八木重吉
「貧しき信徒」

 
   人形


 
 ねころんでゐたらば
 
 うまのりになつてゐた桃子が
 
 そつとせなかへ人形をのせていつてしまつた
 
 うたをうたひながらあつちへいつてしまつた
 
 そのささやかな人形のおもみがうれしくて
 
 はらばひになつたまま
 
 胸をふくらませてみたりつぼめたりしてゐた



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