日本版金融ビッグバンが首相から発表されたのでいよいよという感じはしていたが、 来るべきものが来た。大衆商品(火災・自動車)まで一気に来た。若干早かった気もするが、長い目で見れば当然。 時代の流れと言える。
新聞報道だけから見ると、(交渉中滞日していたといわれるグリーンバーグに)
相当やられたという感じ(「損保完敗」等の記述さえある)ではあるが、
自由化が遅すぎると、その間に日本の損保業界がグローバルな市場での業際
金融機関との競争において、競争力を失っていた可能性もあるので、
結果的にはこれで良かったのかもしれない。
自由化されるときにはこういう形でしかされようがなかったということも言えるかも
しれない。
こうなったら前に進むのみだ。
従来、収益性に留意しつつもどちらかと言えば契約量を重視した営業施策を採って
いたのが損保だったが、今後は収益性を最優先とした営業施策に変える行く必要が
ある。
このため、自由化の社会では、
コスト(特にロスコスト部分)の迅速な把握が困難な損害保険業界では、いたずらに 結果主義(収益至上主義)に走るとreserve の積不足等の問題を惹起するが、それは それとして、従来以上に収益を重視した施策は必須だ。
場合によると、reserveを積立てるクレーム部門を、一定の範囲で営業部門から独立 させることなどを検討する会社も出てくるかもしれない。アメリカで actuary が営業 単位と独立して reserve を評価するというのも、同様の考え方によるものである。 ただし、実態としては、各拠点や U/W-Unit との Conflict は常にあるのも事実だが。 (業績評価の度合いの強いアメリカである。容易に想像されよう。)
2.必要な行動
今後の進め方の洗い出し
・業界として
・会社として
・部門別に
これらの洗い出し・対策検討は、ボトムアップ型ではうまく行かない。ミドルの
管理職が主体になって動き明確に指示を出すべき。
3.検討事項
(1)損保業界として
(自由化の社会では、従来より「業界」の色は薄くなろうが、競争が健全に行われる
ような土俵作りが重要になる。また、他業態(銀行・証券)との競争において業界
として不利にならないように、従来通りの対応が必要。)
含み益依存の経営からの脱却。会計基準の変更(時価会計への移行)
改定前の駆け込み契約対策(長期契約増加−−特に保険料が上がる契約=若年層
の自動車保険、京都・大阪の自動車保険等、長崎・南九州の火災保険)
(自動車保険の場合、長期契約が限定されているため、あまり心配する必要は
ないかもしれないが、契約引受に制限がなく、料率事後調整のない種目は要注意。)
プールの拡充(業界ベース)
(2)損保会社として
Wall Street Journal (DEC.16, 1996)による報道は次のとおり。
WSJ :「3年にわたる日米の保険問題が、日本がアメリカの要求に
譲歩して Deadline 直前に終結した。アメリカの規制緩和
圧力が日本の抵抗に勝ったまれな例だ。」
米国大使 :「先のBig Bangと今回の保険交渉終結は、日本の保険市場を
開放的で自由競争のあるものにし、根本的に変革すること
を意味している。」
猪口三井海上社長 :「急激に過ぎる。消費者の利益を完全に無視している。」
WSJ :「一部の契約者、特に若年層 driver が高い保険料に直面する
一方、日本の保険会社に、競争激化による収益性の問題を
引き起こすことが予想される。」
note:bfjiyuka.htm, nichibei.txt