“シンジ、向こうで元気してる？”
　“私は、今日も元気です。”

　“今ね、ヒカリが来てくれてるのよ。勿論、コウちゃんも一緒に。”

　“ウチの子供達と三人で、仲良く遊んでいるみたいよ。”

　“あれからもう４年‥‥私もそろそろオバさんよね。
　　でも、その分、カズミとマサキも大きくなったんだから、仕方ないわよね。”

　“シンジがもし生きていたら‥‥ちょっとしわの増えた私でも
　　キスしてくれる？って、きっとしてくれるわよね、そう信じてる、私。”

　“あと何年先か解らないけど。天国で待っててね、ずっと。
　　あの時のシンジのままの姿で。”



Last Episode:【I need you, forever.】


「アスカ、今日も長いわね。」

「うん。ゆっくりおはなししないとね、やっぱり。」


「前から思ってたんだけど、仏壇ってことは、アスカも仏教徒なの？」

「私は、なんだって良かったのよ。ただ、あの人に会えるならね。」

「そっか‥‥でも、とにかくそうやっていつもおはなしできるのね」

「せめて心の中では生きてて欲しいのよ、ずっと。
　ところでさ、ヒカリのほう、旦那の単身赴任はどうなったの？」

「それなんだけど、結局豊田市の本社工場に決まっちゃって。
　来月からは別々よ。」


「でもさ、大学時代遠距離恋愛だったんだから、案外平気かもね」

「私達はいいのよ、でも、コウタの事が心配でね。
　お父さんがいないって、かわいそうで‥‥
　って‥‥あ‥ごめん‥‥」

「いいのよヒカリ、もう気にしなくて。
　今の私にはあの子達がいるし、それに、
　ヒカリとかマヤさんとかナオミとか、みんなこうして来てくれるし。」

「あの人はもう帰ってこないけど、私、それでも幸せよ。
　ま、今でも時々泣いちゃう時もあるけどね、一人ぼっちで辛い時とか。」

「‥‥アスカって、強くなったわね。」

「私は、昔のまま、昔のままよ。」

「そうかしら？」

「そうよ。周りが変わっただけ。
　あの人がいなくなって、でも子供達は残って、
　そんな私をみんなが支えてくれて‥‥
　ただ、それだけよ。みんな、他の人のお陰なのよ。」

「そうかなぁ。」

「うん。本当の私は昔と変わらない泣き虫だもんね。
　　ホーント、みんなに感謝しなきゃ。
　　あ、もう御飯炊きあがったみたいね。子供達、呼んでこなきゃ」

「アスカ‥‥やっぱり強くなったわよ。」

「あの子達、また二階でゲームやってるんでしょ！もお〜しかたないわね〜〜」


「カズミ〜、マサキ〜、コウちゃん〜〜！！！御飯よ〜〜〜！！！」

「「「はぁ〜〜〜〜い」」」



夕日の差し込む台所で、私は今、５つのお茶碗に御飯をついでいます。

エプロン姿の私とヒカリ。二人とも、随分歳をとりました。

今日までに、辛いこともいっぱいありました。

でも、今は私、本当の幸せがどこにあるのか、わかるような気がするんです。


「ママ〜、おなかすいた〜〜」
「きょうね、まさきね、すんごくじょうずだったの！」
「おばさーん、ぼくのはおおもりね」


みんなが私を幸せにしてくれるんです。
私の周りの人達のお陰なんです。

ヒカリがいて、ナオミやマヤさんもいます。
三人のダンナ達や、そのほかの人達も。

あと、かわいい子供達。

そして心の中では、いつもあなたが微笑んでいますから。


「はいはい、わかったわよ」

「ぼくのも〜〜〜」「わたしもおおもり〜〜」

「ちゃんと全部食べるのよ、３人とも」

「は〜〜い」



どんなに辛いことがあっても、きっと今の私は大丈夫です。


安心して天国からみていてください。

私は、あなたの残してくれたこの子達と一緒に、
みんなと一緒に、ずっと幸せに生き続けるでしょう。


「じゃあ、御飯、食べましょ、はい、みんなで。」


「「「「「いた〜だきます！」」」」」



思い出を、夢を、本当の幸せをありがとう、シンジ。



ありがとう、みんな。


私をこの世に産んでくれたママにも、シンジを助けてくれたファーストにも。


もちろん、今日までがんばってきた私自身にも。



名前を呼んでも、あなたはもう帰ってこない‥‥

それでも‥‥‥




それでも今日も私は、とても幸せでした。

fin