open my heart外伝2:この佳き日に





 頭上から美しい鐘の音が聞こえてくる。
 式もクライマックスだ。

 目の前に続く赤いじゅうたんの階段も、
 煌めくシャンデリアも‥‥‥なんだか、夢みたいだな。


 俺たちは洗礼を受けるために、十字架の前の壇に向かって
 ゆっくりと歩き続けた。

 今日は‥‥俺達の、俺達のための結婚式。
 俺とマヤとの、あの伊吹マヤとの結婚式なんだよな。

 俺がネルフに入ったこと‥マヤがネルフに入ったこと‥‥
 互いの部署が近かったこと‥‥補完計画の失敗したこと‥‥
 それら幾つもの小さな偶然と因果関係。
 そして何より、互いを認めあい、愛しあい、許しあうという、一つの大きな必然。

 どちらがなくても、こうはならなかったんだから、考えてみたら不思議なもんだ。

 同棲してからかれこれ4年。
 長くて短い、甘いも辛いも色々あった道のりだったが、後悔なんてどこにもない。
 だからこそ今日‥‥遂に俺たちは永遠を誓い合うんだ。


 ゆっくりと階段を登りながらちょっと左側を向いてみると、
 眩しい彼女が視界に入る。
 純白のウエディングドレスに身をまとい、普段は決して使わないような
 少し紅の強い口紅をつけた、“世界で一番の美女”。

 生来の清純さは当たり前として、なんか気高さすらを感じてしまうが‥
 これってやっぱ、俺が好きでヒイキしてるからかもしれない。
 やっぱ、女性ってこの時は一生で一番美しい瞬間なのかもな。
 綺麗だよ。
 マジで綺麗だよ、今日のマヤは。

 それに引き換え、タキシード姿の俺って‥‥きっと似合わないんだろうな‥とほほ。


 彼女はそんな俺の気持ちに気づいたのか、少しだけこちらに顔を向けて
 白いケープごしに微笑みを浮かべ‥‥小さな声で囁く。

“ステキよ、あなたも”と。

 照れた顔を遮りたくて、俺は、天井のほうを眺めやった。
 高くて広い教会のドームには、ステンドグラスの天使や聖母、聖人達が、
 正午の日差しを受けて色とりどりに輝いている。

 おやじ、お袋、ちゃんとそこから見てるんだろ?

 俺、こんなにいい嫁さん貰うんだぞ。



 階段の最上段にたどり着き、再び正面に顔を向ける。
 立派な法衣を身にまとった白髭の神父が立っている。
 俺達の方を見て軽く頷くと、彼は聖書の一節を詠唱した。


 『‥‥汝ら、産めよ増えよ、
    空の鳥を、海の魚を‥‥‥』


 神聖な言葉をバックに緊張の十数秒が流れ‥‥

 そして、お決まりの、だが、最も重要な一瞬が俺たちのもとに訪れた。


 神の代理人は、問う。

「青葉シゲル、汝、この女を妻とし、生涯をかけて愛し、
 いかなる事からも守り抜く事を誓いますか」

「誓います」



「伊吹マヤ、汝、この男を夫とし、一生愛し続け、
 誠心誠意仕える事を誓いますか」

「はい、誓います」

 緊張していたのか、少し時間があったものの、
 マヤは俺が待っていた言葉を答えてくれた。

 続いて神父は誓いの口づけを促す。


 人前では多分初めての口づけだ。
 少し、照れるな‥‥。


・・・・・・・


 続くみんなの歓声と、響くコラールの演奏。


 荘厳なパイプオルガンの演奏をBGMに、俺たちは
 教会の出口に向かってゆっくりと歩き始めた。

 出口に続く赤い絨毯の道は、既に沢山の人達で
 細く、そう、とても細くなっていた。

 みんな、俺達の門出を祝福してくれるために来てくれた人達だ。

 俺やマヤの高校時代・大学時代の友人、あの戦いを生き抜いたネルフ職員の
 仲間達。
 もちろん日向の奴も来てくれた。
 それからシンジ君にアスカ、その友人達‥‥‥。
 みんな、とびきりの笑顔だ。笑顔で俺たちを祝してくれる。
 沢山の人達の祝福が、すべて俺達の為に捧げられたものだと思うと、
 いてもたってもいられなくなる。
 感謝だよな、本当に。
 他には何も思いつかない。
 ありがとう、みんな。
 ありがとう。


 マヤの両親も俺の両親同様、セカンドインパクトで死んでしまって
 ここにはいない。でも、この瞬間も、この教会のどこかから見ていて、
 一緒に祝ってくれていると、俺は信じている。

 ご両親、これからも見ていて下さい。
 俺は彼女を、あなた達のマヤを、もっと幸せにしてみせます。
 決して不幸にはしませんから。


 ライスシャワーを投げかける人々の間を通り抜け、外へ。


 「行こうか、マヤ」
 「うん。」

 手袋をつけた彼女の手を取って、俺は教会の前の階段をゆっくりと降りる。
 そして、教会の表に停車した、派手な装飾を施されたガソリン車の助手席に
 マヤを乗せると、自分は運転席に座った。


 みんなの歓声が聞こえる中、車のキーを回した。
 車のエンジン音も祝福に聞こえるんだから、やっぱり俺はどうかしてる
 のかもしれないなぁ、今日は。

 まあ、いいんだけどな。
 せめて今日くらいは感傷にひたったって、罰はあたらないよな‥‥。





 [2nd part]

 教会で見た二人の姿は、とっても綺麗だった。
 幸せなカップルの行く末って、やっぱああじゃなくっちゃね。

 青葉さんは格好良かったし、マヤさんも別人みたいだったし‥‥。

 「ねえ、シンジ、もう帰らなきゃ。」

 「うん、そうだね。式も全部終わっちゃったし。」

 「ねえ、シンジ?」

 「何?」

 「私にも、あんな綺麗なウエディングドレス、似合うかな?」

 「うん、きっと似合うよ‥‥」


 「ありがと。」

 その言葉が、とても嬉しかった。
 シンジに『嬉しいっ!』って言ったら、バカにされるかもね。


 「じゃ、いこっか?」

 「うん。」


 こうして私はシンジと一緒に帰途についた。

 帰りの電車の中、疲れて眠るシンジに膝枕をしてあげながら、
 私は嬉しい気分を満喫していた。


“気持ち良さそうに寝ちゃってさ”



 もちろん、この時の私は知らない。
 これから訪れる事について、何も。

 自分の心の中で、眠っているものが目覚め始めている事も。


→Episode24に続く




 本来、外伝シリーズはニフティでも半ば遊びで作ったものなので、
 修復工事を施したにも関わらず、ご覧の出来です‥‥(--;

 出来が悪くてすんませんが、いじってもいじっても変化がない‥。(涙)

 彼らの結婚式はともかく、アスカはこんな感じです。
 さて、と‥‥。
 これは繋ぎ。問題は、これからなんですよ‥‥。

 2004年注:イタタタタタ...作った奴呼んでこい!貴様のぬるさとあんぽんたんさと
 無知とだらしなさを小一時間(ry




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