山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 子どもは泣く


 
子どもはさかんに泣く
 
よくなくものだ
 
これが自然の言葉であるのか
 
何でもかでも泣くのである
 
泣け泣け
 
たんとなけ
 
もつとなけ
 
なけなくなるまで泣け
 
そして泣くだけないてしまふと
 
からりと晴れた蒼天のやうに
 
もうにこにこしてゐる子ども
 
何といふ可愛らしさだ
 
それがいい
 
かうしてだんだん大きくなれ
 
かうしてだんだん大きくなつて
 
そしてこんどはあべこべに
 
泣く親達をなだめるのだ
 
ああ私には真実に子どものやうに泣けなくなつた
 
ああ子どもはいい
 
泣けば泣くほどかはゆくなる