大手拓次

白鳳社「大手拓次詩集」(1995年4月20日発行新装第6版)
彌生書房「大手拓次詩集」(1965年10月25日発行初版)
『藍色の蟇』より
陶器の鴉
 藍色の蟇
 陶器の鴉
 しなびた船
 象よ歩め
 撒水車の小僧たち
 美の遊行者
 
球形の鬼
 木立の相
 香炉の秋
 球形の鬼
 くちなし色の車
 みどり色の蛇
 名も知らない女へ
湿気の小馬
 黄色い馬
 法性のみち
 妬心の花嫁
 日輪草
 足をみがく男
 夜会
 むらがる手
 母韻の秋
 湿気の小馬
黄色い帽子の蛇
 蛙の夜
 あをざめた僧形の薔薇の花
 水草の手
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 手の色の相
香料の顔寄せ
 月下香の香料
 ベルガモツトの香料
 ナルシサスの香料
 香料のをどり
 すみれの葉の香料
 仏蘭西薔薇の香料
 香料の墓場
 Wistaria の香料
 香料の顔寄せ
白い狼
 舞ひあがる犬
 林檎料理
 まるい鳥
 白い狼
 盲目の鴉
木製の人魚
 わらひのひらめき
 夏の夜の薔薇
 木製の人魚
 十四のをとめ
みどりの薔薇
 まぼろしの薔薇
 手をのばす薔薇
 薔薇の誘惑
 ひびきのなかに住む薔薇よ
 なやめる薔薇
 さびしい恋
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風のなかに巣をくふ小鳥
 風のなかに巣をくふ小鳥
 
 西蔵のちひさな鐘
 あなたのこゑ
莟から莟へあるいてゆく人
 季節の色
 四月の日
 月をあさる花  夢をうむ五月
 莟から莟へあるいてゆく人
 六月の雨
黄色い接吻
 夜の時
 黄色い接吻
 死は羽団扇のやうに
 
 夕暮の会話
 あをい馬
みづのほとりの姿
 白い階段
 とぢた眼に
 みづいろの風よ
 雪色の薔薇
 みづのほとりの姿
 そよぐ幻影
薔薇の散策
 薔薇の散策

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ひとりごと
 大手拓次の詩を読むようになったのは比較的最近のことです。1997年に、たまたま本屋で見つけた白鳳社版の詩集を読んで以来のことです。
 生前に2378篇の詩を書き、萩原朔太郎や室尾犀星と供に白秋門下の三羽烏として並び称されたという事ですが、そのわりには作品が知られていないように思われるのは、生前に詩集が出されなかったことと関係があるのかもしれません。
 もともと象徴詩は感覚と知性を重視して、直接にはつかみ取りがたい精神世界を音楽的に、または暗示的に表現するというものですから、馴染みにくいのかもしれません。
 けれど、大手拓次の詩は暗示的と言うよりは幻想的で神秘的な雰囲気を色濃く感じさせます。そして、その場面が明確な映像となって浮かび上がるほどに、絵画的でもあるように思います。読むほどに、もっと、広く読まれて良い詩人なのではないのか、という気がしてなりません。
 彼の死後に出版された処女詩集の『藍色の蟇』から、特に好きな詩を載せてみました。だいたい、詩集の二分の一弱という所でしょうか。萩原朔太郎も室尾犀星もよいですが、私は大手拓次もとても好きです。


大手拓次(おおてたくじ)について
  • ボードレーヌ、ベルレーヌなどのフランス象徴詩の影響を受けた詩人。[1887年〜1934年]
  • 群馬県生れ。早稲田大学卒業後、1912年(25歳)ころから北原白秋の詩誌《朱欒(ザンボア)》などを中心に数多くの口語自由詩を書く。文壇との関わりは薄く、会社勤めをしながら精力的に詩作を行ったが、生涯独身のまま結核で没した。享年46歳。
  • 生前に詩集の出版はなく、処女詩集《藍色の蟇》は死後2年後の1936年に北原白秋や萩原朔太郎らの手により出版される。他に詩画集《蛇の花嫁》(1940)、訳詩集《異国の香り》(1941)などがある。



詩集『藍色の蟇(あいいろのひき)』について
  • 1936(昭和11)12月に、アルスより出版されたの処女詩集。作者の死後、北原白秋らの手によって編まれた。序文は北原白秋、跋文は萩原朔太郎年が寄せている。なお、載せられた詩は必ずしも年代順の配置とはなっていない。
  • 大手拓次の全貌については、1970年から71年に白鳳社から出版された「大手拓次全集」(5巻、別巻1)詳しいが、年代による作品の変遷などを手軽に知りたい向きには、岩波文庫版の「大手拓次詩集 原子朗編」が、初期詩篇や散文詩、訳詩など、拓次の残した作品の中でも、重要と思われるものを網羅しており、絶好の参考書と思われる。

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