第5章 コンクリートブロックの正しい使い方
5/10 さて、待ちに待った週末である。この間、大体どのようにリフトアップするかを考え詰めた。出た答えは、コンクリートブロックが足りない。かといっても、わざわざ新品を買うのももったいないし、何かいい案が無いもか、と考えながらX1/9を駐車場に取りに行く。
相変わらず、燃料は減り続けていて、ガス臭い。うーん、毎日会社の帰りに心配して見に行ったりはしていたが、燃えたりしていないことで一安心。ふと、駐車場の周りを見ると、建設資材置き場がある。そういえば、この近所で小規模開発の土地造成を行なっているっけ・・・。ここで、ピンと来た。”ブロックがあるかもしれない。”辺りを覗くと、捨てるでもないが、新品でもない古ブロック、しかもC級と呼ばれる、ごつい奴が転がっている。しめしめ、これはもう使うことはないはずだ。
早速現場の人を捕まえ、おだてすかしてイヨッ大統領!、交渉に入るとあっさりOKをもらった。結果、6個ほどブロックを頂いた。あとは、家にある分でまかなう事にする。実際、あまり大量にもらっても、その後が困るのだ。さて、作業開始。まずは、いつものように、リアをジャッキアップ。すかさずウマをかける。次に、地面にブロックを並べ、ブロックを土台にして、ジャッキを噛ましてまたジャッキアップ。こうすると、ジャッキの揚力以上の高さが稼げるというわけだ。
さらに、ブロックをもう一段積み、ジャッキアップ。今度は、ウマの下にもブロックを敷く。こうすれば、ウマも本来以上の高さで、クルマを保持している事になる。この作業を何度か進める事で、かなりのリフト量が稼げるのだ。これはビルを建てるときに、屋上のクレーンがどんどんビルと一緒に高く持ち上がっていくのと同じ手法だ。但しこの作業、気を付けないとブロックのガタで不安定になる事があり、ブロックの組み合わせには熟考を要す。また、フロントはアップしないので、輪止めを移動しながらジャッキアップしなければキケンである。
ちなみにブロックの強度はそこそこあると考えているが、クルマが軽いからこそ出来る技だと思う。重量級のクルマでは、こんなことは恐ろしくて出来ないだろう。X1/9だって、この状態の支持の下に入るのは、怖いことこの上ない。
かくして組み合わせを考え、リフトアップの高さを測りながら、何度かミスった甲斐もあって、1時間掛けてジャッキアップができた。コレがその時の画像である。

リフトアップし、タンク上側の配管をはずし、タンク内に残っているガソリンを抜く。灯油用の手動ポンプでは、管の長さが足りないので、洗車用の普通のビニールホースを切って、ポンプの長さを延長する。ビニールホースなんかはガソリンで溶けてしまいそうだが、短時間なら大丈夫。抜いたガソリンを使って、新しいタンクに漏れがないかどうか、念のためチェックする。
結果、幸いにもあたらしいタンクに問題なし。古タンクから、完全にガソリンを抜いたら、いよいよタンクを支える下側の吊りバンドを外してゆく。相変わらず、こんなところもご丁寧に13ミリのボルトである。吊りバンドを緩めたら、タンクにジャッキをあてがい、落ちて来ないようにする。バンドを完全にはずし、ジャッキをおろすとタンクがずり落ちてきた。
よし、とれた。しげしげと観察。うーむ、車体側には、遮音のためのフェルトシートが貼ってあり、ソレを外すと錆とご対面。あらためて外したタンクをよく見ると、ある部分から、ガソリンが滲んでいるのが分かった。
なるほど、このクルマは、岩手という雪国での使用車のため、冬は、いつも融雪剤を跳ね上げていたのだろう。そして、跳ね上げられた融雪剤は、遮音シートに染み込み、湿気と塩分が、常にタンクにかかっていた。融雪剤とは塩化カルシウム、つまり塩分だ。そりゃあ、そんなもんにさらされていて、イタ車の部品に錆びるな、という方がおかしいわ。
新旧タンクを比較する。大きさ、形状、配管。すべてオッケーである。車体に仮入れしてみても、ぴったりである。よしよし、苦労してタンクを調達した甲斐があったワイ。
さらにここで、ふと考えた。今後、このクルマが、雪国仕様になるとは思えないが、フェルトシートがタンクに密着している限り、湿気の問題残るであろう。よって、錆止め塗装をしたほうが良いのではないだろうか。
錆止めは、欲を言えばPOR-15が望ましいが、そんなものは今無いし、当然のように、アサヒペンの”サビ鉄用”。これは、サビの上からも塗れるという、優れモノだ。但し、錆止め塗料のお約束で、色は赤色となる。
タンクを塗装し、乾かして夕方。いよいよ新タンクを車体に付ける。ホントなら、更に黒色にでも上塗りしたいが、時間もないし、燃料タンクで苦労した証として、このまま組み付けることにしよう。いつの日か、このタンクを外す人がわれわれの苦労を想像するように。。。。
吊りバンドを確実に付け、いよいよ車体を路上に降ろす。再び、ブロックとジャッキとウマの組み合わせ作業だ。作業することしばし、無事路上にX1/9は降り立った。ガソリンの配管を済ませ、抜き取っていた燃料を入れ、キイをひねる。電磁ポンプが作動し、配管からの漏れ、タンクからの漏れがないことを、確認する。
エンジン始動。あっけなく、エンジンがかかった。下回りを覗いて、更にガソリン漏れのないことを確認した。
いやー、直った直った。これで、やっと並の中古車になった、と日記には書いておこう。ひとまず今回で緊急保全工事は終わり。 しかし、今回のGW特別工事で、新たに整備した方がよい箇所を発見してしまった部分があるのも、紛れも無い事実だ。
もうすぐ車検も控えているので、早速円高差益の旨みに嵌った、アメリカのベイレスにパーツを発注している。この部品が届き次第、またレストアを再開することになるのだ。

