Mさんの幼少時代

 物心付いた頃、最初にハマッたものはテレビの特撮ヒーロー物でした。ウルトラマン・仮面ライダーは言うに及ばず、スペクトルマン、ライオン丸、電人ザボーガーといったややマイナーな作品も好みました。また、ヒーローそのものよりも怪獣・怪人が好きで友達同士でのヒーローごっこでは自ら進んで敵役を買って出ました。ケイブンシャの「全怪獣怪人百科」は当時の私のバイブルでした(笑)今思えば、この時期から「オタクとしての萌芽」があったのかも知れません。また運動はどちらかというと苦手でした。

Mさんの小学校時代

 小学校低学年の頃はガンプラ、ザリガニ採り等が好きでした(まあ、当時の男子の必修科目(笑)と思いますが)同時に「少年ジャンプ」も購読し始めました。その頃のジャンプは黄金期前夜とも言える時期で、好きな作品はキン肉マン、風魔の小次郎、ブラックエンジェルズ等でした。

 小3〜4のころには世間ではファミコンブームが到来し、自分も例外なくハマりました。当時はシューティングゲームが好きで、ギャラクシアン、ゼビウス、フォーメーションZ、スターフォース等を好みました。ちなみにこの頃から視力が低下し眼鏡を着用し始め、また、結構な小太り体型になってきました。

 小学校高学年になるとRPGブームが到来し、ここでも私は激しく傾倒します。ドラクエに始まり、パソコンRPG、TRPG、ゲームブックにも手を出しました。‥といってもパソコンは高価で小学生には買えるわけがないので攻略本の類を買って想像力を補っていました。憧れのソフトはザナドゥ、ハイドライド、ウィザードリィ等でした。ゲームブックは比較的安価なので色々読み漁りました。ドルアーガの塔3部作、ソーサリー4部作他多数。

 そしてD&Dにも手を出します。お小遣いを貯めて、おもちゃ屋さんの高い棚に置いてあったそれを手にした時はドキドキでした。

この時代までの総括

 こうして振り返ってみるとかなりアレな感じですが‥でも、仲の良い(さらに趣味も分かち合える)仲間も多く、特に引きずるようなトラウマとかは無いんですよ。幸いにも。いじめっ子はどの学年にも居ましたが、まあ今思えばかわいいもんですし。また、この頃出来た友達というのは「類は友を呼ぶ」と言うよりも「友が類となる」ような感じでしたね。決して「消極的に」オタク趣味を選択した事は(この時期には)無かったです。
Mさんの中学校時代

 さて、中学にもなると、以前よりも色々なカーストに晒される 事になるわけですが‥まず、クラスのとある女子グループに「頭がでかい」という理由で陰口をたたかれ続けました。1年間に渡って。結構堪えました。また、他クラスのいじめっ子的な奴に「足が短い」と言う理由でからかわれたりしました。両者とも直接的ないじめではないんですが、思春期入り口の男子の身としてはかなり厳しいものでした。話はやや逸れますが、この頃従兄弟から「ジュンスカイウォーカーズ」のテープを聴かせてもらい、すぐに好きになりました。ロックという物に初めて触れて、「カッコイイな。もっと知りたいな」と思うようになります。

 中学2年になると陰口を言っていた面子とは別クラスになり、代わりに、今現在も付き合いが続く友達と一同に会しました。みんなあっという間に友達になり、毎日バカな事を言い合ったりして笑って過ごしました。全員、オタクの素養はありましたが決してそれだけの繋がりでは無くて‥本当に色んなものを彼らと共有しました。

 また、この頃世はイカ天、バンドブーム。ボウイ、ブルーハーツ、尾崎豊などを聴くようになります。 ちなみにオタク趣味では、パソコンゲーム「イース」に激しく激しく傾倒します。イースのヒロインであるリリアにはかなり心を奪われました。もちろんミスリリア「杉本理恵」も大好きでしたとも!

 それらと平行してコンプティーク、ポプコム、MSXファン等のパソコン雑誌を通じてエロゲーの存在を知ります。また、秘密裏に「Dont!」などのエロ本も買ったりしました。思春期男子がこれらを使ってサルと化したのは言うまでもありません(笑)

中学時代の総括

 中1はともかく、中2〜3年は本当に良い時期でした。この頃の私は「思春期を楽しむ為のリソース」はほぼ無かったのに、友人に恵まれ、無邪気に遊んでいたのですから。もっとも高校に入ると同時に長い長い暗黒時代が始まるのですが‥

シロクマ注:

 1970年代後半生のオタクな人には、既視感のあるコンテンツ選択なのではないでしょうか。オタクでなくとも、ファミコンブームに至るまでの道筋には同世代に共有された感覚が少なからずあるのではないかと思います。ハドソンのキャラバン、ジャンプ全盛期、ジュンスカイウォーカーズ。なんだか私、泣いてしまいそうです。

 それにしても、幼少期から悪役怪獣に傾倒する辺り、Mさんの片鱗を感じさせます。そしてパソコン世界――1960年代〜1970年代前半生まれには開かれていても、下の世代には手の届かない夢の世界――への恋慕やD&Dへの憧れなどは、1970年代後半生のオタクがしばしば共有した体験なのではないでしょうか。ザナドゥやイースのある家に集まって必死に摂取するという営み。リリア、かわいかったですよね。エロ本ルートだけに行かずにコンプティークやテクノポリスでフラグが立つとすれば、まさにオタの卵、です。

 これらの(今で言う)オタクコンテンツの先祖のような娯楽を享受することは、当時の小学生や中学生レベルでは必ずしもオタクという烙印には直結していなかった、と思います(学校にZZガンダムのCDとか持ってくるぐらいになると少々怪しいにしても)。しかし、そのコンテンツを通した付き合いだけに特化し、様々なものを疎かにしてれば、思春期の適応に影を落とすことは避けられません。次のページで語られるMさんの艱難辛苦は、もしかしたら小〜中学生時代の有り様如何によっては回避できたものなのかもしれません。とはいえ、そんな事は学校でも家庭でも教えてはくれないわけで、回避できなかったMさんに責があるとは私には到底思えません

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 ※本報告は、Mさんのご厚意により、掲載させて頂きました。今後、Mさんの御意向によっては、予告なく変更・削除される場合があります。ご了承下さい。