第9章 タイミングの甘い罠

7/5、6 さて、車検もパスした。しかし、サイドブレーキワイヤの一件を、まずは解決したい。車検のテスターでブレーキの検査のとき、ワイヤの先端にカシメてある、鉛の玉のストッパが抜けてしまった件である。これは、明らかに部品不良ではないかと思うのだ。

個人輸入で、現地価格、1本\2,000程度の物だが(ちなみにこのクルマは2本つかう。)日本で買うと、1本で¥9,000にもなる。やはり、それなりに中間マージンを取るんだから、責任もって対処してほしい。とりあえずはパーツ購入先のショップに交渉することにしよう。

結果、ショップとしては輸入業者に交渉をしてくれるそうだが、なにぶん交換作業をユーザー自身で作業しているので、そこをタテマエに突かれると、何も言えないそうである。(向こうの予想される言い分は、いわゆるキチンとした作業がされておらず切れた、といえなくも無いということ。)

まあ、あんまり期待は出来無そうだが、協力してくれそうな応対はひとまず見せてくれているので、店先で暴れてダダをこねることはやめ、まずは、賢いフリをして、作戦を練る。

1、車検を通過出来たのだから、作業自体に問題はないと主張出来る。
2、実際にはGWに交換作業をしているが、車検のための定期点検記録簿上、6/28の作業にしてあるので、”整備士資格のない人間がブレーキの分解整備を行った場合、15日以内に陸事で検査を受けなければならない”という、訳の分からない運輸省の規定に準拠しているので、法的に問題はない。

よって、当方の車検証と、点検記録簿をコピーしてもらい、それを使って、交渉してもらうことにした。これで、どのように店員が理解し、いいかげんな業者に対応してくれるか。

さて、今日も物凄く暑い。気温35度だそうである。今日は、未交換の信頼性向上部品のうち、タイミングベルトと、テンショナーベアリングを交換する。

同僚も興味があるそうなので、(たしかに近年、よく話題に出る、エンジンにとってキモパーツだし、どんなもんか興味があって当然ですね。)共同作業をしてくれるそうである。とりあえず、補機類、カバー等をさっさと外す。いよいよベルトを外すのだが、タイミングマークの位置に注意が必要だ。この手の作業の鉄則は一番シリンダを圧縮上死点に合わせるのが基本で、エンジンは、縦置き、横置き問わず、プーリーなどが付いている側が、一番シリンダである。

しかし、手持ちのヘインズのマニュアルは、1300ccの初期モノで解説されているせいか、現車と、合わせマークの位置が違う。これではよくわからんので、マークがあるということは、いずれにしても圧縮上死点か、排気上死点であることには違いなさそうであるから、1/2の確率で、自分なりにこっちだ、と推測してタイミングを合わせた。しかし、これは見事に排気上死点であったことに、後で気付くハメになる。

4サイクルエンジンの場合、カムシャフト1回転するのに、クランクシャフトは2回転する。すなわち、圧縮上死点の状態と排気上死点の状態において、クランクシャフトの位置は同じだが、カムは180度ずれる位置にある。つまりは、その180度ずれた位置で、タイミングを合わせてしまったということになる。

まあ、ただベルト交換するだけなら、上死点に合わせてさえあればタイミング自体は変なことさえしなきゃ、ずれるものではないので、このまま進めたのであった。さて、同僚も到着したので、テンショナープーリーを緩める。タイミングベルトを抜く。。。。アレ?クーラントが垂れるぞ?

テンショナープーリーのボルトを締めると止る。これはどうやら、水回りの通路につながってるらしいが・・・?まあいいや。締めれば問題無いのだから。イタ車はこんなもんなのでしょう。

外したベルトを早速観察する。うーん、特に削れてたり、ヒビ入っているような痕跡は無い。おそらく過去、一度は交換しているのであろう。しかし、せっかく外してしまったのだから、予防措置で、今回も当然交換した方がより安心である。

ここで、エンジン側に目をやれば、タイミングプーリーのラックが随分汚れているので、ブレーキクリーナを用いて掃除する。プーリーは3つ。上からカムシャフト、AUX、クランクシャフトの駆動プーリーである。

上下の2つのプーリーには、位置合わせマークがあるため、プーリーを下手に回転させないように慎重に掃除するが、AUXプーリーは、マークが無いので、どうやら関係無い。よって、憂さ晴らしにクルクルまわしながら掃除した。しかし、実はこれが今回の重大なチョンボになろうとは・・・・。

で、まずはテンショナーベアリングの交換を行い、プーリー上側とテンショナーの組み付けを同僚に任せ、私は下側のベルト掛けを行う。さてと。ちょいとてこずったが、組み付け完了。手動でクランク2回転させ、バルブなどに引っ掛かりがないことと、ベルトの張り具合を確認。さあ、このままエンジンかけてみよう。

キュキュキュキュ、パンッ!・・・・・。 あれ?おかしいなぁ、バックファイヤーが出る。もう一度やっても駄目。 ・・・・いつのまにか、タイミングずれてしまったか? 

焦る。明らかに、どっかのタイミングがずれたのだ。うーん。いろいろ推測する。でも、うかつにタイミングのコマをずらすと、エンジンによってはバルブとピストンがゴッチンコなのだ。でもしょうがない。思いきって、ラックの駒を1つ進めたり、1つ戻したりする。でも駄目だ。エンジンはプスっと言ったっきりである。まあ、クランクを手回しして確認した感じでは、バルブとピストンのゴッチンコはないようだ。

そのうち、同僚氏が圧縮上死点ではないのでは?と気が付く。(つまりは、最初に述べたように、このタイミングは排気上死点にあった。)

こうなったら、きちんと圧縮上死点にして、再度確認しなければならない。よって再トライ。でも、エンジンはご機嫌ナナメの渋谷系コギャルのように、駄々をこねてエンジンがかからない。あたりもヤバイことに、暗くなってきた。よって今日は諦めた。GWに引き続き、2度目の”故障中”貼り紙留置である。

翌朝。昨日は友人宅で、深夜まで遊んでいたので眠い。起きてみると、今日も暑くなりそうだ。ふと昨日、同僚氏が言っていたように、冷静なアタマのうちに、まず点火関係を見直すことにした。プラグを外す。特に問題無し。デスビキャップも外れていない。やはり、タイミングのズレか・・・。さらにもう一度マニュアルを見ると、どうやら構造的にはタイミングがずれても、ピストンとバルブは干渉しないように、ピストンには逃げがあるようだ。これはひと安心である。

さて、カムとクランクの位置関係は、タイミングマークで見ているから、そんなにずれていないはずであるが、進み側、遅れ側と、それぞれ2駒ずつずらしてみる。念のため、ベルトは旧部品で実験である。(バルブとピストンがゴッチンコしないことがわかったので、すっかり大胆になる。)

でも、駄目なのだ。 くそー。暑いので、ひとっプロ浴びる。落ちつて昼販食べて、あいかわらずいじってもバック・ファイヤー。あー、もーいや!!

でも、やっぱり、点火がおかしい感じがする。デスビキャップを開けてみるか。あれれ?ローターの先端位置が、3番シリンダーの点火辺りになっている。なぜ???今は、ローターの先端が、1番シリンダーの点火過ぎた辺りにいなければいけないのに。

まさか! ベルトを外し、今まで気にも留めなかった、AUXプーリーをまわしてみる。そうすると、なんとデスビのローターがくるくる回る。そりゃ点火しないわな。でも、ヘインズのマニュアルには、AUXプーリーのタイミングマークの記載はないし、実際部品に位置合わせらしき物もない。ただ、デスビ取り付けの方法は書いてある。しかし、これはエンジンを降ろした状態での作業方法だ。じょうだーん!!

しょうがないので、昔、ポイント交換のとき使ったテクで、デスビキャップの1番端子の位置をデスビ本体に写しとり、スパークし終えた辺りに、ローターの先端がくるように AUXプーリーをまわす。つまり、普通点火タイミングは圧縮上死点の前 (BTDC ビフォア・トップ・デッド・センター)であるから、圧縮上死点 (TDC)になったとき、点火は終えていなければならないわけだ。

念のため、旧ベルトをかける。セルをまわす。キュキュキュッグォーン!!やっぱりそうでした。かかりました。プーリーの掃除のとき、タイミングに関係無いと思い込んでた部分が、実は重要だったんです。

で、念のためマジックでマーキングしておいて、ベルトを新品に交換。万一を考え、目で見て、ずれが分かるよう、デスビキャップも外しておく。新品ベルトを組み付けて、セルをまわす・・・・・かからない。なぜ?

原因は、念のためにデスビキャップをはずしていたことによる。。。。あー良かった。よって作業終了。

エンジン、しっかりかかります。カバー類を付けて、全体終了した頃、同僚氏連日の来訪。(お騒がせしましたなぁ。)

久々に、X1/9の乗り味を確認してもらう。そういや、この前乗ったときは、おそらくタイロッドエンドなどもまだ古かった頃だったかな?

随分、フツーのクルマに近くなってきたはず。あとは、サイドブレーキワイヤが付けば、当面は問題ないと思う。まあ、更にはイマイチ渋いアクセルワイヤー交換とか、錆びちゃったトランクの底板を何とかしなきゃね。あ、でもファンベルトも、そろそろ交換どきだなー。(結局いろいろある。)

そうそう、外した旧タイミングベルトだけど、昔サーキットの狼で、早瀬左近が”ベルトの予備も車に積んでいないような奴はクルマに乗る 資格はねえ”と言っていたのがミョーに気になったので、捨てずにトランクに入れてあるのは言うまでもない。