伊東静雄「反響」
わが家はいよいよ小さし


    わが家はいよいよ小さし


  みみはら                             へ
 耳原の三つのみささぎつらぬる岡の邊の草
 
 ことごとく黄とくれなゐに燃ゆれば
      いへ           ち
 わが家はいよいよ小さし そを出でてわれの
 
 あゆむ時多し
 

 
 うつくしき日和つきむとし
 
 おほかたは稻穗刈られぬ
 
 もの音絶えし岡べは
 
 ただうごかぬ雲を仰ぐべかり
 

 
 岡をおりつつふと足とどむとある枯れし園生
 
 落葉まじりて幾株の小菊
 
 知らまほし
 
 そは秋におくれし花か さては冬越す菊か



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