八木重吉
「秋の瞳」

 
   哀しみの 秋


 
 わが 哀しみの 秋に似たるは
 
 みにくき まなこ病む 四十女の
 
 べつとりと いやにながい あご
 

 
 昨夜みた夢、このじぶんに
 
 『腹切れ』と
 
 刀つきつけし 西郷隆盛の顔
 

 
 猫の奴めが よるのまに
 
 わが 庭すみに へどしてゆきし
  しらうを
 白魚の なまぬるき 銀のひかり



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