第10章 現物あわせの逸品
7/20-21 タイミングベルトは新しくなったが、その時に外した、エアーポンプとオルタネータ系統のファンベルトが、すっかり劣化しているのに気づいた。このまま放置しては、近いうちにブチ切れそうだ。もっともこれは予想してた事なので、ベイレスから輸入はしていたものの、実はウチのには適合しないヴァージョンのようで、どれも合わないのだった。まあ、これ自体は値段も高いものではないので諦めもつくが、年式照合などで設計変更が絡んでいると、うまく合わない部品が来るリスクというモノについては、個人輸入のちょっとわずらわしい一面だ。
清瀬市に、FLMC(フィアットランチアメンバーズクラブ)というショップがあり、いろいろパーツを在庫しているらしい。よって、実車のファンベルトを外して持参し、合う奴を捜そうという作戦に出る。
で、ファンベルト。やはり我々のモデルは、並行モノのせいか、ドンピシャのモノは無いようである。仕方なく、店長風のオヤジさんの経験とやらで、若干ちいさい径のベルトを付けてみる事にした。
ベルトは普通、取り付け時には、プーリーの鍔を乗り越えて溝に収まるわけで、コレが径の小さいベルトの場合、作業の困難は容易に予想できる。 しかし、所定の位置に納まってしまえば、丁度良いサイズになることが多いのだ。
実際、他の日本車で、ちょっと大きい径のモノを流用しようとしたら、アジャストしきれない事があったっけか。一方、エアーポンプの方は、付けないで良い、とショップのオヤジは言う。”みーんな、そんなモン付けていないって!”ときた。
確かに、エアーポンプなんちゅうのは、エアクリーナケースにちょぼちょぼとエアーを送ってるだけだから、そうかもしれない。パワーのロスもしてるんだろうし、うるさいのも確かであるから、外してみよう。
ついでに、接続部のカプラーが破損しかけている、2分割型スピードメーターケーブルの代わりに、1本タイプとおぼしきケーブルがあったので、購入する。なにせ、40km/h以下では、0km/hとも40km/hともとれる振れかたをするのだ。さらに、安さにつられてオイルレベルゲージの、シールラバーも購入。
翌日、作業開始だ。まずはシールラバー。コレは超簡単。オイルスティックゲージのラバーを外して、付け替えるだけなのだ。次にファンベルト交換。例により、トランクルームのサビとご対面して、エンジンルームの隔壁を外し、オルタネータのアジャスタボルトを緩める。予想どうりではあるが、一番アジャスタを緩くしても、新品ベルトは、やはり普通にはコジッても入りません。
いろいろ試してみると、それなり結構イイ線まで行くのだけど、オリジナルの旧品ベルトでは、ベルトの内側に歯があって、プーリーを乗り越えるためのきっかけになってくれていた。一方、新品ベルトは、内側に歯が無く、プーリーを乗り越えるきっかけを与えてくれない。
そこで、いかに装着できるか、を考えることにする。まずは、ドリルで、アジャスター穴を緩め側に広げてみた。しかし、いざ調整してみると、オルタネータ自体が邪魔で、わずかしか緩み側に移動量が稼げず、ほとんど無意味であった。悔しい・・・。
よって、奥の手。比較的外しやすい、クランクシャフトプーリを外して、(こういう時、ホントにインパクトレンチは便利。)ベルトを溝に掛け,引っ張りながらプーリーを再度装着する。今度はなんとか付いた。コレで、現物あわせによる調整はオッケーである。張りも充分に調節できる。ちょっとキツめであることは違いないが、おそらくそのうち、ベルトが適当に伸びて、フツーに脱着出来るようになることでしょう(?)こんなもん、トヨタ辺りのディーラーでは、およそ考えもしない流用であろうが、切れそうなベルトで恐々するよりも、精神的にはよっぽどヨイ。
さて、スピードメーターケーブルであるが、実はコレ、1本タイプじゃなくって、2分割タイプの長い方だったんですねー。うちのは、短い方が壊れてるんだってば。長い方には、用がない。あれこれ分解してから、このことに気がついてショックである。FLMCに連絡し、結局返品受付してくれたものの、電話にて店員のお兄さん曰く、”ええ、短いのは世界的に欠品ですから、
長い方のしか扱っていません。1本タイプ?扱っていません。”
うー、だったら、買うとき確かめるんだった・・・。でも、お店だって知ってるんだから、買うとき一言教えてくれればイイのにー。お兄さんの対応も、ちょっと嫌だったな。でも、ヨコハマの某店よりよほど信用できるし、今後何かあったら、店長風オヤジと話をしようと心に決めた。
で、どうせなので、壊れてる短いケーブルを外して見てみる。よく見れば、ワイヤー自体には問題がなく、樹脂のカプラーが割れてるだけだ。材質はポリ系のようである。さてここで、半田鏝の登場。すなわち樹脂溶接を試みることにする。
溶接すること10分、肉をちょっと溶かし込んだので、少しカプラーの肉厚がやせた分、エポキシ接着剤で補強。うーん、万事快調、これで直っちゃいました。尤も、ケーブルそのものは切れていないのだから、当然と言えば当然である。まあ、こんな修理でも、メーターの針が0から40km/hでブレて読めない振れかたするより、よっぽど良いと思う。
さてついでに、ヒビの入ったブレーキフルードタンクを何とかしよう。ベイレスによれば、この部品も欠品状態のようなので、こちらも樹脂溶接&エポキシ攻撃。こちらは漏れもさる事ながら、水が入る事もヤバイので、しっかりと塞ぐ。入手出来ない部品は流用か修理するしかないのだし、これで良いのだ。
さて日は変わって8月も終わり。それにしても、相変わらず東京は暑い。気温より、湿度が半端じゃない。実は先週、北海道に行っていたのが、あっちでオープンにしたX1/9で大地を走ったら、さぞかし気持ち良いことだろうと思う。ただし、それは夏の間だけの話ではあるが・・・・・。
さて、暫く駐車場の置物と化していた問題児はといえば。。
結局、例のサイドブレーキワイヤーの一件は、ヨコハマの某ショップのクレーム対応が物別れになってから、全くナシのつぶて。いっそ消費者センターにでも相談してみようか。いずれにしても、ここでパーツを買うのは金輪際やめよう。もっとも、FLMCと個人輸入があるので、こんな無責任なショップに頼る気など、すでになくなっているが。
という事で、サイドブレーキワイヤーは例により、個人輸入である。届いたワイヤを見ると、切れたタイプよりストッパ部はしっかりしている。片や1本¥9,000で弱いのに、個人輸入品は、2本で$25である。
如何に輸入業者がマージンを取っているかが、明白だ。だからこそ、不良に対する対処に我々が期待するところなのに、それがわかっていない。ヨコハマ市ヶ尾の某有名外車ショップさん、ちょっとは考えたら?
まあ、そんなこんなで気を取り直し、まずは作業に入るとしましょう。そうそう、以前気がついた右前輪の空気抜けの問題。これは、一週間くらいでタイヤのエアが、抜けてしまうのだ。うーん、改めてエアーをチェックすると、やはり抜けている。タイヤに刺さってる釘など無いので、ホイールが歪んでいるか、エアバルブの劣化が考えられる。いずれにせよ、そのうち対応せねば・・・。また頭痛の種が増えてしまう。取り急ぎ、クルマには携帯コンプレッサーを積んであるので、乗車前のエアーのチェック、および充填は容易に行えるようにしておいた。
さてと。駐車場から、作業場まで移動させるべく、あまりに暑いので窓を開けたら助手席側から、幽霊屋敷の布のように、顔にべローンとゴムが垂れてきた。ルーフのウェザーストリップである。あっちこっち劣化してるなー。まあ、こんなもんはボンドで止める事にしましょう。
いつもの作業場(家の前だが・・・。)にてリフトアップ。 作業が床下ベンチプレス状態(逆さ向きに作業する事。)で、面倒なのが分かっているので、ついだらだらしてしまう。ワイヤー中継プーリーボックスを外し、片側1本だけ残ったワイヤを外す。下回りの泥や、アンダーコートがぱらぱら落ちてきて、目に入るのでたまらない。
ワイヤーを外すだけなら、これだけだから、まだ簡単で済むのになー。そんなこんなで、タダでさえ暑くて機嫌悪いのに、散歩の犬が通過するたび、道路に寝そべる私を犬はオモシロそうに見る。飼い主に見られないように、悪態を突きながら追っ払う。
いよいよ、新しいワイヤーをセットし、プーリーがずれないように押さえつつ、プーリーの軸と、プーリーボックスを共じめしているボルトを付ける。文章にすると、たいしたことなさそうであるが、さかさまの姿勢でこれをやるのは、意外と辛い。それでも、前回ワイヤ交換時に相当苦労したので、要領得ている分、作業は早い。
やれやれ、とりあえずついた・・・、と思いきや、地面を見ると皿ワッシャが1つ。イヤーな予感。狭いメンテホールから中を覗くと、まさしく2本のワイヤの先端をはさむシャフトのワッシャの、L側を付け忘れている。ここは、シャフトをΩ型のクリップで留める構造で、そのクリップがガタつかないようにするためのワッシャなのだ。
ふぅー。又全部外すのヤダなーと思い、ふとひらめく。メンテホールの穴から作業が出来るんじゃないか。よし、邪道をする事にしよう。しかし、これが今回の悲劇であった。
早速、狭いメンテホールの中でΩクリップを外そうとして、ラジペンでこじった。するとクリップは外れたが、勢いで手の届かない袋状のボディ内部に飛んでいってしまったではないか。すごーくショック。結局捜索のため、プーリーボックスをばらす。あーあー。
で、Ωクリップは見付からない。こんなΩ型のクリップなんか売ってないし、さあどうしよう・・。色々考えたが、所詮シャフトが抜けさえしなければよいわけだから、割りピンかRクリップが使えるんじゃないか、と気がついた。そして、またまたいつもお世話になっておりますビーバートザンへ物色に。
ありました、ありました。使えそうな割りピンとRクリップ。で、早速買って行く。帰宅し、シャフトに合わせてみると、φ8のRピンがぴったりである。再度、ベンチプレスさながら逆さ作業でプーリーボックスを組み付ける。一通り組んで、タイヤを付け、サイドブレーキワイヤを調整。これが又、狭いメンテホールのおかげで涙が出てくる。逆さ作業で、ラチェットレンチのエクステンションバーでこじりながら、ナットを締めてゆく。これで張りはOK。
試乗する。坂道で停止。まあいい感じに止まっているね。暫くしたら、初期伸びをとるために、また調整しましょう。
それにしても、より快適にするにはまだまだ程遠い。いったん交換したはずのクラッチホースにまたひび割れが発生してるし、いろいろと部品はすでに購入し、待機しているのである。10月にはいよいよサーキットデビュウを目論んでいるため、万全の体制で挑まねばなるまい・・・。
それにしても、無いパーツは流用するとか、作るとか、加工するとか、いろいろやりようがあるもので、現物合わせの逸品製作にハマリつつある。こんなことはディーラーの若造整備士には出来るまい。

