では、早速11話続けます。えっ?ありがち?すいません。
 ありがちなんです。
 いいんですよ。それでも。
 そんな事言ったら、このSS最初から最後までありがちになっちゃうんで。




Episode-11【恐怖】


 僕の目の前で、アスカは男達にホウキでぶたれて、足蹴にされていた。
 さらに、殆ど無抵抗のアスカに対して、心をえぐるような罵声が飛ぶ。

 真っ白だったアスカの制服が、靴の裏の色で汚されていく。



 アスカは他人のふりを続けろって言っていたけど。
でも僕は‥‥僕は‥!


 『この女!』
 『なんだよ、その目は!!』

 アスカは‥。
僕は‥。

 『いつまでナマやってんのよ!!可愛くないわね!!』
 『まだたてつく気か!!!』



 僕は、僕は‥‥僕は‥‥!!

 アスカ、好きなんだろ、僕。
 好きなんだろ?‥‥うん、そう。アスカが‥‥好き。
 アスカじゃなくっちゃダメなんだ。やっぱり片思いだろうけど‥。

 それに、それ以前に友達だろ?
 命を賭けて一緒に戦い抜いた、大事な友達だろ?

 そう、だったら踏ん張らないと、僕は昔と同じの、最低の男だ。

 ここで、逃げちゃ‥‥僕はだめだ。

 もう一度、僕は、アスカを守りたい。守らなければならない。



 「やめろ!!!!」

 『!?』

 「やめるんだ!!!」

 『なんだ?転校生!?』
 『お前。文句あるのか?』

 叫んでしまった僕に、刺さるような視線が集まる。
 僕は、僅かに狼狽える。
 それとは別に、アスカがじっととこちらを見ている。
 僕は、頑張らなきゃならないと思った。


 でも怖い。
 怖いよ、アスカ。

 だめだ。 逃げちゃダメだ。今逃げたら、なんにもならない!


 「ア、アスカを離してやれよ」


 『アスカ?アスカだと?転校生、お前、惣流の何なんだよ?』
 『ひょっとして、碇、こいつの知り合いか?』
 『声が震えてるぜ、碇の旦那。正義の味方は、もっとシャキっとな。』


 アスカを殴っていた5人の男と2人の女が僕の目の前にいる。

 笑ってる奴もいた。

 やっぱりバカにされているな、僕。


 「で、でも、ダメだよ!!ただの弱い者いじめじゃないか!!
  アスカだって、ああしなきゃ殺されてたって、お前達にだってわかるだろ!!」


 『そんなの知るかよ!!』

 『‥‥てめえ!!』


 やめろ!    あぐっ。



 一瞬、目の前が真っ暗になって、その後に頭の中に火花が飛び散った。

 殴られて、吹っ飛んで。



 畜生!こいつ!!!

 起きざまに、殴りかかってきた正面の大男を力を込めて殴り返す。
 よろめく大男。


 僕のまわりの人間は、わずかな例外を除いて凄い剣幕で
 僕をにらみつけている。

 アスカは‥アスカを見ている暇はなかった。

 殴ってやった男が、怒りの色もあらわに、近づいてきたからだ。

「貴様‥‥!!!」




   *          *           *




 その時の僕は、アスカの目の前で一方的に殴られるだけの、
 とてもブザマな存在だった。


 抵抗してみたつもりだけど、それらは全て無駄だった。

 ケンカの技量も、体力も、ダンチだったんだ。


“俺の股の間をくぐったら、今日の所は許してやろう”


 そんな言葉を吐くような余裕をもって、奴は僕をいたぶった。

 僕を殴って、蹴って、そのたびに一言一言アスカと僕をなじる。


 僕はそれでも立ち向かった。
 無駄とは判っていても、倒れるわけにはいかなかった。

 僕が諦めても、誰も僕自身を、そしてアスカを助けてはくれないから。



 そのうち、しぶとく立ち上がる僕を、クラスの他の人間までが殴り始めた。

 リンチ。
 リンチとしか言えない状態。

 殴られ、蹴られ、罵倒され。



 その時、脳裏にあの時の弐号機が浮かんだ。

 アスカ‥‥
 辛かったんだろうな。

 それに比べたら、こんなの、我慢しなきゃ。我慢できないけど、我慢しなきゃ。
 立ち上がって、殴りかえさなきゃ。


「‥‥こいつ!!」

 手近にいた男を殴り返そうと、丸めていた体を起こした。

 でも、それも無駄な行為だった。

“馬鹿な奴だ”という誰かの声を聞いた直後、僕は強烈なアッパーをくらって
 吹っ飛んだんだ。

 そして、再び襲ってくる蹴りの嵐。


 ああ、好きな女の子を助けようとしてボコボコにされて‥。

 格好悪いね、僕。

 本当に、惨めだね。

 うぐっ。

 だめだ。もう。


 ゴメン、アスカ‥‥僕、何にもしてあげられなかった‥

                           to be continued


では、急いで12話へ!!







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