第4回鑑賞ツアー感想
「卆寿記念展 佐藤忠良70年の歩み・アトリエの中から」

常設展 佐藤忠良(ブロンズの詩)・平山郁夫常設展(平和の祈り)



第4回目の鑑賞ツアーに参加して
岩野陽一
 敬老の日の9月15日、視覚障害の方々に「言葉を通して美術鑑賞を楽しんでもらおう」という美術鑑賞ツアーにガイドとして初めて参加させていただいた。
今回は滋賀県守山市にある佐川美術館。琵琶湖大橋の東詰にあるこの美術館は、まさに湖上にゆったりと浮かぶ美の殿堂というたたずまいを見せていた。
 同館は、日本画家 平山郁夫と彫刻家 佐藤忠良の作品を中心にコレクションしている美術館で、折りしも「佐藤忠良 70年の歩み・アトリエの中から」と題する卒寿記念展が開催中であった。

 この日、午前10時にJR京都駅に集合した視覚障害の方々と主婦や学生を中心に構成されたボランティアガイドの方々は、JR湖西線で堅田駅に降りたち、そこから江若バスで琵琶湖大橋を渡り、午前11時に美術館に到着した。
初めて参加する私は、自宅から車を運転して美術館に直行したので、みなさんよりひと足早く着き、一行の到着をお待ちした。
 その間、私にとっては、このようなボランティアは初めてのことなので、はたしてどれだけお役に立てるのか不安でもあった。それと同時に、私自身が躊躇なくグルー プの中に溶け込んでゆけるだろうかとも思った。
 しかし、そのような不安はまたたく間に吹き飛んだ。バスから次々に降りてくる皆さんの表情がとっても明るく開放的で、しかも、この日の鑑賞会への思い入れが強く伝わってきたからだ。
「よし、この雰囲気なら一緒に楽しみながらのひとときが過ごせる」と、私の心の中ではお役に立ちたいという気持ちもさることながら、一緒に楽しもうという気持ちになりつつあった。

 さて、この日の鑑賞対象は、現代日本の具象彫刻を代表する佐藤忠良の彫刻作品54点と素描作品270点余。まず、佐川美術館の学芸員の解説で十数点の代表的な作品を鑑賞し、昼食後に再びグループごとに一点一点を鑑賞した。
 作品はいずれも形姿とも具体的で理解しやすく、その上、作品に直接ふれることも許され、視覚障害の方々は手から伝わる作品の形象を楽しんでおられた。作品に表現された民族の骨格の違いや、躍動する筋肉、しなやかなプロポーションなどにつて、ボランティアガイドと会話を交わしながら、肌で感じることのできた今回の鑑賞ツアーは参加者全員が楽しくすごせたのではないかと思う。

 今回の鑑賞ツアーに参加して感じたことは、視覚障害の方々をはじめガイドの方々が非常に真摯な態度で作品と向きあっておられたこと、そして、お互いが実に和気あいあいとした雰囲気であったことが特に印象的であった。
 今後も、こうした機会があれば積極的に参加してゆきたく思っている。私にとっても大変有意義な一日であった。

これまでの鑑賞ツアー第4回を参考にしてください。

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