山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 収穫の時


 
黄金色に熟れた麦麦
 
黄金色のビールにでも酔ふやうに
 
そのゆたかな匂ひに酔へ
 
若い農夫よ
 
此処はひろぴろとした畠の中だ
 
娘つ子にでもするやうに
 
かまふものか
 
穀物の束をしつかり抱きしめてかつぎだせ
 
山のかなたに夕立雲はかくれてゐる
 
このまに
 
このまに
 
いま
 
そして君達の収穫のよろこぴを知れ
 
刈り干された穀物を愛せよ