建築家に依頼するということ

富士ハウスというハウスメーカーで建てた私が書くことでは無いとは思いますが、実際家のことに詳しくなってくると、建築家さんに依頼するという選択肢に引かれる事もあります。ただ、建築家さんに依頼するということは、ある種のリスクを伴うことであって、私は我が家ではそのリスクを負わなかったということです。この選択を私は後悔していません。

私がこれまでいろいろと見てきた中で、以前は漠然としていた、建築家さんに依頼することはどういうことなのか、が少しずつ見えてきた気がしていますので、それをまとめてみたいと思ってこの記事を書くことにしました。

建築家さんだけでは不公平なので、ハウスメーカーに依頼するということ、についても書き添えておきました。

※ 建築家、の定義ですが、ここでは設計事務所を構えているような、ビルダー付きでは無い建築士さんを指す事にします。

建築家に依頼するということ
大きく3つのトピックに分けました。

・ 建築家にもいろいろある

    建築家さんにもいろいろな人が居ます。どんなタイプの人かは、会った瞬間に分かることも有るでしょうし、打合せを重ねるうちに徐々に分かってくることもあるでしょう。建築家さんのタイプは、かなり重要なファクターだと思います。個人的な考えでは、建築家さんには、大きく2つのタイプに分かれるように思います。それぞれのタイプについてその特徴を書いてみます。

    【全てお任せを望むタイプ】
    「私に任せなさい」というタイプなのですが、更に2つに分けてみます。
    「施主の要望を聞いた上での全てお任せタイプ」
    ビフォーアフター形(^^;;)ですね。 施主の要望をどういう形で実現するかは任せとけ、自分の設計したものが一番だ、という意識が強い人になります。最終的には施主を説得・洗脳します。
    「『自分の作品』を買ってくれタイプ」
    施主の要望お構いなしです。ある意味デザイナーズ住宅の建売を買うのと変わらない気がします。

    いずれにしても、施主が漠然としたイメージの要望や機能の要望をするのではなく、具体的に「○○を使いたい」とか「○○の工法で」とか言われるのを嫌う人が多い、という印象を受けます。 素人が細かいことに口を出すな、と言うことですね。 偉そうな傲慢な人、「先生」と呼ばれたがる人が多いのも、このタイプでしょうか。

    【施主の要望の実現を手助けするタイプ】
    施主の要望を聞いて、あれこれ提案してきて施主が決めていく形を取るタイプ。 施主のイエスマン的な人、ただの設計屋さんみたいな人も居れば、良い提案をして良いものを施主と共同で作り上げて行ってくれる頼もしい人も居ます。
    施主が知識不足でよく分からないと「全てお任せタイプ」に近くなってしまいますが、勝手に決めずに一つ一つ確認をして決めてくれて、施主からの細かい要望に出来る限り応えようと努力をしてくれるのが特長です。私が依頼するとしたらこのタイプの建築家さんが良いですね。

    ただしこのタイプは、構造や雨じまい的に不利な要望もがんがん受けてしまう危険があります。施主の立場に立つということは、要望を全て聞く事では必ずしも無いという点が難しいところです。「構造的に弱くなる」「雨漏りの危険性が上がる」「施工が複雑で失敗する可能性が高い」「材料の品質に不安がある」「(特殊な技能を持つ)良い職人の手配が出来ない」といった、ネガティブな面の説明責任があると思うのですが、それがないがしろになる可能性があります。

・ 設計能力と監理能力は違う
    この項目の前に、デザイン能力と設計能力は違う、というのもあります。デザインは凄く良いけど実際の収まりとか耐震性とかが全く考慮されていない、という場合があります。建築士さんの筈なのに現場が頭に無いデザイナーさんになってしまっているという事例で、これは不幸です。
    そこをクリアしたとしても、素晴らしい設計が出来ても、現場の監理は工務店丸投げに近くなってしまう人も居ます。理想的には、下請け業者の力量を把握して、適材適所に発注し、現場をしっかり監理して、指示を出していってもらいたいのですが、工務店と設計事務所の縦割り的な構図もあいまって、上手く行っている時は良いのですが、何か起こった時に少し動きがギクシャクしがちです。
    優れた設計能力を持つ建築士(建築家)さんは必ずしも優れた工事監理者では無いという事は頭に入れておかなければなりません。第3者監理を入れるという選択肢もありますが、建築家さんは自分が信頼されていないと取って、良い顔をしないかもしれません。
・ 施工業者の選択が重要
    実際に家を施工するのは工務店さん等の職人さんの集まりになります。建築家さんの所属する設計事務所が懇意にしている数店の工務店さんしか選択肢が無い場合や、相見積を取って未知の工務店さんに依頼する事もあるでしょう。言うまでも無く、どんなに設計が良くても、職人さんが駄目だと良い家は建ちません。
    職人さんが期待する工法をこなす能力を持っているかどうか、は建築家さんが判断することになる場合が多いと思います。どこに建築を依頼するかは建築家さんに設計を依頼した時点では分からない事が多い、というのも一種の賭けで不安材料ではあるでしょう。

この3項目について、全てが建築前に分かれば良いのですが、それは無理と言うものです。そこがリスクですね。でも上手く行けば、楽しい家造りが出来て、大満足の家が建つでしょう。そしてハウスメーカーに頼むよりも安く出来る可能性もあります。良くも悪くも可能性は広い、というのが建築家に依頼するということになるでしょう。

ハウスメーカーに依頼するということ
まずは何と言っても、標準仕様があるということ。それは選択肢が狭いという事でもありますが、素人施主にとってはそれは楽なことでもあります。標準仕様がそこそこ気に入っていれば細かいところまで選ぶ手間が省けて、かつある程度の品質が保証されているということになりますから。拘りたい場所に集中できる(オプションの選択等)というのもあります。
工法や部材の統一化が進んでいるので、実際に施工する大工さん達職人さんも手慣れた施工になります。もちろん業者の腕の上手い下手、当たり外れはありますが、標準的な工事に関しては慣れている人が多いのは確かです。

これらを全て逆手に考えるとデメリットになります。標準仕様が存在する為に使いたい部材がオプションで通常よりも高くなってしまうことがあります。要らない標準部材を削っても値段が下がらない事が多いので、標準仕様が盛りだくさんなハウスメーカーでは現実問題として家の広さ的に付けられなかった「捨て装備」にお金を払うことになる場合もあります。富士ハウスでは間取りは完全自由でしたが、企画物住宅では標準間取りからの変更だけでお金を取られたりします。
標準的な工事に慣れている分だけ、オプションの特殊な工事は職人さんが慣れていないので、打ち合わせ内容が上手く伝わらなかったり、施工品質が悪かったりと、チェックする上で要注意個所になります。

また、ハウスメーカーでは展示場の建築・維持費や広告費等の経費が乗っかっているから高いという話もありますが、その分各標準部材は大量仕入れで安くなっています。同じものを沢山建てさせたらハウスメーカーは意外と安いのです。それは建売分譲住宅が証明しています。注文住宅では同じものでない部分が多い分だけ高くなります。確かに一部のハウスメーカーではブランド料金、とも思えるような価格設定がありますけどね。

私は「どちらが良い」とは書きませんし、思っても居ません。もう一軒建てられたら今度は建築家に依頼するのも良いかなぁ、とかも思ったりもしますし(でも性格的にハウスメーカーに依頼する可能性大^^;;)。今現在建築業者を選定されている方達に、ほんのちょっとでも参考になれば幸いです。

【補足説明】
薀蓄は分かった・・・それはさておき・・・
じゃあどこに頼めばよいの?

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