八木重吉
「秋の瞳」

     かめ
   


 
 甕 を いくつしみたい
 
 この日 ああ
 
 甕よ、こころのしづけさにうかぶ その甕
 

 
 なんにもない
 
 おまへの うつろよ
 

 
 甕よ、わたしの むねは
 
 『甕よ!』と おまへを よびながら
 
 あやしくも ふるへる



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