僕はホルンの音色がとても好きだ。素朴な色合いから雄大なスケール感まで表出するその多彩な表情がたまらないのだ。しかしマウスピースの小ささと管の長さから、昔から言われるとおりこの楽器の演奏は難しい。その為もあって多少のミスは致し方なしと見なされる点が無くもない楽器でもあったのだが、そんな楽器の欠点を物の見事に覆した印象を与えてくれたのがこのブレインだった。その演奏をレコードで初めて聴いてとても感心したのは実に美しいタッチと正確無比な音程であった。不安定な要素の多いホルンを演奏する場合最も課題となるのもこの2点であることが多いのだが、ブレインの演奏はそんな楽器特有の欠点を完全に克服し、もとからそんな欠点など無いようにさえ聴かせるのだからこりゃ凄い。言い換えるとブレインの演奏を聴くとホルンという楽器の難しさを感じさせないのである。これこそ名人のなせる技じゃないかしら? |
モーツァルト:ホルン協奏曲集 |
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同郷のホルン奏者I・ロイドゲープの為に書いたホルン奏者定番中の定番曲。
ホルンという楽器の響きを幅広く引き出した名曲こそブレインの奔放かつ安定感抜群のプレイで聴きたい。技術、音楽性いずれも文句のつけようのない素晴らしさでありながらどこまでも自然な印象を失わない点が凄い。バックはブレインをことのほか気に入り、尚かつ馬もあっていた若い頃のカラヤンと所属していたフィルハーモニア管弦楽団。 |
R・シュトラウスホルン協奏曲集 |
| リヒャルト・シュトラウスは当時最高のホルン奏者と謳われたフランツを父に持っただけあってホルンの可能性については人一倍理解していた人だ。従って彼の管弦楽曲ではホルンは良く言えば大活躍、悪く言えば超難しい。協奏曲となれば遠慮なしにホルンの能力をフルに発揮した作品を残した。しかしもともとシュトラウスは多数の歌曲でも解るとおり屈指のメロディストでもあるだけあって実に美しいメロディーを伴いながら縦横無尽に飛翔するが如き作品に仕上げている。この様な歌い且つはね回るような作品はブレインで聴く醍醐味に溢れている事この上ない。特にメロディックな第1番では朗々と歌い上げるブレインのホルンにただただ聴き惚れてしまうばかり。バックはシュトラウスに人一倍理解の深い名指揮者サヴァリッシュがフィルハーモニア管弦楽団と共にバッチリきめている。 |
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なにも昔ばかりが良いと言うわけではありません。いろんなホルン奏者のプレイを聴きましたがブレイン以上の人が聴き当たれなかっただけなのです。良いものは良い・・・・ただそれだけの結論です。もし万が一にもブレインの音を聴いたことがないと言う不幸な方はなにがどうあっても聴くべきです。買って絶対に損はありません。 |
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