山村暮鳥
「雲」


 
 読 経


 
くさつぱらで
 
野良犬に
 
自分は法華経をよんできかせた
とんぼ
蜻蛉もぢつときいてゐた
 
だが犬めは
 
つまらないのか、感じたのか
 
尻尾もふつてはみせないで
 
そしてふらりと
 
どこへともなくいつてしまつた