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BGM : Le Galerien/ロシア民謡

「戦争せぬ」憲法に喜び主婦 北 道子さん 姫路市 71才
Rapture on constitution with no war



「日本の国は、もう二度と戦争をしないと決めました。これを戦争の放棄といいます」
 公布された新しい憲法についてそう話された時は、夢のようだった。終戦翌年の1946年。国民学校(現在の小学校)6年の終わりのごろだ。



 物心がついた時から戦争で、入学式の校長先生の言葉はまず「泣いてはいけません。強くなりなさい」だった。臆病で泣き虫の私は当惑し、身を硬くしてちぢこまった。
 強い者が大事にされる世の中だった。先生の言葉は絶対で、泣けば「そんなことで戦争に勝てるか」とののしられ、笑えば「非常時にふざけるな」としかられた。 5年の時、空襲で和歌山の街は焼かれ、多くの人が死んだ。それっきり消息を絶った級友もいる。
 いつ爆弾が落ちてくるか不安だったが、「怖い」と言えば「国賊」とか「非国民」とか非難される。物を言えない世間の空気が恐ろしかった。
 戦争に負けて、何もかもがひっくり返った。「自由」という言葉が平気で使われ、天皇陛下は神様でなくなった。よくわからなかったが息詰まる戦争中よりは良かった。爆撃で死ぬ心配がなくなり、泣くことも笑うこともできる。
 そして新しい憲法ができ、「戦争をしない」ときめたという。
 先生は「これからは自分の思っていることを言っていい。自由に考え、女の子も男の子と同じようにやりたいことをやりなさい」と話した。もうびくびくしないでものが言える。質問も自由だ。女でも、強くなくても、平等に扱ってもらえる。 そして、もう二度と戦争はしない。目の前が明るくなる話だった。
 あれから60年。戦争中、小さくなって生きた女の子に希望と喜びを与えてくれたこの憲法を大切にしたいと思う。
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