Episode-37【母親】
[AD2025. 8/25 AM10:54]
「ち、ちょっと失礼します。」
そう言って学生たちの前から退出し、走って化粧室に飛び込んだ。
我慢できなくなり、朝御飯を吐き出す。
一段落着いてから、口の中を洗った。
鏡を見ながら、ソレについて考える。
“‥‥‥‥もしかして”
でも、そろそろかもしれない。
家に帰ったら、調べよう。
昔は絶対いらないって思ってたけど‥‥今は違う。
[8/25 PM5:40]
「ただいま〜、シンジ」
「おかえりなさい、アスカ。
御飯にする?それともお風呂?」
「あんたねぇ‥‥それ、いつまで続けるつもり?
まあ、いつだったかみたいに『それとも、僕?』なんて言ったら
今度こそ死刑よ!!」
「は、ははは‥‥」
「ちょっと待っててね。お風呂の前に、調べたいことがあるの」
「うん。」
‥‥30分後。
「あの、いったい何だったの?」
「‥‥できちゃったみたいなの‥」
「え?」
「赤ちゃん‥‥。」
[12/31 PM11:59]
「今年ももうおしまいか‥‥」
「おしまいね‥‥」
「ねえアスカ、こたつに入りっぱなしで、赤ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫よ‥‥たぶん。だってさ、寒いものは寒いもん。」
「お腹、おっきくなったね‥‥」
「うん」
『サン!ニィ!イチ! ゼロォ!!!あけましておめでとう〜!!!』
「新しい年か‥‥」
「今年もいい年だといいね。」
「お腹の中の子、早く見たいなぁ。」
[AD2026. 3/5 AM7:31]
「アスカ、頑張って。頑張るんだ」
「うう‥‥痛い、痛いよぉ〜」
「先生、麻酔は‥‥」
『安全な硬膜外麻酔は、ここまでです。
あとは、頑張ってもらいましょう。』
「アスカ、アスカ!」
「手、離さないで、お願い!」
「ほら、ここにいるよ、僕はここにいるから」
「うう‥‥‥苦しい‥‥もう、イヤァアアア〜〜!」
* * *
「アスカ、がんばったね」
「‥‥死ぬかと思ったわ。もう、子供なんて絶対産みたくない。」
「かわいい女の子だね。これが、アスカの子なんだよね」
「でも半分はシンジの子なのよ。私達の子なのよ。
これからはシンジは、パパなのよ」
「ありがとう。」
「名前、どうしようか‥‥」
「これから決めようよ。いい名前、ないかな‥‥」
「シンジって、姓名判断とかにのめり込みそう。
そういうのも大事かもしれないけど、心のこもった名前、つけてあげてね‥‥」
「うん‥‥」
[3/9 PM7:06]
「決めてくれた?」
「うん。」
「やっぱり、カズミって名前でいこうよ?」
「うん、それでいいと思う。」
「良かった、気に入って貰えて。」
「ねえ、シンジ、私のお願い、聞いてくれる?」
「何?」
「別にすぐじゃなくていいから、その‥‥」
「その?」
「もう一人、欲しい」
「アスカ、いいの?絶対もう産みたくないとかって‥‥」
「確かに、もう産みたくないわ、でもね。
この子がかわいくてかわいくて。
この娘にもし兄弟がいたらって思ってさ。
私、兄弟って、すごく羨ましいって思ってたから、昔。」
「僕はすぐにでもいいよ、そうだよ、すぐ‥‥‥」
「もぉ〜、シンジったら!」
「と、とにかくさ、兄弟はいた方がきっといいよ、うん。
小さい頃一人だった事を思い出すとさ、僕もやっぱりいたほうが
絶対いいような気がしてね。」
「まぁたそうやってごまかすぅ!」
「‥‥‥‥」
「そんなにムスっとしないで、ね、うん。」
「だってさ‥‥」
「うん。わかってるつもりよ。それよりも今は太らないようにしなきゃ。
子供産んで太る人って、けっこう多いみたいだから。」
「そうなんだ‥‥そっちのほうもがんばってね。やっぱりさ、その‥
スタイル抜群のアスカのままでいて貰ったほうが嬉しいし」
「スタイル悪かったらダメって事?」
「え、いや、そんなんじゃなくってさ、ね、うん。」
「あ〜あ、綺麗な私じゃないとシンジはダメなのかな〜。」
「ご、ごめんよ、その‥‥」
「アハハハハ、からかうとすぐ謝るんだから〜〜!!」
「ひどいや、アスカったら。」
「それはともかくとして、じゃ、市役所の方にお願いね。
惣流 カズミ って名前で。」
「うん。じゃ、いってくるね」
「いってらっしゃい、あなた。」