大手拓次
『藍色の蟇』

莟から莟へあるいてゆく人

  
  季節の色


 
 たふれようとしてたふれない
 
 ゆるやかに
 
 葉と葉とのあひだをながれるもの、
 
 もののみわけもつかないほど
 
 のどかにしなしなとして
 
 おもてをなでるもの、
 
 手のなかをすべりでる
 
 かよわいもの、
 
 いそいそとして水にたはむれる風の舌、
 
 みづいろであり、
 
 みどりであり、
 
 そらいろであり、
 
 さうして 絶えることのない遥かな銀の色である。
 
 わたしの身はうごく、
 
 うつりゆくいろあひのなかに。