
農夫の詩
人間の詩
姙婦を頒する詩
妹におくる
十字架
鞴祭の詩
鴉祭の詩
貧者の詩
単純な朝餐
 IX
そこの梢のてつぺんで一はの鶸がなている
雨は一粒一粒ものがたる
麦 畑
人間苦
わたしたちの小さな畑のこと
一日のはじめに於て
自分達の仕事
消 息
感 謝
労働者の詩
老漁夫の詩
驟雨の詩
苦悩者
朝あけ
 X
生みのくるしみの頌栄
あかんぼ
風 景
疾風の詩
友におくる詩
自分はいまこそ言はう
歩 行
家 族
薄暮の祈り
後より来る君におくる