資料4:表記法について

1.公用文の書き方

 以下は「公用文改善の趣旨徹底について」(内閣閣甲第16号昭和27年4月4日付け内閣官房長官依命通知)Web版からこちら適宜省略し、文化庁の本と照合したものです。(文化庁 平成13 p257-265:)

「公用文作成の要領

昭和27年

まえがき

 (前略)公用文を,感じのよく意味のとおりやすいものとするとともに,執務能率の増進をはかるため,その用語用字・文体・書き方などについて,特に次のような点について改善を加えたい。

第1 用語用字について

1 用語について

1 特殊なことばを用いたり,かたくるしいことばを用いることをやめて,日常一般に使われているやさしいことばを用いる。(×印は,常用漢字表にない漢字であることを示す。)
  たとえば
   
×
   稟請→申請  措置→処置・取り扱い  救援する→救う  懇請する→お願いする  一環として→一つとして  充当する→あてる  即応した→かなった
(2〜4は省略) 
5 
音読することばで,意味の2様にとれるものは,なるべくさける。
  たとえば
   協調する(強調するとまぎれるおそれがある。)→歩調を合わせる
   勧奨する(干渉する)→すすめる  衷心(中心)→心から
   潜行する(先行する)→ひそむ  出航(出講)→出帆・出発
(6.7は省略)

2 用字について

1 漢字は,常用漢字表による。
 
(1) 常用漢字表を使用するにあたっては,特に次のことがらに留意する。
   1 (省略)
   2 外国の地名・人名および外来語は,かたかな書きにする。(一部省略)

    たとえば
     イタリア  スウェーデン  フランス  ロンドン 等
     エジソン  ヴィクトリア 等
     ガス  ガラス  ソーダ  ビール  ボート  マージャン  マッチ 等
    ただし,外来語でも「かるた」「さらさ」「たばこ」などのように,外来語の意識のうすくなっているものは,ひらがなで書いてよい。
  (3.4は省略)
 
(2) 常用漢字表で書き表わせないものは,次の標準によって書きかえ,言いかえをする。(言いかえをするときは,「1 用語について」による。(以下省略)
2 かなは,ひらがなを用いることとする。かたかなは特殊な場合に用いる。
   注 
1. 地名は,さしつかえのないかぎり,かな書きにしてもよい。
     
2. 事務用書類には,さしつかえのない限り,人名をかな書きにしてもよい。
     
3. 外国の地名・人名および外来語・外国語は,かたかな書きにする。
     
4. 左横書きに用いるかなは,かたかなによることができる。

3 (省略)

3 法令の用語用字について(省略)

4 地名の書き表わし方について

1 地名はさしつかえのない限り,かな書きにしてもよい。
  地名をかな書きにするときは,現地の呼び名を基準とする。ただし,地方的ななまりは改める。
2 地名をかな書きにするときは,現代仮名遣いを基準とする。(ふりがなの場合も含む。)
3 特に,ジ・ヂ,ズ・ヅについては,区別の根拠のつけにくいものは,ジ・ズに統一する。
4 さしつかえのない限り,常用漢字表の通用字体を用いる。常用漢字表以外の漢字についても,常用漢字表の通用字体に準じた字体を用いてもよい。

5 人名の書き表わし方について

1 人名もさしつかえのない限り,常用漢字表の通用字体を用いる。
2 事務用書類には,さしつかえのない限り,人名をかな書きにしてもよい。人名をかな書きにするときは,現代仮名遣いを基準とする。

第2 文体について(省略)

第3 書き方について(省略)」

2.かな書きの語についての注意は、次のようなものがあります。
    (
片桐 p152(引用書1)より)

「〔付〕
     かな書きの語

  ある語を漢字で書くか、かなで書くかは、別に公式のきまりがあるわけではなく、自由である。しかし、一般には、およそ次のような場合、かな書きにすることが多い。
  1 常用漢字表に含まれない漢字もしくは音訓の語で、かなで書いても意味のまぎれないもの。
  2 接続詞・感動詞・助詞・助動詞およびこれらに準ずるもの。(常用漢字は使うという考えかたもある。)
  3 以下省略」

3.実務手引きは「公用文の作成の要領」の趣旨に反している件について

 上の「1.公用文の書き方」のなかの「1 用語について」の1項で「やさしいことばを用いる」、また5項で「音読することばで,意味の二様にとれるものは,なるべくさける。」や「2.かな書きの語についての注意」を読めば、その趣旨は「やさしいことばを用いる」ことにあるはずです。たしかに上の要領や注意書きは漢字についてのべられているといってもその趣旨はもちろん漢字かなまじり表記を含めた日本語についてであると考えるべきものでしょう。そしてそのように考えれば、ほんらいなら「うちゅうし」(「宇宙市」)としか読めない市名をあて字読みして、「そらし」と読んでよいとか、「仙台市」(せんだいし)と「せんだいし」は表記が異なるからOKというような判断はでてこないでしょう。ここにも漢字を最上の表記とする考えがみられると思います。

4.公用文における漢字使用等について

 これについては「公用文における漢字使用等について」(内閣閣第138号昭和56年10月1日付け内閣官房長官通知の別紙(同日付け事務次官等会議申合せ)がでています。必要部分は次のとおり。(文化庁 平成13 p253-255:Web版はこちら)(以下はWeb版を文化庁の本と照合し、それを適宜まとめたものです))

「1 漢字使用について
  (1) 公用文における漢字使用は,「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)の本表及び付表(表の見方及び使い方を含む。)によるものとする。

     なお,字体については通用字体を用いるものとする。
 (2) 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては,次の事項に留意する。
    ア 次のような代名詞は,原則として,漢字で書く。
       例  彼 何 僕 私 我々
    イ 次のような副詞及び連体詞は,原則として,漢字で書く。
       例  必ず 少し 既に 直ちに 甚だ 再び 全く 最も 専ら

          余り 至って 大いに 恐らく 必ずしも 辛うじて 極めて
          殊に 更に 少なくとも 絶えず 互いに 例えば 次いで 努めて
          常に 初めて 果たして 割に
          概して 実に 切に 大して 特に 突然 無論
          明くる 大きな 来る 去る 小さな 我が(国)

      ただし,次のような副詞は,原則として仮名で書く。
       例  かなり ふと やはり よほど
    ウ 次の接頭語は,その接頭語が付く語を漢字で書く場合は,原則として,漢字で書き,その接頭語が付く語を仮名で書く場合は,原則として,仮名で書く。
       例  
案内 調査
          
あいさつ べんたつ

    エ 次のような接尾語は,原則として,仮名で書く。
       例  げ(惜し
もなく) ども(私ども) ぶる(偉ぶる) み(弱) め(少な

    オ 次のような接続詞は,原則として,仮名で書く。
       例  おって かつ したがって ただし ついては ところが ところで また ゆえに
     ただし,次の4語は,原則として,漢字で書く。
          及び 並びに 又は 若しくは
    カ 助動詞及び助詞は,仮名で書く。
       例  ない(現地には,行か
ない。) ようだ(それ以外に方法がないようだ。)

          ぐらい(二十歳ぐらいの人) だけ(調査しただけである。)
          ほど(三日
ほど経過した。)

    キ 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
       例  こと(許可しない
ことがある。)
          とき(事故の
ときは連絡する。)
          ところ(現在の
ところ差し支えない。)(以下省略)
2 送り仮名の付け方について(省略)
3 その他(省略)
4 運用に関する事項(省略)
5 法令における取扱い(省略)

引用書

 1.「4 かなづかいQ&A」『最新版 ことばのしるべー国語表記法のすべてー』
  (株)がくと企画 片桐大自(編) 学校図書(発行) 平成2年 240頁 ¥800
 2.文化庁(文化国語課)編 『公用文の書き表し方の基準(資料集)(増補二版)』 文化庁 386頁 平成13年 ¥1600

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