大手拓次
『藍色の蟇』

黄色い接吻

  
  夕暮の会話


 
 おまへは とほくから わたしにはなしかける、
 
 この うすあかりに、
 
 この そよともしない風のながれの淵に。
 
 こひびとよ、
 
 おまへは ゆめのやうに わたしにはなしかける、
 
 しなだれた花のつぼみのやうに
 
 にほひのふかい ほのかなことばを、
 
 ながれぼしのやうに きらめくことばを。
 
 こひびとよ、
 
 おまへは いつも ゆれながら、
 
 ゆふぐれのうすあかりに
 
 わたしとともに ささめきかはす。