北原白秋
 

「邪宗門」より

  
 にくしみ




      き    ふ
 青く黄の斑のうつくしき
             は チユウツケ
 やはらかき翅の 蝶 を、
          ルビー
 ピンか、紅玉か、ただひとつ、
 
 肩に星ある蝶を
 
 強ひてその手に渡せども、
 
 取らぬ君ゆゑ眼もうちぬ。
 
 夏の日なかのにくしみに、
                    くち
 泣かぬ君ぬゑその唇に
       き    こ
 青く、黄の粉の恐ろしき
           は
 にくらしき翅をすりつくる。



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