北原白秋
 

「思ひ出」より

  
 あかんぼ




  きのふ
 昨日うまれたあかんぼを、
 
 その眼を、指を、ちんぽこを、
  まなつ まひる
 真夏真昼の醜さに
  にく        にら
 憎さも憎く睨む時。
 

  なに
 何かうしろに来る音に
 
 はつと恐れてわななきぬ。
 
 『そのあかんぼを食べたし。』と
      めねこ
 黒い女猫がそつと寄る。



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