伊東静雄「反響」
わがひとに與ふる哀歌


    行つて お前のその憂愁の深さのほどに

                       かけ
 大いなる鶴夜のみ空に翔り
           まどろ
 或はわが微睡む家の暗き屋根を
 
 月光のなかに踏みとどろかすなり
 
 わが去らしめしひとはさり……
 
 四月のまつ青き麥は
             かて   とりい
 はや後悔の糧に收穫れられぬ
 

                      へ
 魔王死に絶えし森の邊
          がふくわんくわ
 遙かなる合歡花を咲かす庭に
 
 群るる童子らはうち囃して
 
 わがひとのかなしき聲をまねぶ……
 
 (行つて お前のその憂愁の深さのほどに
               いろど
 明るくかしこを彩れ)と




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