(1)減数分裂の観察

 動物の減数分裂は、雄では精巣の中で見られ、植物の減数分裂は、胞子形成時に見られる。共に観察の タイミングが大切で、時期を適切に選ばないと、減数分裂の観察は、なかなか上手くはいかない。

 ヒトの染色体の研究で有名な方は、北海道大学の牧野佐二郎先生であるが、ヒトの染色体研究の難しさは、 尊厳を持つ人間が対象だからである。かつて、功名心のために中国大陸の捕虜の睾丸を使って、ヒトの染色 体数を調べた生物学者がいたそうであるが、このことについて、佐藤重平著「遺伝」(裳華房)の中に『・ ・博士は、どの道、国法によってお仕置きされる若い匪賊から、きわめて新鮮な精巣を得て、これを研究し たのである。』との記述がある。戦後この生物学者はどのような生き方をしたのだろうか。731部隊の生 き残りが戦後何の咎めも受けずに、白日の下、正々堂々と暮らしていたとも聞くが、なんとなく空恐ろしい 気分になる。捕虜を生体実験に供したり、細菌兵器を作ったりした生物学者や医師はどのような倫理観・道 徳観を持っていたのだろうか?学問的好奇心と、その上に乗った優越感のなせる技だったのだろうか?

 日本のような縦社会では、学問の世界ですら、絶対的な権威者が生じたり、侵すことの出来ない聖域であ る象牙の塔が出来てしまったりする。立派な学問的業績を上げた高名な学者も、さっぱりうだつの上がらぬ 研究者も、まだ若い学徒も、一堂に会せば、皆平等でなければなるまい。学問というものは、対等な人間関係 の中で、お互いに切磋琢磨することで進歩・発展していくものであろう。

 減数分裂というのは、成熟した身体を持ってから、すなわち大人になってから、起こるものである。思春 期を過ぎて、青年期に入った高校生男女の身体では、精一杯活発に減数分裂が行われている。授業で「もう、 君達の身体では、減数分裂が起こっているんだよ。」と話すと、生徒はなんとなく神妙になる。大人として の実感を味わっているのかも知れない。

 ムラサキツユクサのつぼみの中の若い葯、フタホシコオロギの精巣などで、減数分裂が観察できる。ネギ 坊主なども減数分裂を観察する材料として良いようである。詳細な減数分裂の動画、すなわちムービーの見 られるwebsiteをご存じの方はお教え頂きたい。

【リンク】
マウスの減数分裂
日本人類遺伝学会


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