アメリカ編2 さあアメリカで

異国の土地

アメリカ到着直後、いきなりアクシデントが勃発しました。友達の1人が過去にアメリカで犯罪を犯した人物と同姓同名だったため、入国チェックに引っかかったのです。

しかも係員の質問に、そっぽを向きながら「さあ知らね~」と答えたから大変。「ジャパニーズジョーク! ジョーク!」と必死に叫ぶガイドのフォローもむなしく、特別取調室へ連行されて行きました。

旅行の前日に事故で負傷してため手に巻いていた包帯を係員が指して、「その中に武器を隠しているだろう!」と疑われたとか何とか。違う便だったために現場を見ていなかった僕に、日本語を話せる人が誰もいなくて心細かったとケラケラ笑いながら話してくれました。

空港内での長い待ち時間のあと、ようやく外に出てアメリカの空気を吸います。

「やっと着いたなぁ。ところで…ココ、どこ?
「ロサンゼルス」

実は「アメリカへ行く」という以外の行き先を知らなかった僕に、近くにいた友達が間髪入れずに教えてくれました。

初日は全員バスで移動しながら、簡単な観光地巡りをします。そこでまたもやトラブル発生。遊園地でジェットコースターに乗ったとき、友達が全財産の入った財布を吹っ飛ばしました。彼はこの先飯も食えません。

チャイニーズシアターではナマコのS氏が、大ファンだというブルース・リーの手足形を探して彷徨っていました。

マリナデルレイのヨットハーバーでT氏がまたしても爆弾発言を連発しました。

「アメリカの海は日本の海と味が違うか味見してくる

これはさすがにみんなで止めました。ココの海、ヨットハーバーだけにゴミや油が浮いていて汚いんですよ。

さらに驚いたのはこの次の、僕らの何気ない会話に対するT氏の一言でした。

「時差で数時間得した気分やな」
「え!!アメリカって、1日が24時間と違うん?! ひょっとして、20時間くらい?
「アホかお前、国によって1日の時間が違うかったら、その差はどこで埋めるねん!

T氏は学生生活最後の最後に伝説となりました。

初日終了

観光地を一通りまわり終える頃には日も傾きかけ、今後の説明を聞くためホテルにチェックインとなりました。

ウチは専門学校ですが、最終学年は約1,000人。姉妹校も一緒の旅行なので、計2,000人弱の規模になります。一度に乗れる飛行機などはないので、数グループに分けた上で出国その他の日程も2日くらいずらしてますが、9日間の滞在中、何日かは行動が一緒になります。

このホテルでは年に1度、数日間だけウチの学生だらけになります。

説明会では、この辺りはビジネス街で夜は人通りが少なく治安が悪いので、出歩かないようにとの通達程度でした。

あとは割り当てられた部屋で寝るだけです。僕は部屋の班長で、T氏とM氏が同室です。夜、ホテルの窓からぼ~っと外を眺めていると、何者かに追われている人影を見ました。僕は夜中に追いかけっことは元気やねと思いながらベッドに入り、旅行第1日目を終えました。後で聞いた話では、銃声も聞こえたそうです。惜しいことをしました。

ツアー開始

砂漠のど真ん中でT氏と

次の日はオプショナルで応募したラスベガスのツアーがありました。朝早くホテルのホールに集合し、参加者が全員揃ったところでバスに乗って5時間ほど砂漠を走ります。遅刻1分につき1ドルの罰金があるので、遅刻者はゼロです。

ニューヨークニューヨーク

僕は賭け事に興味がなく、夜のイルミネーションが見たいだけだったので、昼間はホテルのブッフェ(バイキング)でひたすら食べました。アメリカのコーヒーは、アイスコーヒーもアメリカンでした。薄くて飲めません。アメリカンの意味を改めて思い知らされました。

翌々日はユニバーサルスタジオに行きました。ウォーターワールドやジュラシックライド…簡単に言えば急流滑りなんですが、これらは水に濡れながらも最初から最後まで全部ビデオに納めてきました。撮影OKのアトラクションが多くて個人的に嬉しかったです。

ある朝、僕が眠っているときのこと。遠い意識の向こうで「遅刻や!!」と言う声が聞こえ、次の瞬間、僕の頭に今までに受けたことのない強い衝撃が走りました。パニック状態で目を覚ますと、大急ぎで支度を整えているM氏が視界に入りました。どうやら彼が参加を予定しているメキシコツアーに寝坊してしまい、慌てて着替えを探す最中に、僕の頭を思いっきり踏んづけたようです。

その晩彼は、僕の容態が心配でツアーを楽しめなかったと言ってました。

小休止

何も予定を入れていない日は、せっかく異国に来ているのだからと、なるべく日本人の少なそうなところを探してT氏と2人で町をぶらつきました。

ホテルを出て10分ほどで人の姿がまばらになり始め、気が付くと辺りの風景がすっかり変わっていました。いつの間にか、スラムに迷い込んでしまったようです。ここでもT氏は新たな伝説の1ページを刻みます。すれ違った人に蹴りを入れられてました。

昼はホットドッグを食べに行きました。友人のKZ「6インチプリーズ」と言ったんですが、売り子には通じませんでした。彼は発音を微妙に変えつつ、根気よく何度も口にしました。

ろくインチプリーズ」

発音の問題じゃないと思います。

僕は痩せの大食いなんですが、アメリカでは400円もあればたらふく飯が食えます。味にこだわらない人にとって、この国は天国のような場所でしょう。飯のためだけに移住しようかと本気で考えたほどでした。

ホテルに戻ると、ホールでゲームボーイで遊んでいるウチの生徒を見かけました。朝も見かけたので、どうやら1日中ホテルに籠もっていたようです。ええと、何しに来たんですか貴方たちは。彼らは10日間ずっとこの調子なんでしょうか。

その夜…

日中、班長の仕事で忙しかった僕は、同室の2人を残して先に寝てしまいました。その直後のことです。

おじいちゃんが呼んでる…。行かないと。どっちかな。あっちに行けばいいんかな」

僕の声に驚いた同室の連中は、僕を無理やり起こしました。

「おまえ今、三途の川を渡りかけてたぞ」

放っといたらそのまま死にそうだったから起こしたんだそうです。僕はとてつもなく寝言がひどいだけです。自分で聞いたことはないですが、まるで起きているかのようなハキハキとした口調で、寝言を言いまくるそうです。