梁塵秘抄 巻第二 雑歌

 
 かみ                   お                   かみ  ものはぢ
 神ならばゆららさららと降りたまへ いかなる神か物恥はする
 
(559)
 

大意……

神様ならば、ゆったり、すんなりと降りてきて下さい。
いったいどんな神様が恥ずかしがるっていうんでしょう。






 「降りる」というのは、神が巫女の身体に憑(よ)る、宿るという意味です。

 なかなか巫女に神様が降りてこない。恥ずかしがってないで早く降りておいで、と神様をからかっているようでいて、神おろしをうまくできない、鈍い巫女を笑っている歌とも取れます。

 人々が親しげに、気軽に神様に話しかけている様子がわかります。同時にそれは、人々の生活の中から、だんだんと神の影響が薄くなって行ったことをあらわしてもいるのでしょう。霊威とか自然の力を人々が次第に恐れなくなっていることが感じられるようです。

 まあ、そんなことを抜きにしても、「ゆららさらら」という音が美しくて、意味などどうでもよく口ずさんでしまう歌なのですが。


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