【緒言】
シューティングゲームに打ち込んでいる時、私は食べても食べてもなかなか太らなくなる。友人のシューターを顧みても、肥満体型のシューターはかなり珍しく、どちらかといえば痩せ体型のプレイヤーが多い。反対に2chなどでは、「アニメオタクは肥満体型」「エロゲやる奴はピザデブ」という表現を見かける事が多い。同じオタクでも、専攻ジャンルによって体型は大きく異なるのだろうか?本当に
シューターは痩せていてアニオタやエロゲオタは肥満体型なのだろうか?以前から私は、この俗説が本当なのかどうかを気にしていた。
もし、シューターがゲームのやり過ぎで栄養失調気味だったりアドレナリンの出しすぎで不健康な痩せ方をしているなら、中年期以降にそのしっぺ返しは必ずやってくるだろう
※1し、エロゲオタやアニオタがピッツァの食べ過ぎや運動不足で太っているなら、やはり中年期以降に成人病に苦しめられることになるだろう。
オタクが少しづつ高齢化している今、来るべき“中年オタク時代”を見据えて、各オタクジャンルごとの健康状態に着目してみるのはそれなりに意義のあることだと私は考えている。しかし、実際にそういった各ジャンルのオタク達をかき集めてきて
身体検査/血液検査を行うのは不可能に近い。
そこで限定的な方法ながら、私は秋葉原で肥満者の割合をカウントしてみようと考えた。今回のテキストでは、その結果を報告するとともに、若干の考察を付け加える。
【方法】
2005年7月10日(日)と2005年10月30日(日)において、秋葉原の大通りに面した幾つかのジャンルの店舗内の男性客だけをカウントし、肥満体型の男性が何人含まれているのかを別途カウントした。女性はこの調査には含まず、
敷居の内側に入っている男性客だけをカウントした(=店頭デモを眺めているような客や、お店のスタッフはカウント対象外になっている)。一部店舗では外国人が混じっていたが、年齢や国籍は問うていない。また、今回の調査には小さな子供は含まれていなかった。某ゲームセンターにおける調査では、立ち見ギャラリーを除外してシューターだけを拾い上げたいという目的で、着席してプレイ中のプレイヤーだけを対象とした。
調査は以下のポイントにおいて合計四回の標本抽出を行い、それぞれの抽出施行は五十分の間隔を置いて行われた。場所及び時間は以下の通りで、一回目と二回目は7月10日に、三回目と四回目は10月30日に実施した。
1.某社同人館(エロ同人ゲーム・通常同人ゲーム販売)
(一回目13:20、二回目14:10)(三回目11:00、四回目11:50)
2.某コミック店地下一階(エロコミック・エロゲー・エロDVD販売)
(一回目13:10、二回目14:00)(三回目11:10、四回目12:00)
3.某社ゲームセンター二階・シューティングゲーム筐体でプレイ中の人
(一回目12:50、二回目13:40)(三回目11:20、四回目12:10)
4.某社Mac館一階(マッキントッシュ向けパーツ・周辺機器等の販売)
(一回目13:00、二回目13:50)(三回目11:30、四回目12:20)
4.某電器店一階(Windows向けパーツ・周辺機器等の販売)
(一回目13:30、二回目14:20)(三回目11:40、四回目12:30)
観測方法は目視による観察を行わざるを得なかった。
※2 日常の診療活動を参考に、肥満体型が確実視される標本だけに絞って肥満とカウントした。なお日本肥満学会では、平成11年以降、BM
I(body mass index)が25以上をもって肥満としているが、おそらく私は
25をかなり上回る標本だけを肥満としてカウントしているであろう事を断っておく。
【結果】
では結果をご覧頂こう。店内のお客さんのなかで肥満体質とみなされた人と、そうでない人の割合は以下のようになった。ちなみに細かいデータを見たい方は、
こちらをどうぞ。
場所 | 全体人数 | 非肥満体型 | 肥満体型 | パーセンテージ |
某社同人ソフト館 | 62 | 46 | 16 | 25.8% |
某漫画屋地下1階 | 124 | 102 | 22 | 17.7% |
某社ゲーセン二階 | 92 | 83 | 9 | 9.8% |
某社Mac館一階 | 48 | 36 | 12 | 25.0% |
某電機店一階 | 70 | 59 | 11 | 15.7% |
グラフは以下のとおり。
ご覧の通り、一見すると結果は偏ったものにみえる。シューティングゲームの取り揃えで有名な
某社ゲームセンター二階では、肥満体型のプレイヤーが10%を切っており、他のジャンル店舗においては幾らかの差はあるものの15%を超える肥満体型が観察された。特に同人ソフト館とMac館においては25%もの肥満体型が観察された。ただし、この一見すると差が大きそうなこの結果を、フィッシャーの正確確率検定で比較した場合、最も差が激しいと思われる同人ソフト館群とシューター群との間に
有意差は検出されなかった(P=0.13)ことを付記しておく。今後、研究を重ねることによって有意差が検出出来る可能性はあるかもしれないが、現時点ではシューターと萌えオタとの体型差は明確ではなかった。
【考察】
今回の結果では、サンプル抽出数が少なすぎた事もあってか、群間の明確な有意差は認められなかった。シューティングゲームをマニア店でプレイしている男性は、確かに他の店舗の人達に比べて肥満体型が少なかったが、P=0.13という水準では統計学的には有意ではない。調査結果は実地における感触に一致していたが、
「アーケードシューターはアニオタや同人オタよりも痩せている!」と断言するには証拠不十分としなければならない。
だが、
厚生労働省のデータと比較すると色々と考えたくなることがあったので、そこを加味して色々と考察していこうと思う。なお、今回参照させて頂いたのは、『
平成15年国民健康・栄養調査結果の概要』である。
1.シューターに関して
シューティングゲームのプレイヤーはプレイ中は交感神経がビンビンに働きっぱなしのせいで、非常に不健康な痩せ方をしているという印象を私は持っていたし、事実、痩せたくなったら私はシューティングゲームをやりまくって体重を減少させている。知己のシューターにも太っている奴は非常に少ない。だが、この「シューティング痩せ」という現象は、有意差をもって検出されるほどでは無かったようである。たまたま某店の筐体にシューティングをやらない人が着席していた可能性はあるが、そんな事を言ったら他の店舗でも同じだし、今回の調査中、
肥満体型の人が『コットン2』をワンコインクリアしたのを目撃している。シューターは必ずしも全員痩せているわけではないのは明らかだ。
だが、有意差が無かったにしても、厚生労働省のデータと比較すると気になるところがある。以下のグラフをご覧頂きたい。
ご覧の通り、
各年齢の平均と比較した場合、やっぱりシューターには肥満体型が少ないのである
(もっとサンプルを取ってみたい!)。シューティングゲームオタクの現在の年齢層は、十代〜三十代前半に殆どが分布しており、主として20代の者によって占められている。例えば20代と比較すると、シューターは5%も肥満体型が少ない。この結果は必ずしも「シューターはガリ」を意味しないが、気になる結果である。
シューター=ガリが少ないという印象そのものは、今回の調査をもってしても、覆されたとは言い難い。食費を削ってスコアに賭けるような廃人は今でもあちこちにいるだろうし、そうでなくても
シューティングゲームは極度の緊張と集中を必要とするため、交感神経を滅茶苦茶刺激しているし、脳内麻薬も出まくっていると思われる。栄養失調を起こして救急車に運ばれるシューターは流石に稀だろうが、度重なるやりこみとそれに伴う交感神経の持続的賦活は、体に悪い痩せ方をする可能性があるのではないか?カテコラミン
※3をドバドバ与えたマウスは早死するというが、アーケードシューティングゲームのやり過ぎは大丈夫なのだろうか?ちゃんと難しいシューティングゲームは交感神経を刺激しまくっているし、シューターはそれに酔いしれている。シューティングゲームという“生活習慣”が長期的に人体にどんな影響を与えるのか未知数だが、私自身も含めた周囲のシューターを見ていると不安になってくる。今後もシューターの体型や健康状態に注目していきたい
※4。
2.同人ソフト館、某エロコミック店地下一階に関して
同人ソフト購入者や美少女コミック購入者に関しても、「差はみられるけどそれは統計的に有意なものではない」という結果を得た。彼らのどれぐらいが純然たる「インドア派」なのかは当然不明だが、家で
エロゲーやアニメ鑑賞に多くの時間を割いていて、スナック菓子やピッツァでもつまんでいれば太りやすくなるだろう。実際に肥満体型になっている者の現在の割合は3割を切っているので安心…と言いたいところだが、若い頃から肥満体型を続けやすい傾向があるとすれば目くじらを立てておいたほうがいいかもしれない。“ライフスタイルとして太りやすい”傾向があるなら、生活習慣病に将来罹患するリスクはなんだかんだ言って高くなるに決まっている。シューティングゲームはともかく、趣味としてのアニメ鑑賞や同人ゲープレイ、エロゲープレイが体を損ねる事は無い。とはいえ
ジャンクフードばかりを食べ、夜遅くまでパソコンをカタカタやってしまうライフスタイルが常態だとすればツケはいつか必ず回ってくる。いつまでも健康なオタクライフを続ける為にも、体重増加には注意して頂きたい。え?シューティングゲームをやって痩せるって?うーん、良いのか悪いのか…。
では、厚生労働省のグラフを見てみよう。
同人ソフト館・某コミック店地下一階ともに高い数字が出た。しかしこの両者
の間にこれほどの開きがあるのは何故だろうか?この両オタクニッチって、
構成員がかなり重複していたと思ったのだが?某コミック店地下一階はともかく、
同人ソフト館のお客さん達の肥満体型率はかなり高い。もちろん、三十代以降と
おぼしき男性はごく僅かしか目撃しておらず、推定される平均年齢は二十代の
中盤か、むしろ若干若いぐらいだった筈である。
厚労省の20代のデータと比較
すると、10%を超える差がみられている。もしもこの結果が有意差をもって指摘
出来るとすれば、
(健康維持の疫学的観点からすれば)由々しき事態である。
今後も調査を続けていきたいところである。
シューティングゲームの場合と異なり、エロゲーや同人ゲーや漫画・アニメ鑑賞
そのものが体を蝕む可能性はあまり無い
※5。あまり無いのだが、
随伴する色々
には生活習慣病のハイリスク因子が揃っている。
スナック菓子・ピッツァ・夜更かし・
運動不足などが重なれば、将来の生活習慣病への罹患が促進されてしまう。
オタク趣味をやめろと言うつもりは全く無いが、意識すれば何とかなるであろう
ハイリスク因子は、出来るだけ避けたほうが良いだろう。末永くオタクライフを
エンジョイする為にも。
3.Mac館に関する言い訳
比較対象として、秋葉原のWindows専門店とMac専門店でも同様の調査を行った
が、Mac館で25%という高い数字には当初困惑したが、厚労省のデータと比較すると
なんとなく合点がいく。Mac館で見かけた客層は、シューター達や同人ソフト館で
見かけた客層に比べて明らかに高齢で、平均年齢は二十代後半〜三十代ぐらい
だったのだ。厚労省のデータを見る限り、平均年齢が高いほど肥満体型者の割合
も高いわけで、肥満体型の割合が高い要因として『Mac館は、お客さんの平均年齢
が高い』傾向を割り引いて考えなければならないだろう。平均年齢が低いシューター
や同人ソフト館群に比べて肥満体型の割合が多いのはむしろ自然だろう。
誤解しないで欲しいが、
Macを使っていれば太っていても大丈夫というわけでない
し、
歳をとっていれば太っていても大丈夫というわけでもない事を警告しておこう。
極端な肥満体型は、ともあれ生活習慣病を誘発しやすい。早死
(それも、真綿で
首を絞めるようにゆっくりと、20年ぐらいかけて)したい人はともかく、そうでない人は
ご注意を。
それにしても、Mac館の客層がWindows館の客層に比べて明らかに高齢という
事実は、それはそれで考察すると楽しそうだ。楽しそうだが、紙幅の都合で割愛
する。