島崎藤村

「若菜集」より


  
  月光


 
しづかにてらせる
 
     月のひかりの
 
などか絶間なく
 
     ものおもはする
 
さやけきそのかげ
 
     こゑはなくとも
 
みるひとの胸に
 
     忍び入るなり

         と
なさけは説くとも
 
     なさけをしらぬ
 
うきよのほかにも
 
     朽ちゆくわがみ
 
あかさぬおもひと
 
     この月かげと
 
いづれか声なき
 
     いづれかなしき



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