バーチャル道場

 太極拳を学び上達を目指すなら、優れた指導者を探し出し、直接に指導をしてもらうべきです。このバーチャル道場は、太極拳を学んでいる仲間やこれから学びたい人たちに、「学ぶヒント」や「振り返り考える」機会を提供する場です。

 基本入門編について

 基本中級編について

 基本上級編について

 周 稔豊老師に学ぶ「予備式から起勢まで」について

 推手について

 動作と呼吸について2001/6/2)

 

            

  

 入門編

 初心者は、まず正しい姿勢、正しい動作、正しい形といった太極拳の基礎を学ばなければなりません。それためには、第一に「中正」を心がけることが大切で、ここでいう中正とは、身体が自然に真直ぐになっている状態を言います。特に腰、肩、股関節を軸にした正しい骨組みが要求されます。

 ただし、海底針や下勢のような特定の姿勢の場合には、少し身体は前寄りとなりますが、寄せ過ぎてしまうと身体が持つ自然の形が崩れてしまいますので、椅子に腰を掛けるようにして中正を保っていれば、少々身体が前に寄るような場合も、立身中正の姿勢は崩れることはありません。

 そして、次に中正を維持しながら身体を動かしましょう。また、力を出すときも要求される基本は中正です。太極拳の動作は、筋肉による作り動作ではなく、身体全体を自然と調和させながらの無理のない自然の動作です

 第二が「安定」です。安定について、物質的に説明するなら下半身の充実、強化することで、安定とは、よく言われる上虚下実ということに尽きます。

 しかし、安定する、しないの原因には脚力のほかに立ち方(方法)の問題もあります。両足の幅を保つ弓歩の場合でも、形や足の位置が間違っていたら安定性がなくなります。多くの初心者が安定できないのは、足のおろす(置く)位置が正しくないからです。

 第三に「放松」です。放松とは軽松柔和ということに尽きます。軽松とは力を抜いてリラックスさせることで、柔和とは柔らかい動作をいいます。

 そのためには肩の力を抜き、腰の動きに調和させることです。腰が動けば肩も動き、腰が動かなければ肩もうごきません。腰が動かず肩だけ動くということはありません。腰、股関節、膝、肩、肘が一緒になって、変化しながら動作をします。

 第四が「豊満」で、身体中に「ポン」(peng漢字では、手偏に朋と書く)の力が満ちている状態をいいます。頭は少し上に引き上げるよにして、肩は下に下げる。手、腕は各々半円形を保ち、肘関節は下を向く。豊満というのは柔らかさがあって、軽さがあって、飽満な状態をいいます。

 以上の四つが初心者にとって大切な基本動作の要求です。

             

中級編

 ここでは「」の運用が中心になります。では、ここでいう勁の運用とは、身体全体から力が出せるよう、身体の全部が一つになるように動作や姿勢を組み合わせることで、第一に大切なことは「連貫」ということです。動作と動作が穏やかに連なるように、また、力も途切れないよう繋ぐことで、切れ目をださないように注意することです。

 第二には「円活」で、足,腰、手が上から下まで一つのまとまった状態となる動作をいいます。動作を円活にするためには腰の役割が大切で、腰を軸に身体を動かすことが要求されます。ここには上下を連結する役割もあります。

 第三に「協調」があります。協調とは、すべての動作を併せ行うことで、虚実の協調が特にポイントとなります。すべての動作は「虚」と「実」の繰り返しからなり、例えば雲手の動作で言うと、手をまるく動かす中に柔らかく力を抜いて行う部分と少し力を出していく部分があるように、また、速度も少し軽やかに行う部分と少し安定させる部分があったりしていることをいいます。

 そして、両手は常に協調させながら虚実を変化させていきます。一つの動作の中で、発勁する場合は実になり、引く場合は虚になるといったように、すべての動作には必ずポイントがあることを注意してください。

 

               

  

上級編

 ここでの中心は「意識の運用」です。初級、中級では、どちらかというと、型や動作の確認、熟練が中心でしたが、ここではじめて意識を重視する段階に進みます。実はこの過程が大切で、このことについては、いずれの日か紆余曲折ひとり言のコーナーで述べたいと思います。

 本題に戻りまして、「錬神還虚」という言葉があります。例えば、熟練すると何気ない少しだけの動作でも、これが太極拳の要を得た動作となります。また、「有拳之意、無拳之形」という言葉もあります。

 拳法の大家の言葉で、拳は意識であって、形ではないと言っています。意識の運用とは、いままでやってきた型や動作に命を吹き込むことで、すでに覚えたとう套路を自分の思うがままやっても、それがそのまま太極拳になっていることです。例えば、サッカー選手がボールを追いかけ、奪い、シュートする場合、選手はその瞬間、今まで習ってきたことやどうすればゴールできるかというようなことを一つひとつ考えているのでしょうか。否、サッカー選手は既にボールの扱いや状況判断等は身に付いてできているからこそ、考えなくても自然にボールを扱いながらの行動と適切な判断ができるのです。

 この段階での要点は、注意力を拳の虚実の上に集中させることと、呼吸の組み合わせということに尽きます。練習する時には、必ず動作の虚実の変化、呼吸の配合に意識を加えてください。こうする中から、自然に意に因る太極拳を行うことができるのではないでしょうか。

           

           

 稔豊老師に学ぶ「予備式から起勢まで」

 太極拳を何年学んでも上達しない理由の一つに予備式ができていないということがあります。予備式は無極式とも呼ばれてきたように、陰陽の分かれる以前の始まりのことでですから、これをただの単なる始めの一姿勢と考えるのは大きな間違いで、まずは予備式を重要な姿勢の一つであると再認識をしてください。

 予備式の動作は、足を肩幅に開いて、足先を平行にします。八の字にしてしまうと、足の内と外、陽経と陰経のバランスが崩れます。膝は曲がっているようで曲がらず、伸びているようで伸びず、そのどちらへも変化できる状態にします。このときの大切な要求は、徹底的リラックスです。次に起勢の動作について説明します。腕を上に上げていくとき、必ず両腕の間は肩幅であることで、狭すぎても、広すぎても気の運行を妨げ、気が沈んだり、外に逃げたりします。上げた腕が真直ぐに硬くなっているのは放松ができていないからです。

 例えば、放松するための一つの意念(イメージ)として、物干し竿にタオルが干してある絵を想像してください。タオルは竿に垂れ下がっています。そして次に、上げていく腕の骨を竿と、そして筋肉をタオルと置き換えて考えてください。骨と筋肉とを分け、腕が上がると筋肉はタオルのように骨に垂れ下がっているとイメージすることです。放松ができるとこれだけの動作で気血が行き渡ることが実感できます。

 次にこれに呼吸を加えます。腕を上げるときに息を吸って、下げるときに吐きます。すると手の掌に温かいとか膨張するみたいな感じが生じてきます。特に腕を下げるときが分かりやすいと思います。この気の感じを最初の予備式から身体全体で説明すると、まず腰から尻、腿、脛、そして足の裏まで気が降り、また上へ上がっていきます。この上がっていくときに腕を上げていきます。 

 呼吸のイメージとしては、吸うときは空を舞うように軽く、吐くときは燕が舞い降りるように落ちていく感じです。息を吸うときは、腰を中心に風船の中に空気を満たすように上げた腕まで気を満たし、また、息を吐きながら腕を下げるときには気を肩から肘へ、また胸からみぞおち、下腹、丹田へと沈めていきます。按である下げていく手の掌は臍のあたりまでしっかりと押さえ、掌は僅かですが外旋させます。こうすることによっておなかの周りにある気を丹田に集めることができます。誰でもすぐにできるが、やればやるほど難しくなるのが予備式と起勢です。

 この二つの練習だけでも太極拳の大切なエキスを学ぶことはできます。本当に上達を望むなら、これを何度でも繰り返しながら、動作と呼吸、気の流れについての、やればやるほど深まるような練習方法をとって続けてください。

       以上 1986年来日時の講習会要約メモより

               

推手について   

 いかなる流派の太極拳もみな拳架と推手の大きな二つの部分から成りたっています。既に前述したとおり、拳架を練習には正確な手型、手法、歩型、歩法、身型及び身法の理解、手、眼、身及び歩法の運用、放鬆、連貫、開合、協調、呼吸、完整、円満等々が求められます。このように拳架は太極拳の基礎であり、基本となっています。

 これに対し、推手は太極拳の攻撃技の練習方法で、二人の対抗練習を通して、各種拳架の用法や姿勢を運用し、攻撃技を鍛錬する目的を持っています。拳架と推手は互いに補い合って成り立っており、「架」を行うこと即ち「打つ」ことであり、「打つ」こと即ち「架」を行うことになります。そして、拳架を練習する時は、精神を集中させ、各所であたかも一人で打ち闘っていると想定し、一拳一動の作用が錬拳中に発揮できるようにしなければならず、推手の時は、拳架の中の各種攻撃技法を伸び伸び運用し、実際に運用できるようになるまで鍛錬する必要があります。

 また、太極拳の推手は定歩推手と活歩推手に大別することができ、定歩推手というのは歩法は動かさないで、主にポン(peng漢字では手偏に朋)、リー(lu漢字では手偏に履)、チー(ji漢字では手偏に斉の横2線抜き),アン(an漢字では按)という4つの正面動作を往復変化させる中で、四正の攻防訓練を行うものであるのに対し、活歩推手は歩法加え、采(cai)、リエ(lie漢字では手偏に列)、肘(zhou)、カオ(gao漢字では告の下に非)の訓練で、定歩推手に比べると難度は高いものとなっています。

 総じて推手を述べるとすると、ポン、リー、チー、アン、ツァイ、リエ、チョウ、カオの8手法と5つの身法、歩法の組み合わせで、勁をはじめ太極拳の何たるかを学ぶためには、不可欠な練習ですので、拳架同様(以上)の取組みが必要です。

 ポン等の意味や要求は近々整理し、情報コーナー(基本用語)に記載を予定していますが、少しは推手の大切さが伝わりましたでしょうか。

 最後に次の言葉を紹介します。「ポンは両腕にあり、リーは掌にあり、チーは手の甲にあり、アンは腰で攻め、ツァイは十指にあり、リエは両肘にあり、チョウは曲げることにあり、カオは肩と胸にあり、………」

              

 

 動作と呼吸について

 動作と呼吸の関係については、既に多くの書物でも明らかにされていますので、「太極拳運動」(中華人民共和国体育委員会編・全日本太極拳協会訳・不昧堂出版)からの抜粋で紹介します。

動作の要領:自然呼吸

 初心者は、まず自然呼吸を保つように注意する。というのは、動作をしている時、自分の習慣、およびその時の必要に基づいて呼吸をしなければならないからである。呼くときは呼き、吸うときは吸えばよいのであって、動作と呼吸に相互の約束はない。

 動作が熟練した後は、個人の鍛錬体得の程度に基づいて、いささかも無理せずに、速度や動作の大小にそって、挙げる時は吸い、下す時は呼く。開く時には吸い、合わせる時には呼くという要求に基づいて、呼吸と動作を自然に配合させる。たとえば、「起勢」の両腕をゆっくりと上へ挙げる時には吸い、身体を下に沈ませて両腕を下す時には呼きだすようにする。この種の呼吸方式は、胸郭の伸縮と横隔膜運動の変化によるものであって、動作の要求と生理機能に必要な基礎のもとで行なわれているものである。このようにして、酸素の供給量を高め、横隔膜の活動を強くすることができる。しかし、一般に挙げ下げ開合がはっきりしない動作の時、あるいは異なった速度で練習する時、及び体質の違いによって、動作と呼吸の配合は、機械的に無理をしたり、一律の要求をすることはできない。さもないと、生理機能の自然規則に違反し、呼吸の乱れや動作のバランスを失う悪い結果となってしまう。

練習上における主な過程とその要点:動作呼吸

 太極拳の呼吸は、深く、長く、細く、同じ速さで初心者は自然呼吸だけが要求される。熟練後は、個人鍛錬の体得と必要に基づいて、自然に逆らわない原則のもとで、意識して呼吸を導き、それをしっかりと勁力と動作の要求に合わせていく、この呼吸を「拳勢呼吸」という。たとえば、太極拳の動きが完成の間際には、勁力を沈着に充実させ、肩を沈め、胸を虚にし、腹を充実させる。この時は当然、意識的に呼気にし、腹筋と横隔膜を促進させる。移り変わる過程の情況は比較的複雑であり、一般的には、大体、力に含蓄をもたせ、軽快に敏捷にし、肩甲骨を開いて胸腔を伸びやかにした時には、当然吸気にする。そして、力が沈着に安定し、肩甲骨を内に合わせ、胸腔を収縮した時には、呼気にする。これがいわゆる「開で吸気、合で呼気」と言われる要求である。これは、我々の生活、労働及びその他の習慣や生理機能の必要と一致するものである。拳勢呼吸とは、自然発生の配合の呼吸を自覚的に調節させるものである。

 上肢の動作に基づいた習慣、或いは、太極拳の打法を強調して、呼吸を調節し分けている人もいる。たとえば、腕の伸ばし、前進し、分け開く等の動作を呼気にし、届げ引き、合わせる動作を吸気とする。これは一定の条件のもとでは行なえるが、情況が分けられず、分析のない機械的なものになってしまう。結局、太極拳の呼吸は勁力の特徴と胸腔、肩甲骨の運動の変化で決定するものである。日常の動作で、たとえば、同じ様に腕を前に伸ばして、物を取り、物を推したりする時の力の入れ方はそれぞれ異なっており、胸腔の変化も同じではない。呼吸に対する要求もまた異なってくる。太極拳もこれと同様である。

 練習の時、呼吸が機械的に、無理な動作の拘束を受けてはならない。拳勢呼吸とは、積極的でもあり、また、自然なもので、その適切な運用が動作をさらに協調させ、円滑、軽快で、落着いたものにさせる。よく言われている「全身の意識は精神に在り、気ではなく、気に在れば滞る」「意を以って、気を運び、力で気を用いてはならない」というのは、動作と呼吸は自然の協調で配合されていることであり、決して機械的に無理うぃしてはならないということを指している。

 「拳勢呼吸」の運用は絶対的ではない。動作の構造、配列いずれも、前後の密接な連貫で、全面的鍛錬の必要が考慮されており、配列上においても、ただ呼吸の調子のみから始まっていない。動作がそれぞれ異なっているばかりでなく、呼吸の回数、深度も、それぞれ異なっている。すなわち、同じものをやっても、異なった体質の人や速度の異なった練習の時は、呼吸も一律にできるものではない。それで、主要な動作や胸、肩の開合が比較的にはっきりしている動作上においてのみ、「拳勢呼吸」にするということになる。ある動作の過程、および、個人的に呼吸が合わせにくいと感じた動作の時には、当然自然呼吸(短いつなぎの呼吸)を用いて、その動きの過程を調節させる。

 従って、いつ、どのような時であろうとも、技術の熟練のいかんにかかわらず、すべて「拳勢呼吸」および「自然呼吸」を結合させて使用してこそ、呼吸と動作の結合が順調に安配され、「気は養生をもって無害である」という太極拳の原則要求に合致する。簡単に「呼吸配列表」を書いて呼吸を機械化、絶対化して統一を強要すべきでない。特に病人や体質の比較的弱い人が行なう場合には、さらに、その人に合わせたものにすべきで、呼吸の自然の流れを保ち、呼吸を無理に合わせて、ぎこちなくさせないようにする。呼吸の自然規則に背くと身体には有害である。

  

                  

 作成中  

簡化太極拳の動作要領

 人民体育出版社「怎様教好練好簡化太極拳」(北京市東城区業余太極拳研究小組)の中から、興味ある箇所のみを要約しました。

起勢

 足を合わせて立つ準備の姿勢から足を開く時まで、まず左足の膝をリラックスさせ、身体の重 心のほとんどは右足の上に落とす。

 左足を上げる時、まず踵から上げ始め、そして足の裏全体が上がる。下すときは、肩幅に足先を真直ぐに、足先から着地し始める。両足は、平行で八の字の形になったり、地面を踏み固めるようにしてはならない。

 「軽起軽落、点起点落」が歩法の法則である。