伊東静雄「反響」
わがひとに與ふる哀歌


    即興


 
 ……眞實いふと 私は詩句など要らぬのです
 
 また書くこともないのです
               たゆた
 不思議に海は躊躇うて
 
     新月は空にゐます
 

 
 日々は靜かに流れ去り 靜かすぎます
 
 後悔も憧憬もいまは私におかまひなしに
        あか
 奇妙に明い野のへんに
 
     獨り歩きをしてゐるのです



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