令和10年5月までに全ての事業所に義務化されるストレスチェック制度について
近年、従業員のメンタルヘルス対策は、企業にとって喫緊の課題となっています。労働者のストレスは、心身の健康だけでなく、生産性や企業の活力にも影響を及ぼす可能性があります。このような背景から、労働安全衛生法の一部改正により、令和10年5月までの期間に、全ての企業において、ストレスチェック制度の実施が義務化されます。
この制度は、従業員自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防止するとともに、職場環境の改善につなげることを目的としています。
制度の概要
- 目的:従業員のメンタルヘルス不調の未然防止、早期発見・早期対応、および職場環境の改善。
- 対象者:常時使用する全ての従業員(パートタイム労働者等で一定の要件を満たさない者を除く)。
- 実施者:医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師。
- 実施頻度:1年に1回。
実施の流れ
- ストレスチェックの実施:質問票を用いて、従業員のストレス状況(ストレスの原因、ストレスによる心身の状況、周囲のサポート状況)を把握します。
- 結果の通知と医師による面接指導:
- ストレスチェックの結果は、直接本人に通知されます。
- 高ストレスと判定された従業員で、希望する者には医師による面接指導が実施されます。
- 面接指導の結果に基づき、医師が必要と判断した場合は、就業上の措置(労働時間の短縮、配置転換など)が検討されます。
- 集団分析の実施と職場環境改善:
- 個人の結果を特定できない形で、部署やグループごとのストレス状況を分析(集団分析)します。
- 集団分析の結果を基に、職場環境の課題を特定し、改善策を検討・実施します。
企業の義務と役割
企業は、ストレスチェック制度を適切に実施するために、以下の義務と役割を果たす必要があります。
- 実施義務:従業員50人以上の事業場は、ストレスチェックを年1回実施する義務があります。そして令和10年5月までの期間内に実施義務が全ての事業所に拡大される予定です。
- 従業員への周知:制度の目的、内容、実施方法、結果の取扱いなどについて、従業員に十分に周知する必要があります。
- 結果の保護:個人のストレスチェックの結果は、本人の同意なく企業に提供されることはありません。また、企業は結果の秘密保持を徹底する義務があります。
- 不利益取扱いの禁止:ストレスチェックの受検や面接指導の申し出を理由に、従業員に対して不利益な取扱いをすることは禁止されています。
従業員のメリット
従業員にとって、ストレスチェック制度には以下のようなメリットがあります。
- 自身のストレス状況の把握:自身のストレスレベルや傾向に気づき、セルフケアに役立てることができます。
- 早期の相談・対応:高ストレス状態が判明した場合、医師による面接指導を受けることで、早期に専門的なアドバイスやサポートを得ることができます。
- 職場環境改善への貢献:集団分析の結果を通じて、職場のストレス要因が明らかになり、職場環境の改善に貢献することができます。
ストレスチェック制度は、従業員が心身ともに健康で、安心して働き続けられる職場環境を構築するための重要なツールです。企業と従業員が一体となってこの制度を有効活用し、より良い職場づくりを目指すことが期待されます。
トップページに戻る