第10回鑑賞ツアー 「縫う人 針仕事の豊かな時間」



2005年5月22日(日)
場所 ボーダレスアートギャラリー 「NO-MA邸」にて
(in 近江八幡)
参加者数 視覚障害者 9名
晴眼者 12名

---鳥養庸子報告---

京都から少し足を伸ばし、滋賀県近江八幡市にあるボーダレス・アートギャラリー「NO-MA邸」を訪れました。今回は美術鑑賞とともに、造り酒屋の酒蔵を利用したサロンでの郷土料理弁当や鑑賞後のティータイムなど、歴史の面影を残す近江八幡らしさを味わうことも楽しみのひとつです。

郷土料理の昼食風景写真1 郷土料理の昼食風景写真2
NO-MA邸外観写真町家が改装され、ギャラリーとして生まれ変わった「NO-MA邸」は、古い商家や土蔵、大正、昭和初期に立てられた洋館などが建ち並ぶ、京都とはひと味違った街並みのなかにありました。

靴をぬいでギャラリーに足を踏み入れると、参加者たちは自然にフローリングの床に腰をおろし、くつろいだ雰囲気の中で、アートディレクターのはたよしこさんから、ギャラリーの説明や今回の美術展についてお話をうかがいました。
ボーダレス・アートギャラリーとあるように、展覧会を通じて、障害のある作家のアートと現代アートが、また古い日本文化と新しいアートとが交差する場所として2004年にオープンし、滋賀県社会福祉事業団により運営されていること。 敷地約100坪2階立ての建物には蔵もあり、2階は床の間や欄間のある座敷などもそのまま残され、展示場として利用されていること。
美術展の話を聞く光景今回の展覧会「縫う人 針仕事の時間」は、知的障害のある作家、現代アート作家、中央アジアの遊牧民族などによって創造された「針仕事」をテーマとした作品、「縫う」という行為を通じての多様な表現が展示されているということ。「縫う」ことは単純な繰り返しの行為だけれども、ひと針、ひと針連続して刺されていくことによって生まれた色の組合わせやカタチを通して、濃密な時間の流れやリズムや祈りや無限の空間の広がりをも感じることができるのではないかといったお話をうかがうことができました。
5つのグループが各部屋に分かれて鑑賞スタートです。今回はギャラリーの図らいにより、作品を手に触れて鑑賞することができました。それでは、いろんな鑑賞風景の一部をご紹介しましょう。
鑑賞中の写真1 鑑賞中の写真2
座卓にたくさん並べられたアップリケの作品ひとつひとつを、いとおしそうに丁寧に触れる人。色とりどりのフェルトを使い、お弁当や野菜、人の顔や扇風機など身の回りのお気に入りのものを、スケッチ感覚でアップリケにしていった作品だそうです。
お弁当のおかずをいろんなカタチに切り取って貼り付けたり、キャベツの葉脈を刺繍糸で表現したり、カリフラワーのごつごつ感をビーズを留めつけて表現したり。触ってカタチを楽しみながらこれは何色?と配色を質問され、時の経つのも忘れて鑑賞されていました。
「草の骨」鑑賞写真 薄くやわらかいグレーの布に、スモークがかったグリーンやブルーやピンク紫の毛糸で、ふわふわっと流れるように刺繍がほどこされた作品は、暖簾のようにぶら下がっていました。
見た目には抽象的な作品なので説明がむづかしいのですが、布の手触りや刺繍の線から、のびのびとした印象を持たれ、「なんとなく草原を思い起こすな。」と感想を述べられた後、タイトルを見たらなんと「草の骨」。
作者の描くイメージと手触りからの感想が一致していたので驚きました。
鑑賞中の写真3 鑑賞中の写真4
鑑賞中の写真5 鑑賞中の写真6
中央アジアの遊牧民族のマントや帽子や魔よけの壁飾りなどでは「これはいつごろ作られたものなんだろう?」と興味を持たれ、19世紀から受け継がれてきたものだと知ると、心ははるか広大な草原での遊牧生活に想いを巡らされたようでした。

また「知的障害者と呼ばれる作家のおびただしいステッチが塊となった刺繍、そのカタチはまるで排泄物のようにも感じられた、その行き過ぎるともバランスを欠いたとも思える作品は、ものすごいエネルギーを見るものに感じさせるのだろうか、ただそれが障害者の作品イコールエネルギーというひとつの傾向として捉えられてしまうことに対しては、どうかなあと思う。」という感想を持たれたかたもおられました。「だからいろいろな作家の作品を同時に鑑賞できて興味深かった。」ともおっしゃっていました。
鑑賞中の写真7 鑑賞中の写真8
本当に限られたスペースに展示された6人と1組の作家たちのわずかな点数の作品のなかから、いろいろなイメージが溢れ出てくるのです。今回も作品を鑑賞しながら、ともに大きくイメージを膨らませていくことができました。ゆっくりとことばを交わしながら鑑賞すると、表面的なものの向こう側にある世界もいろいろと感じることができました。

鑑賞後は1000年の歴史を誇る日牟禮八幡宮の境内にあるケーキファクトリーのすてきなガーデンカフェで、花の香りを運ぶそよ風を感じながらのティータイム、楽しいひとときの締めくくりとなりました。
中庭での写真
中庭にて
集合写真 NO-MA邸玄関で記念撮影
ガーデンカフェにて1 ガーデンカフェにて2
鑑賞ツアー感想 第10回を参考にしてください。


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